25.慌ただしいバーベキュー、みんなの串の刺し方

『さて、次はこれにするか』


『僕もやって良い?』


『ボクも』


『良いけど、自分を刺さないようにな?』


 俺の作業を見ていたリルと友達魔獣達。自分達も食材に串を刺したいと言ってきたから、やらせてあげることに。

 ただ、人型や俺みたいに、しっかり食材も串をもてるわけじゃないから。間違って自分を刺さないように、痛い思いをしないように、気をつけて見ておかないと。


 ……なんて心配していた俺の気持ちよ。最初は辿々しく、串をなんとか持とうとしたり、食材を持とうとしたり。串に刺さりやすいように、柔らかい食材を選んだり、同じ串のはずなのに、こっちの方が尖っていると、串を選び直したり。


 これじゃあダメだと、まず地面に串を刺してから、食材を刺したらどうかって。それで何とか地面に串を刺して、立たせることに成功したんだけど。食材のを持とうとしているうちに串が倒れ。なんとか食材を掴めば、その間に串が倒れ。


 持つ事にこだわらずに、咥えれば良いと思うんだけどな。そのうちしょんぼりしたり、イライラしてきてしまったみんな。それで俺は、みんなから食材と串を戻してもらい、魚が焼けるのを楽しみに待ってもらおうと、声をかけようとしたんだ。そうしたら。


『もう面倒だから投げちゃえ!』


 1匹の子が食材を後ろ足の所に置き、地面に串を刺すと、思い切り食材を後ろ足で蹴り上げて。そのまま落ちてきた食材は、見事串に刺さり。それを見ていたみんなが真似をして、全員が串に食材を刺すことに成功した。


『こっちの方が楽だよねぇ』


『手で真似して刺すより、最初からこれにすれば良かったよ』


『時々薔薇に、獲物刺すもんね』


『スッケーパパも、手でやるより、これの方が早いよ』


 そうですね、君達は野生の魔獣でしたね。街がある森には、かなり棘の大きなイバラがあって。よく獲物を狩るときに使ったり、狩った獲物を一時的に置いておくのに、イバラに刺して置いておいたりと。刺す動作には慣れているんだ。


 その感覚で食材を串に刺したらしい。なんか心配してちょっと損した気分だ。だけどまぁ、本当に怪我されてもな。わざわざ怪我をすることもないし。


 こうしてみんなが一緒に刺してくれたおかげで、すぐに串に食材を刺す作業は終了。そして、その作業がちょうど終わった頃、みんなの獲った魚が焼き上がった。


『うん、良い感じかな。今お皿に乗せるから待っててくれ』


 みんな俺が並べたお皿の前に、しっかりと座って待ってくれる。俺は串を外して、順番に魚をお皿に乗せていって。味を付けるか聞くと、魚はそのままで良いと。せっかく自分で獲った魚だから、そのままの味を味わいたいらしい。


『よし、みんなのお皿にしっかり乗ってるな。みんな自分の魚に間違いないか?』


『『『うん!!』』』


『よし! じゃあ食べて良いぞ!』


『『『いただきます!!』』』


 ……うん。5秒もかからなかった。次の食材を焼いておこうと、後ろのテーブルに置いてあった、素材が乗っているトレイを手に取り、みんなの方を見れば。


『あ~、美味しかった』


『パサパサしてなかったね』


『そういう美味しいお魚のことを、脂が乗っていて美味しいって言うって、ママが言ってたよ』


『ふ~ん、そう言うんだ。みんな美味しかった?』


『うん!』


『私のも美味しかった!』


『じゃあみんな、脂が乗ってて美味しいお魚さんだったんだね』


 小さい子達が、脂が乗ってて美味しい魚って言葉を使うのはなぁ。魚屋の店主とか、買い物に来た大人のお客さんにいうならあれだけど、2、3歳の子達が言うとちょっとした違和感が。みんな大人の真似をしたいんだなぁと、笑いそうになってしまった。


 が、今はそれじゃなく。みんなが小さいとはいえ、魔獣だってことを忘れていた。そうりゃあ、顔よりも小さい魚だ。あの口で魚を食べれば、よっぽどちまちま食べない限り、5秒かからずに食べ終わるだろう。これは急いで次を焼いてやらないと。


 1つの焚き火じゃ足りないと、1グループ2つまでなら焚き火を利用できるから、急いでもう1つの焚き火にも火をつけて、急いで焚き火の周りに、食材が刺さっている串を刺していく。ついでに片方は、俺が外側から火魔法でさらに焼いてやり、時間を短縮することに。


 まぁ、忙しかった。だけど何とかそんなに間を空けずに、みんなに食材を焼いてあげられたよ。みんなも時々、片方の焚き火を見張っててくれたしな。


 そして自分達で獲った魚以外のメイン料理へ。勿論クラーケン焼きだ。今日の食材の中で1番大きな食材は、切ってあってもクラーケンだからかなり大きく。それだけでニコニコだったみんな。


 焼く時になったら、自分達の魚が焼けるのを待っている時も、凄いニコニコしていたけれど。大きなクラクラーケンの時も、魚同様さらにニコニコになり、周りに集まって待って。


 そして綺麗に焼きあがれば、さすがに1口では食べられず、3口ほどで食べていた。


『う~ん、美味しい』


『このコリコリしてるような、プルプルしてるような、この感じが良いよね』


『弾力があるのも良いよね』


『歯ごたえがあり、海の塩加減と甘味が合わさって、何も付けなくても、そのままの素材の味を楽しめます』


 誰だ? 食レポみたいな事を言ってるのは? お前達、さっきも言ったけどまだ3歳の子供だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る