第39話

 社長室で成果を得られなかったホレイショたちだったが、資料に向き合っていたエリナとミハエルたちには何かが掴めたようだ。

「ちょうどいいところに戻ってきたな。もう少しで確認が終了する」

「エリナ、一体何があったの?」

「喜ばしいことではないのだが、私たちが次に取るべき行動がはっきりしたよ」

 ミハエルが情報端末の画面に視線をむけて険しい表情を浮かべている。そして、画面をクロウリー少佐と捜査員たちに見えるように向けた。

「エリナさまの話されたとおり、問題の部品が足りません。紛失や廃棄したのでなければ、まだこの惑星のどこかにあるとしか思えません」

「いや助かったよ。これで私の勘違いではないことが証明できた。クロウリー少佐も納得してくれるだろう」

 クロウリー少佐は何度も画面の文字を読み返している。そして観念したようにため息をつくと頭を抱えた。

「なるほど。勘違いなどではないということですね」

「その通り。至急、帝国軍本部と連絡をとったほうがいい。緊急事態だ」

 クロウリー少佐は携帯端末を取り出し、部屋の外に向かった。

 捜査員たちも画面の文字を読むと、衝撃を受けたような表情を浮かべる。あるものは項垂れ、またあるものは悔しげな呻き声をあげた。

「すまないね。今から君たちにも説明するよ」

 エリナは手にしていた資料をジェニファーに手渡した。

「この資料によると、オルベイ社は惑星アナドールにこれだけの金属部品を輸出している。その総数は惑星破壊兵器に使われた総数よりも明らかに少ない。他の惑星でも同じ金属部品を製造していた可能性が高いが、注目して欲しいのは惑星レオンで製造された数よりも輸出した数が少ないことだ。本来、足りないはずの部品をわざわざ数を減らして輸出する必要はないはず。では、製造された部品はどこに消えた?」

 資料には赤い丸と黒い丸で囲われた数字がある。赤い丸が惑星アナドールに輸出された数で、黒い丸が製造された総数であれば、確かに無視できない数が輸出されていなかった。

「私はこれを見つけて計算をした。ミハエル殿にも確認を任せた。結果は正しく、行方不明になった部品は存在する。最悪の場合、この惑星レオンも惑星アナドールと同じ危機に晒される恐れがある。私はクロウリー少佐をとおして帝国軍本部に警告を発した。部品の行方を追えと」

 話を終えたクロウリー少佐が戻ってくると、連絡内容をかいつまんで説明した。

「先ほどの話を報告したところ、直ちに対応すると話しておりました。その際、本部はヴィスコンティ公爵さまとエディンバラ殿下に直接お話を伺いたいとのことでしたので、帝国軍本部のあるホワイトテールまでご足労願えないかと言っております」

「いいだろう。すぐに向かうと伝えてくれ」

「了解しました。直ちに連絡を取ります」

 ホレイショたちはタッカー大尉たちに捜査を任せてオルベイ社を後にする。再び大型のシャトルに乗り込み帝国軍本部に向けて移動を始めた。

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