52.最初のお祝い、アクアとリルの目的?

『こちらの準備はどうですか?』


「おう、こっちは時間通りに終わりそうだ!」


『どんな様子ですか?』


「良い感じですよ。今のところ問題はありません」


『どうですか?』


「準備は万端です。いつでも対応できます!」


 アースドラゴンを狩ってきてから2日。今日はグレーとシェリをお祝いする日だ。だから朝から俺達は大忙し。俺は今回関わるお店を順番に回って、準備の進行状況を確認しながら、足りなくなった物、後から必要になった物を運んでいる。

 まぁ、これと言って大きな問題は今のところ起きていないから、このまま準備ができればなと。


 今までで1番の問題といえば、やはりアースドラゴンの骨を飾ったときだった。一緒に見に来ていたリルと、朝ごはんを食べに来ていた子供達が大興奮。それでアースドラゴンの骨の周りに集まっちゃって。


 みんなをアースドラゴの骨から引き剥がずのに大変だったよ。森の魔獣達に骨を貰っていなかったら、どうなっていたことか。他にもカルロスさんが骨を用意してくれて、みんな嬉しそうに骨を持って帰った。


 と、いうことで、またどうせ騒ぎになるからと、街中のカッコいい骨や、綺麗な骨、変わった骨などをかき集め。グレーさん達のお祝いで、アースドラゴンの骨を見て、興奮してしまった子供達に、骨をプレゼントする事に。

 

 たぶん話しを聞きつけてくる子達もいるだろうから、その子たち用にも、かなりの骨を集めて来た。骨をそのまま食べる子、遊びに使う子、化石みたいな感じで集めている子。色々な子がいるから、けっこう骨は人気がある。


 こうして色々な場所を確認して回った俺は、最後に『工房 メモリー』へ。アクアとリル、アメーリアさんが、最後の小道具チェックをしている。グランヴィルの方は、すでに準備を終えていて、いつでも絵を描ける状態だと言っていた。


『アクア、リル、準備がどうだ?』


『スッケーパパ!!』


『準備バッチリ、もうすぐ終わる』


「そうよね、もうすぐ終わりよね。アクアもリルも、しっかり準備してくれましたよ。髪飾りはアクアとリルだけで選んだんです」


『本当か? それは大丈夫なのか?』


「ええ。確認しましたが、とても良い物を選んでいました」


『可愛い蝶々なの!!』


『羽のキラキラが良い』


 見せてもらうと、なるほどと。蝶々の髪飾りで、虹色に輝いている髪飾りだった。確かにこの髪飾り、シェリさんに似合いそうだな。というか、よくこれを選んだな。


「選んでもらえなくても良いって、それでもしっかりと選んだのよね」


『うん!! この蝶々、付けてもらえたら嬉しいなぁ!!』


『でも、選んでもらえなくても、がっかりしない。後でボクが付けても良いし』


『リルも!!』


 ……アクアとリルが付けるのか? もしかして本当はそれが目的で、選んだんじゃないだろうな。


「さぁ、これでおしまい。準備は終わりよ」


 そんな事を思っていると、準備が終わり、後はグレーさんとシェリさんを待つだけに。グレーさんとシェリさんは、時間通りにメモリーへやって来た。


「グレー様、シェリ様、ようこそいらっしゃいました。このお店の説明は、このお店の責任者のグランヴィルから」


「初めまして、グランヴィルです。こちらでは……」


 この前軽く説明したけれど、改めてグランヴィルから詳しく説明してもらう事に。


『なるほど、色々選べるんだな』


『あなた、私も衣装や宝飾品を付けたいわ』


『そうだな。せっかくだもんな。じゃあ衣装も貸してくれ』


「はい! ではこちらへ」


 衣装部屋にグレーさん達がやって来た。さぁ、ここからは俺が説明だ。俺はグレーさん達に色々衣装を見せながら、最後にグレーさん達が結婚式で着る衣装を見せた。そしてこの衣装を用意した理由を話し、もしよければ使ってくださいと。

 もちろん好きな衣装で絵を描いてもらうのが1番で、こちらの衣装を選ばなくてもいいと伝えた。


『まさか、俺達のために用意してくれたなんて』


『この衣装は、村以外ではなかなか見ないのよね。代々お母様から受け継ぐ物だから。よく用意できたわね。あなた、私これが良いわ!! せっかくの思い出の絵だもの。この衣装で絵を描いてもらえれば、ずっと思い出として見ることができるのよ』


『ああ、そうだな! 俺もこの衣装で絵を描いてもらいたい。スケさん、用意してくれてありがとう。俺達はこの衣装を使わせてもらうよ』


 うん、衣装を用意できて良かった。また、この衣装はこの施設にいる間は、そのまま着ていて良いと伝えると、さらに2人は喜んでくれたよ。と、衣装が決まったところで、アクアとリルが2人の元に。


『これ、似合う。ボク達が選んだ』


『綺麗な蝶々なの!!』


『髪飾り、付けても良い』


『選んでくれたら嬉しいなぁ』


『でも他のでも良い。どれが良い』


 待て待て待て、そうグイグイ押し付けるな。シェリさんがビックリしてるだろう。俺は2匹をつかまえ、俺の方へ引き寄せる。


『すみません!』


 謝る俺。グイグイ行こうとするアクアとリル。そんな俺達に、最初はちょっと驚いていたシェリさん。でもすぐにニコッと笑ってアクアとリルの前に来てしゃがむと、そっと鳥の髪飾りを手にとった。そして髪にささっとそれを付けて、鏡で確認する。


『とても可愛くて、素敵な髪飾りだわ。選んでくれてありがとう。この髪飾りをぜひ使わせてね』


 それを聞いてニコニコのアクアとリル。俺は一応シェリさんに確認した。押し付ける感じになってしまったから。だけどシェリさんは蝶の髪飾りが気に入ったと、その後アクアとリルの事を抱きしめてくれたんだ。


 こうして衣装と髪飾りは決まり、他にも少し小道具を選んだ後は、早速絵を描いてもらい。こちらからのプレゼントという事で、2番目の大きな絵の値段で、1番大きな絵を描くことに。


 そして出来上がった絵は……。グレーさんもシェリさんも、とても幸せそうな表情で寄り添っている、素敵な絵だった。


『素敵ね。本当に嬉しいわ』


『ああ、これはいつまでも大切に飾ろう』


 シェリさんは泣いていたよ。こんなに喜んでもらえるなんて、本当に良かった。最初のお祝いは成功だな。なんて感動している俺に、アクアとリルの小さな話し声が聞こえてきて。


『リル、やっぱりあの蝶の髪飾り良い』


『うん!! キラキラなの!!』


『僕達にも絶対似合う』


『うん!! 絶対似合う!!』


『選んで良かった。後でスッケーパパに買ってもらおう』


『うん!! 買ってもらおう!!』


 お前達、やっぱりそっちが目的か!?

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