48.色々最悪なアースドラゴンと俺の新しい呼び名

『そんなに酷いのか!?』


『うん、だから僕達、どんどん外の方へ逃げてきたんだ』


『でも、外に近すぎると、今度は人間や獣人に遭遇しやすくなっちゃうでしょう?』


『だからどうしても、僕達この辺にいないと』


『あんまり外に近づきすぎて、人間に襲われた子達もいるんだよ。ちょっとの怪我で済んだけどさ』


『で、そいつは何つってるんだ?』


『ここは俺の縄張りにしたって』


『誰も逆らうことは許さないって』


『それから必ずご飯を運んで来いって。運んで来なかったら、すぐにでもお前達を殺してやるって』


『全員し殺してご飯がなくなっても、次の場所にいけば良いだけだからって』


『だから強いみんなが、僕達はとりあえず逃げろって言ってくれたんだ』


『それからずっと戦う音が聞こえてくるの。時々止まるけど……』


 話しを聞いている最中だった。ドーンッ!! とういう大きな爆発音が森の中心部から聞こえてきた。


 今俺とススとケケが居るのは、隣の森の少し入った所だ。隣の森に着くまでに、何も問題は起きず、お昼過ぎには着くことができ。すぐに俺達は情報を集めようと、魔獣を探そうとしたんだ。


 すると、着いて早々、森の中心部から大きな爆発音が。気配を探れば、森の中心部でかなりの力を持っている者と、普通に強い部類に入るだろう者達が戦っているのが分かり。おそらくかなりの力を持っているのが、アースドラゴンだとは思ったんだけど。


 すぐに森に入った俺達。すると少しして、うさぎに似ているウッサーという魔獣達の群れと出会い。最初俺達に警戒していたウッサー達だけど。俺達がアースドラゴンを倒しにきたと分かると、色々話しを聞かせてくれた。

 

 数週間前に何の前触れもなく、アースドラゴンは突然この森へ現れたらしい。そうしてすぐに何匹かの強い魔獣を倒し森の中心に居座ると、今聞いたことを、森に住んでいる魔獣達に言ってきた。


 そこで子供達や弱く戦うことができない魔獣達を、強い魔獣達が逃し。強い魔獣達はそのままアースドラゴンと戦っていると。


 なるほど、かなりの魔獣が集まって戦っている。頭数が多いため、まだ死んだ魔獣はいないようだが。問題のアースドラゴン。あいつまだ本気を出していないな。それで魔獣達が必死に戦っている姿を見て楽しいんでいるって感じか。


 性格が悪そうなアースドラゴンだ。一体どこから来たんだ? こんな小さな子達まで標的にするなんて。しかも他の必死な姿を笑うなんて、最低の奴だよ。まぁ、ここは弱肉強食の世界だから、強い魔獣は生き残るには当たり前なんだけど。でもそのやり方がな。


『分かった。情報ありがとう。みんなはこれからもここに?』


『うん。今のところはここが安全だから』


『よし、じゃあここに結界を張ってやるから、俺達がアースドラゴンを倒すまで、結界の中から出るなよ』


 俺はすぐにウッサー達の周りに、悠々と動けるくらいの結界を張ってやる。


『わぁ!!』


『凄く丈夫な結界!!』


『スケルトンなのに、こんなに強い結界を張れるの!?』


『まぁ、スケは普通のスケルトンじゃないからな』


『ああ。師匠とアマディアス様とジェラルドの弟子だし』


『たぶん世界中のスケルトンの中で最強のスケルトンだよな。いや、スケルトンどころか、世界中でも、スケに勝てる奴がどれくらいいるか』


『規格外のスケルトンだよな』


『化け物実力者の仲間だよな』


 化け物実力者って、師匠やアマディアスさんやジェラルドさんと、一緒にしないで欲しいな。俺はちょっと強いスケルトンだよ。


『凄いスケルトンなんだね!!』


『じゃあ、じゃあ、あいつもすぐにやっつけてくれる!?』


『あ、ああ。大丈夫だぞ。あのくらいのドラゴンならすぐに倒せるから。だからもう少しだけ、ここでじっとしていてくれな』


『うん!!』


『あっ! あのね。周りにも僕達みたいに逃げて来たみんなが居るんだ。もし会ったら、みんなにも結界張ってくれる?』


『ああ、勿論。じゃあ、俺達は行くから、本当に大人しくしていてくれ』


『『『最強スケさん!! 頑張って!!』』』


 ……はぁ、まったく。ススとケケのせいだぞ。新しい呼び名が出来ちゃったじゃないか。俺は少し強いだけなのに。


 俺のことを最強スケさんと呼ぶウッサー達に見送られ、すぐにアースドラゴンの元へ向かう。途中、ウッサー達に頼まれたから、サッと確認できた魔獣達には結界を張りながら進んだ。

 そんな進んでいる最中にも、森の中心部からは何度も爆発音が。魔獣達はかなり苦戦しているようだ。だけど、俺達が来たからにはもう大丈夫。


 さっきウッサー達に言った、あのくらいのドラゴンならすぐに倒せる、ってやつだけど。あれは別にみんなを落ち着かせるために言ったわけじゃない。本当にすぐに倒せるからそう言ったんだ。たぶん俺じゃなくてススとケケでも大丈夫だろう。


 勿論あのドラゴンは今、まだ本気を出して戦っていない。だけど調べた感じ、本気を出したところで、別に問題ないだろうって。

 

『スケ、最初俺達がやっても良いか?』


『新しい技を試したくてさ』


『新しい技? おい、あんまり強い攻撃をして、骨をボロボロにするなよ? この森を救うことは勿論だけど、本来の目的は、綺麗に骨を持って帰ることなんだからな?』


『分かってるって。大丈夫さ、1番安全そうな胸の辺りを狙うから』


『そうそう。それに岩で練習していた時は、ほぼ毎回成功してたからさ』


『……本当に大丈夫か?』


 まったく、もしもそれで骨がボロボロになってみろ、少しの間動けなくしてやるからな。


 ススとケケの攻撃に不安を抱きながら、すぐに森の中心部へ着いた俺達。そこにはかなり疲弊している魔獣達と……。


『ガハハハハハッ!! 誰が応援に来たかと思えば、最弱のスケルトンか』


 魔獣達と違い、ぜんぜん元気なアースドラゴンが、大きな岩の上に座っていた。

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