第2話
父親から呼び出された次の日、早速ジェニファーは友人の元を訪ねた。ジェニファーと同い年で幼い頃からの友人のひとりだった。
宮殿から離れた場所に立地する研究施設に友人は勤務している。ジェニファーが訪ねてきたとわかると、私室兼所長室に案内してくれた。
「惑星破壊兵器か。そんなものがあるとは初耳だね」
「お父さまはあなたに認められたくて開発された技術ではないかと考えておられるようです。それなら、あなたが知らないと言うことはないはずですが」
友人の名前はエリナ・ヴィスコンティ。ジェニファーの幼馴染で、帝国内のみならず銀河でも屈指の技術力を持つヴィスコンティ公爵家の当主でもある。少し波打つ栗色の髪を肩口で切り揃え、白衣を着用している。
昨日、ジェニファーが父親から呼び出されて中断していた次の公務の擦り合わせという名目の談笑だ。淹れたての温かいお茶を飲みながら、エリナは口を開いた。
「興味深いとは思うが、使い道が難しい技術だと思う。開発する惑星の固有の生物種や貴重な在来種をできるだけ自然に保全することが求められているし、一定以上の知能が認められれば、我々からの接触は禁じられる。完全にその惑星に貴重な生物や知的生命体がいないことが確認できたとしても、惑星を破壊することは資源の回収自体も難しくする。単純な武力としての活用を目論んでいるなら話は別だが」
ジェニファーは昨日の話をエリナにも話して聞かせたが、反応は否定的だった。
「では、あなたはこの兵器について何も知らないということで間違いないのですね」
「そうだね。帝国で使える技術ではないよ。もっとも、商売というのは欲している人に必要なものを提供するというのが原則だ。帝国で使えないからといって、銀河の隅々まで必要とされていないかと言えば否定はできない」
「議会や宮中で噂になっているのはなぜだと思いますか?」
エリナは少し考えて答えた。
「おもしろくて刺激的な話題なら事実と反することでも問題ないのさ。噂は飢えた日常に対するスパイスだ。人生を面白く彩ってくれる重要なものだ。日常の中で惑星破壊兵器と聞くとワクワクする。それだけのことだろう」
確かにエリナの説には納得できるものがある。真剣に取り合う価値のないものだからこそ、多くの人々の興味関心を惹くのだから。ジェニファーも温かいお茶に口をつけた。
「軍事的な利用方法はカミラに聞くといい。軍人の彼女なら適任だ。私は実家の資料でも掘り返してみるよ。参考になる資料が残されているかも知れない」
「手間をかけるわね。お願い」
「大した手間じゃないさ。それより、昨日の続きを話そう。この後カミラが来るし、その時に彼女の意見を聞こうじゃないか」
ジェニファーは頷くと昨日の公務についての話を再開した。
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