47.何を狩に行くか、それが問題だ

『それで、どの魔獣を狩りに行くんだ?』


『やっぱり死体じゃダメだもんな』


『当たり前だろう。新鮮なって言ってるんだから』


『そう、狩ったばかりのやつじゃないとダメだ。大切な贈り物だからな』


『大きくて、強い魔獣が良いんだよな?』


『ああ。ただ、飾れないほど大きいのはちょっとな。俺の所のレストランで飾れるくらいの大きさが良い』


 俺は今、自分の家に友人を呼び、これから狩る魔獣について話している。友人とは勿論スケルトン仲間だ。それとブラックタイガーのスケルトンにも来てもらった。


 友人の名はススとケケ。何故この名前にしたのか、その前に何故スケルトンなのに名が付いているのか。俺は仕事柄、スケ先生やら、スケルンやら呼ばれているが。本来俺達スケルトンに名はないからな。


 このススとケケ。俺の古い友人なんだが。俺が施設経営を初めてから少しして、落ち着いた頃に久しぶりに会いに行った。すると2人は、俺が俺の巻き込まれた争いで消えたと思っていたらしく、俺が生きていてとても喜んでくれて。


 連絡をしなくて申し訳なかったと、まずは謝り。その後に今俺が何をしているか話し、2人を施設に招待することに。


 すると2人は施設も街も、俺みたいに凄く気に入ってくれて。そのまま街で暮らすようになったんだ。時々俺の施設でバイトをしながら。


 それで、俺がスケ先生とか、スケルンと呼ばれているのを聞いて。自分達も名が欲しいと。勝手に自分で考えてススとケケに決定。しかも名が定着したことで、前よりも強いスケルトンに進化。今では俺と同じ、共に森を守ってくれている。


 俺の場合は、どの名前が定着しているか分からないけれど。巻き込まれた争いのおかげで力が強くなった所に、どれかの名前が定着して、さらに強くなっているんじゃないか。と、前にアマディアスさん達が言っていた。


 ちなみに2人も師匠の訓練を受けたぞ。アマディアスさんとジェラルドさんの訓練はやらなかったけど。流石にそこまでは、2人の力では消えてしまう可能性が高いからと。俺も何回も消えかけたんだが……。


 まぁ、そんなわけで、俺達3人で狩に行くことは問題がないから、今回は2人に手つだってもらうことに。


 そしてブラックタイガーのスケルトン。彼の名はブッガーで、名は俺が付けた。彼はこの森にもともと住んでいて、俺が森で訓練をしていた時に出会った。そしてリル同様、何故か俺に懐いてくれて。以降は普段は森の中に住んでいるけれど、時々遊びに来てくれるように。


 また長距離を移動しないと行けない場合、リルで移動できない時には、ブッガーに頼んでいる。だから今日は、衣装担当になったリルに変わって来てもらった。

 ススとケケのために、ブッガーの友人の、ブラックタイガーのスケルトン2匹にも来てもらったぞ。勿論ただでとは言わない。好きなご飯石を、帰りにあげるつもりだ。


『カッコいい、ほどほどの大きさの魔獣か』


『ワイルドボアとかブラッドベアーとかか?』


『まぁ、普通に考えればな。だけど今回は贈り物だからな。どうせならもう少し珍しい魔獣の方が良くないか?』


『珍しいって言ってもな。この森に強い魔獣は多いけど、珍しいかって言われるとな』


『う~ん、スケ的には、どんな魔獣が良いと思ってるんだ?』


『見栄えのするやつが良いと思ってるんだけど。こう真ん中に置いて、部屋に入った瞬間、それが何の魔獣の骨か分かるような、しっかりとした骨が良いと思うんだよ』


『見栄えか。じゃあやっぱり、ワイルドボアやブラッドベアーみたいに、見慣れてるいつも通りの魔獣の骨じゃな』


『ほら、やっぱり珍しい魔獣の方が良いんだって』


『だからその珍しい魔獣ってどれだよ』

 

『う~ん、それは……』


 決めてから狩に出た方が良いって、話し合いになったけど。どうにもしっくりくる魔獣が浮かばない。ブッガー達なんて俺達の話し合いに飽きたのか、お腹を出してゴロゴロ寝ているし。お腹と言っても骨だけど。


 と、しばらくそれぞれ、どの魔獣が良いか考えていた俺達。考えていたため部屋の中は、ゴロゴロしているブッガー達の骨の音しか聞こえていなかったんだけど。ススが急に声をあげた。


『そうだ!! スケ、別にこの森で狩らなくても良いんだろう?』


『ああ、それは別に』


『隣の森にさ、暴れドラゴンが現れたって、2日前に聞いたんだよ。それで森の魔獣が困ってるって。しかもその暴れドラゴンけっこう強いらしくて。森に住んでいる強い魔獣達も対処に困っているって』


『ドラゴン?』


『ああ。だからさ、そのドラゴンを俺達が狩るのはどうだ? そうすれば俺達は骨を手に入れられるし、向こうの森の魔獣達は、ゆっくり暮らせるようになって。お互いにとって良いことしかないだろう?』


『どんなドラゴンなんだ?』


『アースドラゴンだってさ。大きさ的には普通の大人アースドラゴンよりも小さいらしい。だから大きさもちょうど良いんじゃないか?』


『なるほど……。それは確かに良いかもしれない。そいつは暴れていて、周りが困っているんだな?』


『ああ、そう聞いた。まぁ、間違いだったたら、他の奴にを狩れば良いさ。向こうにはジャイアントボアもいるしさ』


『ジャイアントボアも良いな。血も肉も骨も、全てが素材になる。あー、でも骨が少ないな』


『まぁ、とりあえず行ってみよう。それで暴れアースドラゴンがいれば良いし、いなければその時考えよう』


 こうしてとりあえず狩る物は決まり、俺達は行く前にアクアとリルの所へ。隣の森へ行くため、今日は夜は帰らないかもしれないため、夜は師匠の所へ行くよう伝えに行ったんだ。何かあり俺が帰れない場合は、師匠かアマディアスさんに頼むことになっている。 


 帰れないかもしれないことを伝えた俺。


『分かった』


『行ってらっしゃい』


 まぁ、うん。しっかりと小物をチェックするアクアとリル。俺の方を見向きもしなかった。俺はこれから、一般的には危険と言われるドラゴンを狩に行くんだが? やられる気はぜんぜんないけどさ。


 軽くため息を吐きながら、アクアとリルの後は師匠に会いに行き、アクアとリルのことを頼むと、いよいよ俺達は隣の森へと向かった。

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