6 花火大会が始まる
気がつくと――私とロボくんは何もない空き地に立っていた。
夜の中、私はキョロキョロと
ど、どこですか、ここ?
急に――めちゃくちゃ
田舎に来てるんですけど!
あせりまくっている私のとなりで、ロボくんが魔法陣から出ていく。
相変わらず無表情だけど、よく見たらちょっとだけ嬉しそうな顔をしている。
「ロ、ロボくん! ここ、どこ? 一体、どこ?」
「どこって、まほろば町ですよ」
「まほろば町? いやいや、ぜんぜん違うし!」
「さぁ、行きましょう、鈴木春世さん。この先に公園があります」
「公園って……そういえばさっき、私たち、公園にいたよね? なのにどうして今、こんな空き地に?」
「それは、あとできちんと説明します。さぁ、急ぎましょう」
そう言って、ロボくんが私の手を取り、走りはじめる。
ちょ、ちょっとロボくん!
そんな、いきなり……。
急に、女の子の手を握るとか……。
こ、これじゃ、私たち、まるで彼女と彼氏みたいじゃない……。
だけどロボくんは、そんな私のドキドキなんか、まったく気にしていなかった。
まるで妹の手を引っぱるみたいに、私をぐいぐいとリードしていく。
気がつくと、私たちは、少し離れた公園みたいな場所に来ていた。
だけど……何、この公園?
こんなとこ、まほろば町にあったっけ?
遊具がなんか、めちゃくちゃ古くさくない?
すっごい手作り感って言うか……。
「あそこに座りましょう。きっとよく見えます」
ロボくんが公園の奥にあるジャングルジムを指差す。
「え? でも、私、ス、スカートなんだけど?」
「あぁ。そうですね。じゃあボクがお手伝いしましょう」
そう言って、ロボくんが私をジャングルジムまで引っぱっていく。
彼だけが、先に登った。
その時――私は見てしまったのだ。
ロボくんの、めちゃくちゃ楽しそうな笑顔を。
いつもは無表情なロボくんが、初めて見せてくれた、
ロ、ロボくんって……こんな顔で笑うんだ……。
え、笑顔も……イ、イケメンじゃないですかぁ……。
でもなんか……ちょっと……可愛い……。
小型犬みたい……。
そこで私は、自分にハッとする。
ヤ、ヤバい……。
わ、私、今、2秒くらい、ロボくんのこと、好きになってた……。
「さぁ、鈴木春世さん。手を――」
「う、うん……」
差し出されたロボくんの手を、私は握る。
私とロボくんの手が重なった。
ロボくんの手は、なんだかとてもあたたかかった。
ロボくんに持ち上げられ、私はジャングルジムに登る。
なんとか二人でテッペンに到着し、そこに座った。
二人で、すっかり暗くなった夜空を見上げる。
なんだか星が、いつもより、よく見えるような気がした。
「ほら、鈴木春世さん。あっちです。始まりますよ」
「え? どっち?」
「あっちです」
ロボくんが指差した方向に、私は顔を向ける。
すると――周囲にいきなり大きな音が鳴りひびいた。
ジャングルジムの高い風に吹かれながら、私はその光景に目を見開く。
どーーーーーん!
パラパラパラ……。
どーーーーーん!
パラパラパラ……。
空に咲いていく、大きな七色の花たち。
は、花火だ……。
マジで、ちゃんと、花火だ……。
家族でやるような小さいやつじゃなくて、花火大会で打ち上がる、ものすごくデッカイやつ。
これは……マジで……本物の花火大会……。
信じられない表情で、私はそれを見上げる。
そんな私に、となりからロボくんがほほ笑みかけてきた。
自然に私も、彼にほほ笑みを返す。
「ね、ねぇ、ロボくん。これ、どういうこと? なんで花火大会が始まってるの? 今年は中止だって聞いてたんだけど……」
「えぇ。今年の花火大会は中止ですよ」
「で、でも、あれ……あの花火……」
「お気づきになりませんか?」
「気づくって……何を?」
「ボクたちが今見てるのは――50年ほど前の花火です」
「え……」
私は、ロボくんをボーゼンと見つめる。
私たちの髪を、ジャングルジムの上に吹く風がサラサラと揺らしていた。
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