32.実は色々と恐ろしい? 目覚まし鳥①

 テオドアさんとモッチーが帰った後、すぐにアオ達が居る部屋へ戻った俺。するとアオの周りにみんなが集まり、みんなでモッチーの話しを聞いていた。


『へぇ、ちゃんと謝りに来たんだ』


『でも、当たり前だよね。向こうが悪いんだから』


『ふん、謝るくらいなら、最初からやらなければ良いのよ。家族の人だって注意していたんでしょう?』


『私、オラオラって。自分の本当の力も分からずに、向かってくる男嫌いよ』


『そうよねぇ、そんな男嫌よね』


『そういうところを、しっかりと分かっていて。それから私より強い男じゃなくちゃ』


『それはそうよ、自分より弱い男なんて。この前告白してきた奴なんて、私の蹴りが見えないって言うのよ。私は実力の半分も出していなかったのに』


『何よそれ!』


『まったく見えなかったの!?』


『そうなのよ! それなのに私と付き合いたいだなんて』


『若い子だったの?』


『ええ、若い子だったのわ。だから私言ってあげたのよ。もう少し修行してからもう1度来なさいって。その時に私が誰とも付き合っていなければ、夫婦になっていなければ。そしてこれは、今も話していて、1番たいせつなことだけれど。きちんと私に見合う実力になっていたら、考えてあげるってね』


『若い子なら、まぁ、仕方ないのかしら』


『そうね。これが良い歳した奴ならアウトだけど』


『それでその子は、あなたにそう言われてどうしたの?』


『しっかりと頷いて、帰って行ったわ。あの目の力、しっかりと修行してくれたら、強くなれるかもしれないわね』


『後は本人の努力次第ね』


『ここにいるみんなも、しっかり修行をしているのかしら。私達が修行をしている時、あまり見かけないのだけれど』


 何故か男女に分かれて集まっていた目覚まし鳥達。目覚まし鳥の女の子達が一斉に、目覚まし鳥の男の子達を見た。それにビクッとして、あっちこっち目を逸らす男の子目覚まし鳥達。


 モッチーの話しをしていたんじゃないのかよ。いつのまにか理想の男性像の話しになってるじゃないか。まぁ、うん。頑張れ、男の子達。こればかりは俺も手助けはしてやれない。力をつけた俺でも、こればかりは怖いからな。


 目覚まし鳥。一体どんな鳥なのか。とっても可愛いけれど、実はとても怖い鳥。それが目覚まし鳥だ。


 まず、目覚まし鳥の見た目だけれど。大人でもとても小さい鳥で、人の片手ですっぽりと包んでしまえるほどだ。そして目は小さいまんまる目で、色は淡い水色の、見た目とっても可愛い鳥である。

 

 だから人気があって、家族に迎える人達や、相棒として一緒に暮らす人達が多い。勿論勝手に家族になったりしないぞ。ちゃんと目覚まし鳥に、家族や相棒になっても良いか、必ず目覚まし鳥の許可をとる。


 許可をとる? それは勿論そうだろう、とみんな思うかもしれない。ただ目覚まし鳥の場合、必ず、必ず許可を取らないと、命の危険に関わる可能性が。


 目覚まし鳥は可愛いだけの鳥ではない。その名も通り、目覚ましとしての力を持っている。自然で生きている魔獣達や、この街で暮らすまで、自然で生きてきた俺にとって、時間は明るくなれば朝だし、暗くなれば夜ってだけだけれど。


 目覚まし鳥は体感で、正確に時間を計ることができるんだ。しかも細かく分単位で。だから目覚まし鳥の能力を借りて、目覚ましがわりにしている人達がいっぱいいるんだ。


 そういう理由もあって、俺はこの施設ができる前に、目覚まし鳥達と交渉。衣食住を提供する代わりと、身の安全を保証して。この施設の従業員として働いてもらう事に。お客さんから目覚まし鳥の依頼があると、みんなに頼んで仕事をしてもらっている。


 そしてここからは、少し困る目覚まし鳥の説明だ。例えばさっきまで話していた、ダメなお客さんのこと。

 自分達に意地悪をするような人達には、頼まれていた時間ではなく、寝静まった時間にワザと鳴いて起こしたり、まったく時間を教えなかったりと。寝坊しようがどうなろうが、絶対に時間を教えない。


 まぁ、これに関しては、原因は目覚まし鳥ではなく、彼らに悪さをした人達の責任なので、しょうがない。

 それに時々家族や相棒でも喧嘩し、起こさなかったり、ワザと違う時間に起こして、さらに喧嘩が酷くなり時もあるからな。


 そう、このくらいの事ならまだ良いんだよ。まぁ、途中で起こされるのは辛いし、起こしてもらえず遅刻して、問題になる時はあるけど。それでも命の危険はないからな。


 問題はそれ以上の出来事が起こった場合だ。目覚まし鳥の恐ろしさは、ここからが本番なんだ。

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