21.子供限定! 露天風呂、魚掴み大会開催

「それでは皆さん、魚の取り方は分かりましたね」


「「「は~い!!」」」」


『『『お友達の邪魔はしない! みんな仲良し!!』』』


「そうです。皆さん仲良くですからね。もしも取れない時は、近くのお兄さん、お姉さんを呼ぶんですよ」


「「「は~い!!」」」


 今、露天風呂にはたくさんの子供達が集まっている。地球でいうところの2~8歳までの、魔獣や人族、様々な種族の子供達だ。後で9~12歳の子達も集まることになっているけどな。


 そしてみんなに色々と説明してくれて、確認をしてくれているのはアマディアスさん。それからたくさんの子供達の家族と従業員が、ここ魔獣と魔物専用露天風呂に集まっている。


「それでは始めましょう!!」


 パンッ! パンッ! パンッ!!


 そして説明と確認が終われば、アマディアスさんの掛け声と共に。アマディアスさんが、花火のような魔法を打ち上げて。子供達が約束通り、温泉では走らないの約束を守って、でもどうしても早歩きになりながら、一斉に浴槽の中へ向かった。


 小さい子と言っても、それぞれ種族によって成長は違うから、そのまま自力で露天風呂に入る子供達もいれば、従業員に抱き上げてもらって、中に入る子達も。


 ここでみんな疑問に思うかもしれない。魔獣と魔物専用の露天風呂は、俺が足がつかないほど深い温泉なのに、小さい子供達が入っても大丈夫なのか? って。

 それは心配しなくても大丈夫だ。今浴槽には、魚がギリギリ泳げるくらいの深さしか、お湯が入っていないんだ。1番小さい子供のひざ下くらいだろうか。


 何故そんなにお湯が少ないのか。それは今行われている、急遽開催されているイベントのためで。


 俺が考えたこと。まぁ、正確には俺が考えたんじゃなく、リルとリルの友達との会話で思いついたんだけどな。


 うまく取れない、ツルッと滑っちゃう、難しい。でもさ、うまく獲れたら嬉しくて、きっとジャンプしちゃう。それに獲れないのも楽しい。魚掴み取りだね。

 この話しをしていた時のリル達の表情と言えば、みんな魚を獲って遊びたいって、ワクワクしている表情で。


 そこで考えたのが。どうせ魚は片付けなくちゃいけないし、お湯も完璧に抜いて、掃除をしなければいけないのなら。掃除の前に子供達に楽しんでもらおうと思って。そう、特別開催、子供限定、露天風呂魚掴み大会をやってみたらどうだろうと考えたんだ。


 みんな水遊びが大好きだし、いつもは川や海で、魚を獲っている子達もいるけれど。自然だとなかなか上手くいかなくて。結局獲れないで帰ってくる事も多い。


 だけど露天風呂の中だったら、範囲は決まっているから、魚もそれ以上逃げられないし。ケシーさんのおかげで、魚は大量だからな。

 1人1匹限定だけど、必ずみんなに魚がいきわたるため、獲ることができなかったと、悲しむ子がいないはずで。もしも掴めないようなら、従業員が手伝って獲ってあげれば良い。


 そう考えた俺は、一緒に来ていたアマディアスさんに、すぐに話しをした。そして俺の話しを聞いたとアマディアスさんは楽しそうですねと、すぐに賛成してくれて。それからすぐに俺達は動き始めたんだ。


 もちろんケシーさんにも話したよ。問題を起こしたといえ、この魚はケシーさんが持ってきてくれた魚だったから。でも俺の話しを聞いたケシーさんは、子供達が喜んでくれるならと、全ての魚を寄付してくれたんだ。


 それからは本当に忙しかった。まず施設の掲示板で、イベントの告知をした。朝方の種族の人達と、夜型の種族に人達がいるから、昼部門と夜部門に分けて開催すること。子供達のイベントであることなどを告知し。詳しい話は受付で話をしを聞いてもらうことに。


 それから手の空いている従業員に集まってもらって、これからやることに関して説明をした。みんな楽しそうな催しものだと、集まってくれた全員が参加してくれたぞ。


 そしてその中には、ジェラルドさんとケシーさんも居た。いつも色々やらかす2人は、混ぜるな危険の2人だけど。でもこの2人には特殊な能力が。何とこの2人、子供が絡むことだと、問題を起こさないんだ。


 アマディアスさん曰く。子供を大切に思っているのは自分だけではなく、このどうしようもない人達も子供達は大切で。子供を守ろうと、子供が悲しむことなく過ごせるようにと、本能的に傷付けないよう、問題を起こさないよう、動いているんでしょう。とのことだ。


 この前のトイレ爆発問題の時は、子供を巻き込みそうになったけど……。あの時もしっかり守ったからな。子供はたまたま入ってきただけだし。


 あれが子供でなく大人だったら、片手でひょいと持ち上げての救出だったろうから、かすり傷はおっていたかも。そして少しのかすり傷だから、それで済んでよかったな、と笑って済ませていた可能性も。まぁ、笑って終わらすのは俺が許さないけど。


 あの時のことを詳しく言えば、子供が絶対に傷つかないように、結界も張って避難していたらしい。ガタイの良いジェラルドさんだから、あの小さい子だったら、しっかりと抱きしめていれば、結界がなくとも大丈夫だったろうけど。


 だけど普段、細かい作業が苦手で、大きな結界しか張れないジェラルドさんが。子供だけにしっかりと結界を張ったと。1、2秒もない瞬間に。ノーマン曰く、子供が関わっていましたから、無意識でしょうね、だってさ。


 そしてジェラルドさんとケシーさんは、アマディアスさんまでではないけれど、子供の扱いがとても上手いんだ。だから子供限定のイベントの時は、2人がいると助かるっていうのもある。まぁ、魔王の側近と、勇者の仲間の監視付きでだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る