17.嬉しいけれど困った知らせ

『それは本当ですか!?』


「確かなようじゃ。というかのう、本人が直接話しかけてきたらしい。それで近々ここへ遊びにくると。それが3日前だったそうじゃ」


『本人が?』


「そうじゃ」


『はぁ、ケシーさんが……』


「何が起こるか分からんが、いや、何も起こらないかもしれんが。いやいや、確実に起こるのか? 何にしても、何が起こるか分からず、どう対策を取るのかじゃが。とりあえず、心の準備をしておいた方が良かろう」


『情報ありがとうございます。はあぁぁぁ』


 俺は大きなため息を吐いた。


「はははっ、お主も大変じゃな。その反応をするのも仕方がない」


『はぁ、何もしないで、ただ楽しんで帰ってもらえれば良いんですけどね。必ず何かやらかすんだから』


「責任者は大変じゃの」


『その大変な責任者に無理やりしたのは誰ですか?』


「何のことかの?」


『はあぁぁぁ』


 ケシーさんは遠くに住んでいるんだけど、施設を気に入ってくれて、時々遊びに来てくれる女性で。優しくて、強くて、みんなに人気者なんだ。彼女がこの施設へ来れば、彼女の周りに人だかりができるほどに。俺もケシーさんのことは勿論好きだぞ。


 ただ、ただ、だ。1つ、ケシーさんには問題が。それのせいで今の俺達の反応になるんだけど。


 実はケシーさん、ここへ来る度に問題を起こすんだよ。何て言うのかな、ジェラルドさんと同じ感じか? 


 俺はジェラルドさんに、何もしないでくれって注意していただろう? ケシーさんも同じで、必ず余計なことをして問題を起こすから。ジェラルドさんと同様、毎回注意している。が、毎回注意しているのに、毎回問題を起こすのがケシーさんで。


 前回は子供達にお願いされて、子ども達のために、魔法を披露してくれたケシーさん。子供達がとっても盛り上がる、素晴らしい魔法を見せてくれて。簡単にいうと動く魔法だな。


 魔法で火花を散らし、その火花で魔獣や模様を作ると、それを別の魔法で動かして。動くはずのない模様が、空中を自由自在に動いたから、子供達はみんな大喜び。


 と、ここまでは良かった。気をよくしたケシーさん。頼まれていない魔法まで披露して、ジュラルドさんみたいに、中庭を爆発させ。それを片付けようとしてまた魔法を使い、更に爆発させるっていう。ダブルで問題を起こした。


 こんな風にやり過ぎるのと。自分の感じるままに行動するケシーさん。この自由に行動する事でも問題を起こして。問題ばかり起こすんだよ。だから彼女の事は大好きなんだけど、今度はどんな問題を起こすのかハラハラなんだ。


『ケシーお姉さんくるのぉ?』


『ん? 何だ、もうご飯を食べたのか?』


『うん! ご飯美味しかったから、すぐに終わっちゃったぁ。ねぇ、スッケーパパ、他にも何か食べたい』


『ははっ、分かった分かった。後で何か作ってやるから』


「あの量をもう食べ終わったのか? 凄いのう。じゃが、食べることは大切じゃ。たくさん食べて父のように立派に育つのじゃぞ」


『うん!! ねぇねぇ、ケシーお姉さん来る?』


 ……ケシーお姉さん。俺よりも確かかなり上……、いやいや何でもない。姿はお姉さんだしな。


『ああ、近くで見たって言う人がいるから、もうすぐ来るかもしれないな』


『本当? わぁい!! いっぱい遊んでもらうんだ!!』


 リルもケシーさんに遊んでもらうのが好きだからな。だけど、うん。この部屋で遊ぶのだけはやめてもらおう。


 俺と師匠の話しを聞いてから、ご飯を作って貰うまで、遊んで待つことにしたらしいリル。貰ったスノーベアーの巨大ぬいぐるみを咥えて、ふかふかカーペットの方へ移動すると。ぬいぐるみに色々な姿勢をさせて遊び始めた。


「それでじゃが、ケシーの方はどうするかの?」


 リルが落ち着くと、そう聞いてきた師匠。


『ノーマン達に連絡しておきます。それでケシーさんが来たら絶対にジェラルドさんを近づけるなって。後は従業員にも注意をさせて。危険な場所にはなるべく近づけさせないようにします。今できることはとりあえずそれくらいですかね』


「そうじゃのぅ、何が起こるか分からんのがどうにものう」


 思わぬ問題ばかり起こすケシーさんの、対処方法なんてないからな。ジェラルドさんの場合は仲間が止めてくれる分、ケシーさんよりもやらかしが少ないかか? いや、同じなのか。どちらにしろ対処法がないから、警戒することしかできない。はぁ、どうしたものか。

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