第36話 総会 そうかい 阿〇快!

 空が濃い青色から薄い青色へと変化し厚い白い綿菓子のような雲から薄衣のような雲へと変化していた。クロにまたがって高くなったところから見る空は本当に気持ちがいい。


 久しぶりといってもラウタヴァーラを経ってから1週間も経っていないのだけど、久しぶりに帰ってくるとなんだか懐かしい気持ちでいっぱいになった。


「おーい!」

「いきなり駆けて行かないでよっ!クロについて行けるわけないじゃん!」

 テッドとアーロンがそれぞれシロとハナちゃんに乗って追いかけてきた。


「ごめん!ごめん!懐かしい景色が見えてきたら嬉しくなっちゃって」


 ラウタヴァーラへどうしても戻らねばならなかったのだ。というか元々王都に行く予定じゃなかったし…。

 ラウタヴァーラが株式会社になってから初の株式総会があるのだ。まぁ、みんなも初めてだし、ニーナ自身も株主総会なんて出席した事ないから探り探りで開催するので最初は絶対に参加したかったのだ。


 アーロンはちょっとお願いしたい事があって付いてきてもらったのだが、護衛としてテッドが付いてくることになったのにはちょっと驚いた。まぁ、王都で今、自分の愛馬がいるのはテッドくらいだから、そりゃそうかという感じなんだけど、仕事、仕事でほとんど家にいなかったから疲れているのに申し訳ない気持ちでもいっぱいだ。


 今回はさすがに一日で帰るのはシロとハナちゃんの体力が持たないだろうと途中で一泊する事になったが2人部屋と1人部屋しか空いておらず


「テッドは目にクマができるくらいお疲れみたいだし…ゆっくり寝かせてあげたいから二人部屋は私とアーロンが使ってテッドを一人部屋にしてあげようか」


 ニーナがそう提案すると


「いや、ニーナが一人部屋で!もう姉弟で寝る歳でもないだろ?」

「えぇ?ボクは別に構わないけど?」


 アーロンはそういったがテッドが折れなかった。まぁ実際疲れていたみたいでテッドはベッドに入った瞬間、お休み3秒だったそうだ。護衛って何だろう…


 ゆっくりと進んで街へ入ると皆がこちらに向いて


「おぉ!お嬢!お帰り!」

「お帰り!」

「お嬢!コレ持っていきな!」

 

 リンゴが飛んできた!が、クロがパクッ!と食べてしまってみんな大爆笑!


「ただいまぁ!明日は株主総会だよね?食堂にちゃんと来てねぇ!」

「おぉ!声かけていくぜ!」

「お祭りなんだろ?」

「収穫祭だな!」


 うん、なんか趣旨が違う…でも収穫が終わった今、確かにみんなの気持ちが上がっているのも分かるので否定するのもやめておいた。会場が食堂という事もあるから終わったらみんなで打ち上げするのもいいかもしれない。



 屋敷へと戻るとセバスチャンが出迎えてくれた。クロもシロもハナちゃんも厩舎で久しぶりの仲間に会えて嬉しそうだ。


「ニーナお嬢様!!」

 チャーリーも執務室で出迎えてくれた。明日が株主総会とまぁ、決算みたいなものなので忙しそうだ。


 早速ドォォンッ!と書類が積みあがる。

「まぁ、見ていただきたいのですが…」


 そこから長い報告会が始まった……






 翌日…


「えっ!ボクがミスターXになるの?」

「身長も伸びてそうそう私達と変わらない身長になったし、チャーリーも私も発表しなくちゃいけないからさ、真ん中でドーンと座っていてよ」


「ドーーーーン…」


 そうして食堂に作られて舞台の真ん中にミスターXと扮したアーロンが座る事に…

その両脇をニーナとチャーリー。そして各部長たち。テッドは舞台の右下で護衛として立っていた。左下にはシルヴィオが立って威厳を放っていた。


 舞台の下には領民達が座っている。

「お祭りじゃないのぉ?」

「おいしいもん食べられると思って来たんだけど…」


 ニーナはミスターXの口元に耳を近づける。

「『今日は喉を傷めていて声を出せなくて申し訳ないけれど、株主総会といってこの一年の成果をみんなに発表してもらい、来年度の予定も話してもらう。皆には何か要望があればその後聞かせてもらう』って言ってるわ!」

 大きな声でまるでミスターXが発したかのように話す。


(ボク、何にも言ってないけれど…)

ハンターハットの下でアーロンは固まっていたが、またニーナが耳を近づけてきた


「終わったら収穫祭としてここでみんなでご馳走だそうよ!」

「「「「うぉぉぉぉっ」」」」


 そこからは各部署が今年度の決算報告をする。ニーナは馬部門として発表をして、来期は学園に通う事になったため馬部門の相談役になり、部長としてトムを抜擢した事を話す。トムが立ち上がって領民にペコリと頭を下げると


「いよっ!新婚さん!おめでとう!」

「しっかりやれよ!」


 拍手が起きるとトムの横にいた奥さんが大きくなったお腹を抱えて一緒に頭を下げていた。そう、トムは婚約者と結ばれお腹に新しい命を宿していたのだ。それを機に騎士団を退団してラウタヴァーラ株式会社へとめでたく入社してくれたのだ。とはいえ有事の際には元騎士団として戦力になってくれるはずだ。


 最後に統括としてチャーリーが全体の発表をしてくれ

「皆が頑張ってくれたお陰でラウタヴァーラは活気を戻し今期は税もちゃんと納める事ができました!来期は給料もちゃんと払っていけそうです!」

「「「「うぉぉぉぉぉっ!」」」」


 拍手がまた一段と大きく起こる。


「協力してくださって土地を株に変えてくださった方々にちゃんと配当金を出せるようにこれからも皆で頑張っていきましょう!それではこれで株主総会を終わりにします!この後はお待ちかねのご馳走です!皆でこの一年の頑張りを労いましょう!!!」

「「「「わぁぁぁぁぁっ!」」」」


ドン!ドン!ドン!と待ってました!かのように食堂のカウンターに料理が並べられた。

(チャーリーしっかりしたなぁ…途中から厨房からいい匂いが本当に漂っていたんだよねぇ。お腹がいつ鳴るかヒヤヒヤした)


 アーロンはみんながご馳走に目を奪われている間に舞台を降り、着替えて戻ってご馳走を一緒に楽しんだ。


「みんないい顔しているな」

 テッドがバイキング方式のため皿いっぱいに料理を盛ってこちらに持ってきてくれた。


「ありがとう!」

ニーナも料理をおいしくいただいた。


 家族と仲良く食べるシルヴィオにベン爺さんも農業部の相談役として皆に囲まれて楽しそうに笑っている。


「あ、来るときはアーロンもいたし死にそうな顔をしていたから言いそびれたんだけど…この前はベッドまで運んでくれてありがとう…重かったでしょ?ごめんね」

「いや、全然…翌朝…なんか…あった?」


 不安そうに聞くテッド


「翌朝………あ!」


 ビクッとなるテッド


「なんか、首を虫に刺されたみたいで、ミラが『仕留め損ねた』ってものすごく怒ってた」

「お、おぉう…」


「なんで?」

「いや、な、なんでもないよ」


「ふーん。それよりテッドはお父様の下で働く事になったのね。毎日忙しいみたいで全然夜も朝も会えないくらい忙しいみたいだけど大丈夫?今日は大分顔色は良くなったけど…」

「おぉ!やっぱりね王宮よりラウダヴァーラが性に合ってるんだなぁ。伸び伸びできるよ」


 大きく伸びをするテッド。ちょうどそこにチャーリーがやってきた。

「テッドさん、オニール様の下についたんですね。僕の代わりなんでしょうか?雑用ばかりで大変でしょう」

「いや、本当に!」


「エグモンドさんが……」

とチャーリーのグチが始まりテッドも相槌を打ち、同じ穴のムジナ同士で話が合ったらしくそこからは二人で盛り上がっていたので、スッとその場をニーナは離れた。


 すると待ってました!かのように子供達がニーナの周りに集まってきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年11月25日 06:42
2024年11月26日 06:42
2024年11月27日 06:42

Lv50の異世界転生は『くうねるあそぶ』を目指します! Minc @MINC_gorokumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画