第14話

 ホレイショとフィッシャー大尉が艦橋に着くと、すでにそこは怒号が飛び交い、混迷を極めていた。必死な様子で指示を出し、反乱を鎮圧しようとしている艦橋要員とは対照的に、オルトラン艦長は険しげな表情を浮かべていた。

 ホレイショとフィッシャー大尉の顔をみると、一安心ついたような表情になった。

「艦長。ただいま戻りました」

「よく無事で戻ってきてくれた。君も、こんなことに巻き込んでしまい申し訳ない」

「俺こそ、フィッシャー大尉のおかげで命拾いしました。感謝しています」

 ホレイショの言葉に頷くと、オルトラン艦長は現状を説明し始めた。

「反乱者は強力な兵装で艦内の要所を制圧している。なかなか厳しい状況だ」

「近くの基地からの増援はどうなっているのでしょう?」

「帝国軍の本部にはすでにこの状況を報告している。急遽、基地から増援部隊を派遣してくれるようだが、機関部と格納庫は陥落寸前だ。この艦橋にも戦火が近づいてくるだろう」

 オルトラン艦長はフィッシャー大尉に視線を送った。

「私が殿下にお話する。君は準備を進めてくれ」

「了解しました。カーター少尉は……」

 いかがしましょうかと、フィッシャー中尉が口を開く前にホレイショが頭を下げた。

「オルトラン艦長。先程の任務、俺にやらせてください。お願いします」

「意外だな。君が心変わりした理由を聞かせて欲しい」

 オルトラン艦長は険しげな表情のまま、ホレイショに問いかけた。

「俺は、責任から逃げたかっただけです。でもこうしてみんなが命をかけて戦っている中、自分だけ呑気に隠れるなんてできません。まだ戦う力があるなら戦いたい。戦って、みんなの力になりたい。そう思いました」

 オルトラン艦長は静かにホレイショを見つめている。

 ホレイショはもう一度頭を下げた。

「だからお願いします! 力不足かもしれませんが、必ずやり遂げて見せます!」

 艦橋にいた誰もが一瞬だけ手を止めてふりかえる。ほんのわずかな空白の空間が生まれた。

 オルトラン艦長は頷いた。

「君の熱意を信じる。フィッシャー大尉、艦底の格納庫へ彼を連れて行ってくれ」

「カーター少尉に任せるということでよろしいのですね」

「そうだ。『アテナ』の準備を始めてくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る