12.生身の肉体がなくても楽しめる食事、その名も『ご飯石』

 そして俺は魔力を取り込むだけでなく、魔力を取り込んだ後の石はどうなるのかも確認をした。だって取り込んだ後に、その石に魔力が溜まらなければ、1回限りの食べ捨てになってしまう。


 確かにそこら中に石はあるけれど。もしも他の魔物が俺みたいに、この石のことに気づいて魔力を吸い取ったら? いつかは石がなくなってしまうからな。


 だから確認したんだ。そして確認して分かったこと。それは2週間もあれば石に最低限の魔力が溜まり、また魔力を取り込むことができる、という事だった。2週間よりも長くそのままにしておけば、どんどん魔力は増え続け、より多くの魔力を取り込むことができた。


 また味に関してだけど、これが本当に最高で、色々な味の石があったんだよ。まず石の色によって、味の種類が分かれていて、赤っぽい色だとミートソースの味だったり、黒だと醤油味だったりと。地球での料理の味で分けられるのもあったし。

 肌色の石で、これはバナナの味か? と魔力を取り込むと、桃の味がしたりと。全然違う時もあり、なかなか面白かった。


 それだけじゃない。ミートソース味って言ったけど、ただのミートソースじゃなくて、スパゲッティだったり、グラタンだったりピザだったり、リゾットだったりと。取り込む事に慣れてくると、その物の感覚まで分かるようになってきて。

 まぁ、バリエーションがいっぱいで。ちょっとした石の色の変化で、色々な味を楽しむことができたんだ


 だから大食堂を作ってもらった時、俺は師匠やアマディアスさんやジェラルドさんに、この石の話しをした。せっかくの大食堂。こういう石があるんだけど、固形の物を食べらい人達のために、食堂に入れても良いか、ってね。


 すると俺の施設なんだから好きにしたらしい、そうみんなが言ってくれて。だけど、やっぱり石に気づいていたのは俺だけみたいで、最初師匠達は本当にそんな石があるのか? そして俺のように魔力を取り込むことができるのか? と疑問に思ってもいた。


 だから俺は3人に、実際に石を見てもらう事に。そうしたら3人にはやっぱりただの石に見えたらしくて。本当なのか? と疑われてしまった。


 だけどそこはさすが師匠とアマディアスさんというか。これはそういう石だと認識して、かなり集中して石を見てみる事1時間。ついに微かだけど石から魔力が出ているのを見ることができて。最終的には普通に見えるまでに。


 ジェラルドさんはそれから何時間も見ていたけど、結局見ることはできずに。魔王や師匠が魔力を取り込めるかどうか、実験を始めたのを見て、とりあえず自分もって。

 そうして師匠とアマディアスは、何の問題もなく魔力を取り込むことができ。ジェラルドさんは……。魔力が分からないのに、何故か魔力を取り込む事には成功して。そうし魔力を取り込んだせいなのか、それからは突然石の魔力が見えるように。


「やっぱり実践した方が早いって事だな」


 そうジェラルドさんが言うと、アマディアスさんに、これだから脳筋はと言われていた。


 と、こんな風に石のことを分かってもらえて、その後はアマディアスさんの部下や、ジェラルドさんの仲間にも試してもらい。他の様々な人々にも試してもらった。


 その結果、力が強い人達には時間を掛ければ、石から出ている魔力が見えるように。最初は分からなくても、ジェラルドさんみたいに魔力に触れる事によって、見えるようになったり、後は結局魔力は見えないけれど、魔力だけは取り込めると。


 こんな風に見える見えないはあるものの、みんな魔力は取り込めるってことで、大食堂にこの石を置く事に決まった。その名も『ご飯石』だ。ちなみにみんな、俺みたいに味を感じることができたぞ。

 まぁ味と言っても、元々の味を知らない人達は、まずは吸い取ってみて。少しずつ自分の好みの石を見るけるって感じだけだな。


 こうしてご飯石のおかげで、ここへ遊びに来るスケルトン達も、生身の体を持たない魔物達も、この大食堂へ来られるように。なにしろこの街は、様々な種族が集まる街だから、スケルトンや、生身の肉体を持たない魔物もいるわけで。


 みんな楽しみにこの施設の来てくれているのに、俺達だけ大食堂に入れないなんて、つまらないだろ? だから本当に良かったよ。みんな自分の好きな味を見つけて、楽しんでくれてさ。


 そして今日の俺のお昼は、カレー味のご飯石だ。それと麦茶味のご飯石な。ご飯石にはご飯だけじゃなく飲み物の味もあるから、ご飯に丁度いい。

 どちらも茶色のご飯石なんだけど、微妙に色が違う。俺はそれをしっかりと見分けられるから間違う事はない。他のみんなは時々間違えて、あれ? と石を取りに戻ったりするけど。


 まさか地球じゃない別の世界に転生して、スケルトンとして生きてきて、カレーを味わえるとは思っていなかった。


『茶色、茶色♪ う~ん、どの茶色? これかなぁ、あっちの茶色かなぁ。えっと、えっと……、これ!!』


『残念、その茶色じゃないぞ』


『間違い!! 失敗しちゃったぁ。えっと、えっと……、これ!!』


『ははっ、それも間違いだな』


『これも違う? あれぇ?』


 ルリは俺のご飯石を選ぶのが日課になっている。ゲーム感覚で面白いらしい。それと俺にご飯石を取ってあげたいんだってさ。


 今日はジェラルドさんのせいなのかおかげなのか、大食堂が1番混んでいる時間帯を過ぎていて空いているし。俺達の後ろに誰も並んでいないから、ゆっくり選ばせてやれる。混んでたら選ぶどころじゃないからな。


 リルが石を選んでいる間に、俺は『骨崩れない』の石も手に取った。この石も俺が見つけたんだけど、ご飯石と同じように魔力が出ている石で。だけど全部が灰色の石だ。そしてその石の魔力を取り込むと、骨が丈夫になって、骨が崩れにくくなる事が判明して。


 だからこの石も随時大食堂に置いてある。俺がこの石を見つけたことで、スケルトン仲間からかなり感謝された。自分達の寝ぐらに帰る時、買って帰るスケルトン達も。


 あっ、ちなみにお金を持っていない、魔物達や魔獣、精霊や妖精達が、もし何か欲しければ。時々でも良いから、物々交換してもらっている。他の食材を持ってきてもらうとか、装飾品を持って来てもらうとかな。


 ただそれもできない人達には、俺がこの街に来た時同様、アマディアスさんやジェラルドさん達が、その人達のためのお金を出してくれている。


『スッケーパパ、これ!!』


『正解だ!! 今日は早く見つけられたな、凄いぞ!』


『えへへ~♪』


 混んでいる時には、中々石を見つけられなくて諦める事が多いリル。空いている時にかぎって、何故か早く見つけられ、今日もすぐに見つけた。


 そして全部のご飯を受け取ると、俺達は空いている席へ。ジェラルドさんのせいで遅くなったが、やっとお昼ご飯だ。




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お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。

カドブコンテストに向けて書いた新作です!!


目指すは入賞! そして書籍化!!


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