16.モグー叩きにハマった師匠

 6階に上がると直ぐに玄関になっているわけじゃなくて。何か作業をできるようちょっとしたスペースがあって、その先が玄関になっているんだけど。

 そのちょっとしたスペースの所に。スノーベアーを半分くらいにした、それでも大きなスノーベアーのぬいぐるみを持った師匠が立っていた。


 ちなみにスノーベアーとは、ツキノワグマの2倍くらいにした、白色のクマみたいな魔獣だ。だから半分くらいの大きさのスノーベアーのぬいぐるみでも、かなりの大きさなんだよ。しかもこれ、施設の景品じゃないか。


『師匠!! いつからここに!? 連絡をくれれば、俺が師匠の所へ行ったのに」


「なに、わしもさっきまで遊んでおったんじゃよ。それにお主じゃないが、それでそれでそろそろ戻ってくるのが、気配で分かったからの。じゃからここで待たせて貰ったんじゃ。ほれ、リル。これをお主にやろう。モグー叩きで今日の記録を更新したんじゃよ」


『大っきいぬいぐるみ!! おじいちゃん、ありがとう!!』


『すみません、いただいちゃって』


「なに、わしには必要ない物じゃからな。それに家にもう何個もあるからの」


『何個も? ぬいぐるみがですか? 大人用の景品はありませんでしたか?』


「記録更新し過ぎて、景品がまだ届いていないようじゃ。それに最近どうも、ぬいぐるみを集める事にハマっておってな。じゃが、このぬいぐるみはもう持っておるから、リルにプレゼントじゃ」


『記録更新のし過ぎって、どれだけ更新しているんですか?』


「最近はあの遊びにハマっておってな、はははははっ!」


「……そうなんですね。すみません、すぐに開けます!」


 俺はすぐにドアを開け、客室に師匠を通そうと思った。だけどどうも、今日師匠は俺にマッサージを受けに来たらしく。その理由が今話していた、最近ハマっている遊び、モグー叩きのやり過ぎで肩と腕が疲れた、という理由らしい。


 モグー叩き。この世界に住んでいる、モグーというモグラに似ている魔獣がいるんだけど。モグラ叩きってあるだろう? それのモグーバージョンのモグー叩きが、遊技場にあるんだ。係員が魔法を使い、ランダムでモグーを操作して。点数によって景品が貰える。


 遊技場には他にもたくさんの遊具があって、必ず景品が貰えるようになっていてる。子供も大人も、どの種族の人達も楽しめるように、様々な種類の景品を用意してあるぞ。子供ならおもちゃやぬいぐるみにお菓子、大人ならお酒とか日用品とかな。


 それで師匠は最近、モグー叩きにハマっているらしく。ここ最近の記録更新は、全て師匠が叩き出していると。そしてその景品として、最初はお酒をもらっていたけれど。

 あまりの記録更新の頻度に、お酒の景品の補充が間に合わず。代わりにぬいぐるみを貰っていたら、そのままぬいぐるみ集めにハマったと。


 だけど今回は、同じぬいぐるみだったため、リルに巨大ぬいぐるみを持ってきてくれたらしい。お酒を早具補充しないと。


 と、それは良いとして。いや景品がないのはダメだけど。大賢者がモグー叩きにハマってる? 師匠が遊ぶ時は、力を使わないようにしている。本気になればなんでもできちゃうからな。普通の他の人に合わせて遊んでいるんだ。


 そんな師匠が真剣にモグー叩きをしている姿を考えると、どうにも違和感しかない。しかもそれで肩と腕を疲れさせるって。どれだけハマっているんだか。


 俺はリルに先にご飯を食べているように言い、すぐにベッドを用意して、師匠のマッサージを始める。


 俺はマッサージを習い始めてから少しして、ある力を手に入れた。何故かお客さんのこっている箇所や、痛めている場所が分かるようになったんだよ。

 もしかしたらご飯石を見分けられるようになったことや、凄い魔力を備わったことと、同じような感じかもしれない。衝撃により、色々な力を備わったついでに、この力も授かれたって。俺にとっては最高の力だ。


 その力で師匠を診てみると、師匠が言った通り、腕と肩が、オレンジに染まって見えた。症状は軽い方から薄いオレンジに始まり、だんだんと濃くなっていって、最終的には真っ赤に見える。


 今回はそこまで濃いオレンジには見えなかったけれど、ここまで疲れさせるって、本当にどれだけモグー叩きをしていたのか。


『師匠、どうでしょうか?』


「うむ。更に腕を上げたようじゃの。わしが言ったように、しっかりと努力を続けておるようじゃな。とても気持ちが良いぞ」


『ありがとうございます!!』


「このまま励むのじゃぞ」


『はい!!』


「それとのう、今日お主の所へ来たのは、何も遊んだついでではないのじゃ。情報があるんじゃよ」


『情報?』


「ケシーが目撃されたのじゃ」


『ケシーさんが!?』

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