8 楽しいのか? その、学校ってトコ
「ヤ、ヤバ……ロボくん、これ、マジでヤバいよ……おいしすぎる……こんなの食べたの、初めてだ……」
私は、めちゃくちゃ感動して、ロボくんのきのこパスタを見つめた。
お世辞じゃなくて、本当においしい。
香りも、食感も、もちろん味も、びっくりするくらい、おいしい……。
「まぁ、これは全部、この山で採れた材料だからな。オレが管理しているから、うまいのは当たり前だ」
得意げに、スカイが言った。
スカイは口が悪いけど、マナーはもっと最悪だ。
パスタを食べてるのに、何かお茶漬けでもかき込んでるみたいに食べる。
こ、子どもか……幼稚園児か……。
「しかし、まぁ……ロボのすごいところは、これに謎草を入れたところだ。謎草をパスタに入れると、サイコーにうまい。これを思いついたロボは、やっぱさすがだよ」
「お二人にそう言っていただけるとうれしいですね。でもそれ以上に、佐藤さんからいただいた謎草のおかげです。これは本当においしい」
「うん。これは本当にうまい。しかし佐藤のババアもよくこんなにたくさんの謎草をくれたもんだな。大感謝だ」
「佐藤さんは、スカイのことが大好きなんですよ。スカイだって、彼女のことが好きなんでしょう?」
「まぁ、好きって言っても、向こうは婆さんだからな」
「素敵な方です。普通、謎草の存在を知っていて、こんなにたくさんプレゼントしてくれる人なんていませんよ」
「まぁな……」
私たちは、あっという間に、きのこパスタを食べ終えた。
さっきまでめちゃくちゃお腹が空いていた私も、これには大満足。
ちょっと信じられないくらい、おいしいパスタだった。
「さて。スカイも目を覚ましたことですし、ボクたちは暗くなる前に帰りますよ」
「なんだ、もう帰るのか?」
「はい。鈴木春世さんもいらっしゃいますし、また今度、ゆっくりと遊びに来ます」
「そうか。じゃあ、そこまで見送ってやるよ」
「洗い物はどうしましょう?」
「あぁ、オレがやっとく。めんどくさくなったら、そのへんに食器を捨てとくよ」
「そういうことはしないでくださいよ、スカイ」
「なんでだよ? 土が土に戻るだけだろ?」
「それはそうかもしれませんけど、食器を作った職人さんの気持ちを考えてください」
私たち三人は、スカイの山小屋を出た。
さっき通ってきた、畑のあぜ道を歩く。
すると突然、スカイが私に話しかけてきた。
「なぁ、お前。春世とか言ったか?」
「何? スカイ」
自分を呼び捨てにされて、私もつい彼を呼び捨てにする。
「春世。お前、よく見ると……意外と可愛いな」
「は?」
スカイに真顔で言われ、私はすぐに真っ赤になる。
な、な、な、な、な、何、突然?
何なの?
このエセ守り神?
「きゅ、急にそんなこと言っても……何も出ないから! って言うか、よく見ると、って何?」
「いや、ホントに可愛いと思ってさ」
スカイがさらにまっすぐ、私を見つめてくる。
え、えっと……。
戸惑いながら、私はスカイの顔を見た。
そして初めてそれに気づく。
最悪な男だと思っていたスカイ。
でもよく見ると……スカイも、なんだか、めちゃくちゃイケメン?
ロボくんとは、また違ったタイプの……イケメン……。
認めたくはないけど……イケメン……。
「なぁ、春世は……やっぱり毎日、あの学校ってトコに通ってるのか?」
「か、通ってるけど?」
「楽しいのか? その、学校ってトコ」
「まぁ、わりと……楽しいよ」
「へぇ、楽しいんだ、学校……」
そんな会話を交わしながら、私たちはさらにあぜ道を歩く。
すると下に見える畑のわきに、一つの人影が見えた。
忙しそうに周囲の雑草を刈り取っている女性。
さっきのお婆さん――佐藤さんだった。
「佐藤さんだ」
私が言うと、ロボくんとスカイが佐藤さんの方に視線を向ける。
「うん。佐藤さんですね。夕方まで一生懸命働いていらっしゃる。佐藤さんが愛情をもって世話をするから、彼女が作る野菜はおいしいんでしょう」
そうつぶやき、ロボくんがスカイの方を見た。
「ほら、スカイ。さっきの謎草のお礼をしないと」
「ったく、しゃーねーなー。佐藤の婆さんのために、一応やっとくか」
後ろ頭をかきながら、スカイが一歩を踏み出した。
そして大きく、両手を広げる。
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