11.スケルトンだって食事をする?
『スッケーパパ、今日は何色?』
『そうだな、今日は茶色かな。濃い茶色とちょっと濃い茶色だ。それと『骨崩れない』』
『う~ん、ちょっとは分からない。でも最初はリル選んで良い?』
『ああ、良いぞ』
俺達が来たのはたくさんの石が、簡単に色分けして置いてある場所だ。何で食堂の料理を受け取る場所に、そんな沢山の石が置いてあるのか。それはこの石が、俺達がスケルトンや固形の食べ物を食べられない魔物達のご飯だからだ。
スケルトンがご飯? と思うかもしれない。だけどこれは本当に俺達のご飯なんだぞ。勿論最初からこの世界に、俺達のような骸骨や、生身の肉体を持たない魔物達に、ご飯なんかあるわけがなかった。
が、何を言おう、この石を発見し、これを俺達のご飯にしたのは誰でもない俺である。
数年前み争いに巻き込まれて、記憶を取り戻した後、俺は骨がボロボロの状態で動いていた。何でそんな状態で歩いていたか。自然に回復するのを待つしかなかったからだ。
治癒魔法が使えない弱いスケルトンとって、自然に漂っている魔力を少しずつ吸収する事でしか、体を治療することができず。だからあの時も自然に治るのを待っていたんだけど。
ただあの時はいつもと違う事が。フラフラと歩いていたら、ある石から魔力が漏れている事に気づいたんだ。今までにそんな石は見たことはなく、その辺に落ちている、ただの石だったはずの石からな。
そしてよくよく周りを注意深く見てみれば、魔力が盛れてる石がそこら中に転がっていて。更に見つめれば、目が慣れてきたのか、どんどんその溢れている魔力がしっかりと見えるように。
何だこれ? そう思った俺はその石を調べてみることに。勿論用心しながら手に取ったさ。争いの巻き込まれて散々な目にあったのに、そして何とか助かったのに。変な石を触って、また変な事になりたくなくったからな。
が、石を手に取っても、爆発するとか魔力のせいで更に体がボロボロになるとか、変なことが起こる事はなく。ふぅ、と肩を撫で下ろす俺。だけどすぐに不思議な感覚に襲われた。
こうなんか、魔力が俺の中に入ってくるような、力が湧いてくるような、そんな感覚がしたんだ。そして思った事。この魔力、吸収することができんるんじゃ? だった。
いやさ、何となくだけど、魔力を自分の体に取り込む事が、出来るんじゃないかと思ったんだよ。すぐに俺は試してみることに。
俺達スケルトンは時々、自然以外で体力を回復させるって言ったけど。もしも近くに魔族が居てくれた場合には、魔族から魔力を分けて貰い、それで体の維持もしていた。そう、あくまでも近くに居てくれた場合だけだけどな。
だけどそのおかげで、魔力を取り込むのには慣れていたから。だからその感覚で、石から魔力を取り込めば良いんじゃ? って。
そしてその結果は成功だった。すぐに石から溢れる魔力が俺の方に流れて来て、すんなり体に取り込まれたんだ。そしてすぐに変化が。ボロボロだった骨は回復し、それどころか体力まで回復したんだよ。
まさか石の魔力を取り込んだだけで、完璧とまではいかなかったけど、ほぼ完璧に体が回復するなんて。
と、体が回復した事に驚いた俺だったけど、それ以上に驚くことが起きたんだ。魔力を体に取り込んだ瞬間、ある感覚が俺を襲ったんだ。何とか魔力から味かしたんだよ。
勿論魔力に味なんかあるわけなく、スケルトンの俺が味なんか分かるわけないから。本当に味の感覚がしただけだけど。
最初に感じた味はホットケーキ味だった。まさかのホットケーキだ。俺は嬉しさのあまり、その場でどれだけ喜んだ事か。
味というものを味わったのはいつぶりだったか。なにしろスケルトンとしてして生きてきて、歳なんて数えていなかったからな。だからどれだけそれが嬉しかった事か。
もしもあの時その場に誰かがいたら、俺は完璧に不審者ならぬ、不審スケルトンだっただろう。石を持って、いや石を掲げて泣いて喜んでいたんだから。
と、まぁ、その時の俺の様子は置いておいて。それから俺は街へ向かう道中、色々な石の魔力を取り込んでいった。この時の俺は、嬉しくて楽しくて、魔力を吸い取ることが止まらなかったよ。だって味だぞ? 止まるわけがない。まぁ、時々ハズレもあったけどな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます