30.喧嘩を売られた目覚まし鳥のアオ

『はい!! 次は僕です!! 702! 一緒に泊っていたモモン。あいつが最悪でした!! 僕に喧嘩を売ってきたんだよ!』


『喧嘩だっ……』


 喧嘩と聞いて、俺が確認しようと声を出すと、それをかき消すように、目覚まし鳥達が、今日1番の騒ぎに。


『喧嘩だって!!』


『私達に喧嘩を売ったの!?』


『それは本当なのか!?』


『本当の本当だよ。あいつ、僕に喧嘩を売ったんだ!!』


『なんて事だ!!』


『すぐにそいつの所に行かないと!!』


『俺達の力見せてやる!!』


『みんな待ってくれ!! 俺の話しを聞いてくれ!! というかまずは話しをしっかりと聞かせてくれ!!』


 俺は騒ぐ目覚まし鳥達に大きな声で話しかける。だがみんな、興奮してしまっていて、全然俺の声に気づかず。挙句の果てには全員で家から出て行こうとして。


 俺は仕方なく風魔法を使って、みんなを部屋の1箇所に集めることに。勿論怪我をしないように、でもしっかりと全員を集められるくらいの、ちょうど良い力加減で、風魔法を使ったよ。


『わあぁぁぁ!』


『もどっちゃうぅ!』


 そうしてきちんと全員を風魔法で捕まえた俺。風魔法を止める前に、全員におとなしくするように約束してから、風魔法をやめた。


『まったく俺の話しを聞かずに、勝手に出て行こうとするんじゃない!』


『スッケおじさん、ごめんなさい』


『『『ごめんなさい』』』


『でも、モモンが喧嘩を売ってきたって』


『それは許しちゃダメだもん』


『だからそいつの所に行かないと』


『だから待てって。まずは確認をしなくちゃいけないんだよ。えっと、アオ、こっちに来て、しっかり話しを聞かせてくれ。もしかしたらこっちが謝らないといけないかもしれないからな』


 アオとは、今喧嘩を売られた、と報告してきた目覚まし鳥の名前だ。


『謝る!? 喧嘩売られたのに!? ダメだよそんなの!』


『だからまず話しを聞くって言ってるだろう。良いか、最初から説明しろ』


 アオがそのお客さんの部屋へ行ったのは、一昨日の夕方からだったらしい。何故アオがお客さんの部屋に行ったのか。それは仕事のためだ。


 その部屋には狼の獣人と、彼の相棒のモモンが泊っていて。最初のうちは何も問題はなかったらしい。いつも通りに時間を聞いて、それから契約通りに夜のご飯を貰って。


 でもそれは狼の獣人が寝てからだった。時々だったけれど、モモンがアオもことを見て、バカにしたように笑ってきたと。何もしていないはずなのに、何で笑ってくるんだ? そう思ったアオ。だけどお客さんだからと、とりあえずは文句を言わずに、ただ無視をする事に。


 しかし昨晩、昨日以上に何故かバカにしてきたモモン。しかも今度はバカにしてくるだけじゃなく、手をちょいちょい動かし、アオに自分の方に来るように言いながら。同じように小さくても、俺の方が上なんだぞと言ってきたと。


 ちなみにモモンは、モモンガに似ている魔獣で、大きさもモモンガと同じくらいの大きさだ。が、小さいわりに魔法の能力はそこそこで。しかも体術に関してはかなりの力を持っている魔獣なため。自然界に住んでいるモモンは、そこそこ危険な魔獣に分類されいる。


 そしてそのモモンは、小さい魔獣同士、どうもアオをライバルというか、下に見ていたらしく。それでこう言ってきたと。


「お前達、結構強いんだってな。でも、俺の方が断然上なんだぜ。ほら、かかってこいよ。俺の強さを見せてやる」


 そう言われたアオ。そこまで言われて黙っているわけにはいかない。という事で、モモンの喧嘩を買ったらしい。


『何だって!!』


『やっぱりいかなくちゃ!!』


『そいつは街を出たの!?』


『それともまだ街に居る!?』


『だから待てって!!』


 俺はまた目覚まし鳥達を風魔法で止めた。そういえば、さっきもみんなで行こうとしていたけれど、相手がどこに居るか分からずに、出て行こうといていたのか? 


 騒ぐみんな。でもここで止めたのは意外な人物だった。


『みんな待って! 僕、ちゃんと奴に勝ったよ!! あいつをノックアウトしてやったよ!!』


 ふんっ!! と胸を張るアオ。それから足蹴りをしたり、翼を平手打ちするみたいの動かしたり。その姿にほんの数秒だったけど部屋の中がし~んと静まり返り、俺は目頭を手で覆った。やっぱりか。やっぱりそうなるよな。


『良くやった!!』


『流石ね!!』


『フンッ! まったく自分の力を分かっていない連中はこれだから』


『これで私達の力を、しっかり分かったんじゃない?』


『そうだな、もう喧嘩は売ってこないだろう』


『はぁ、喧嘩を売ってこない、じゃないんだよ。確かに向こうが喧嘩を売ってきたかもしれないけど』


 と、話している最中だった。ベルが鳴り、誰かが目覚まし鳥の家を訪ねてきた。部屋に結界を張り、みんなが勝手に外へ出で行かないようにしてから、みんなの代わりに俺が玄関へ。ドアから外を覗くと、そこには従業員のヘレンが立っていた。


『スケさんすみません。お客様がスケさんに謝罪をしたいと』


『謝罪?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る