57.呪いのアンデッドの迷惑な最後

「アナベルから連絡がないので、まだ余裕はあるでしょうが。あまりここの近くでは、消したくはないですね」


「全て完璧に、っていうのはな。どこから漏れるか分からんし」


「私でも完璧に……、とはいけいませんからね」


「何で消える時に、爆発させるんんだか。そのまま消えれば良いだけだろうに」


「今まで現れた呪いのアンデッドが、ただそのままで終わる、という事はなかったからのう。おそらく今回もなるじゃろうな」


「しかも相手はただの呪いのアンデッドじゃない。いや普通の? 呪いのアンデッドだって問題は問題だが今回は……」


「もともと持っていた力が違いますからね。その力での呪いの爆発が起こるでしょうから、いつも以上に注意しなければ」


 今までに世界の人々や魔獣達は、何体の呪いのアンデッドを倒されてきたか。呪いのアンデッドの攻撃は何も呪いだけじゃなく、呪いと共に普通に攻撃をしてくる。その攻撃力は、呪いのアンデッドになる前、死ぬ前の元々の力が関わってくる。


 例えば俺は、ウッサーの呪いのアンデッドを見たことがあるんだけど。もともとウッサーは弱い部類に入る魔獣なため、呪いのアンデッドになり、少々強くなったと言ってもやはり弱く。そにためすぐに対処をする事ができた。


 しかしブラッドベアーやワイバーンなど、強い魔獣が呪いのアンデッドになった場合は。元々の力が強い事に加え、呪いのアンデッドとしての力も備わるため、対処も難しく、倒すのが大変になる。


 そして振り撒く呪いだが、やはり元々の力が強ければ、呪いも強くなるため。だから強い魔獣が呪いのアンデッドになると、かなり厄介なんだ。


 が、倒すだけなら、俺達には問題はない。力の強い人達が集まっているからな。そう倒すだけなら。


 問題は、呪いのアンデッドを倒した後の、呪いの爆発の対処だ。この呪いのアンデッド、倒した瞬間に、自分の中にある最大限の力を使い、呪いを爆発させて広範囲に呪いをばら撒くんだよ。


 だからそれを防ぐのに、周りに呪いが飛び散らないよう結界を張り、その結界の中に呪いを封じ込めたり、聖魔法を使ったりと。色々な対策をしなければならず。


 ウッサー達みたいに弱ければ、呪いも弱いからささっと対処できる。しかしブラッドベアーやワイバーンなど強い魔獣の場合、結界で呪いを包んでも、その結界を破り外へ出てしまう事があったり、聖魔法がなかなか効かなかったりと、簡単にはいかず。


 実は今回の呪いのアンデッド、呪いのアンデッドに変えられてしまった魔獣が大問題だった。ドラゴンの群れが巻き込まれたと言ったろう? そのドラゴンの群れの1匹を、ラダリウスは呪いのアンデッドにしたらしくて。


 ただでさえ他より強いドラゴンだぞ? そのドラゴンが呪いのアンデッドになったなんて。攻撃力も呪いの力も、どれだけ強いのか。そして倒した時の呪いの爆発は、どれほどの物になるか。


 だから今、みんな対処に困っているんだよ。漏れただけでも、普通の漏れと違うだろうから、大変な事になってしまう。


「私が考えですが。本体への攻撃は、1人で良いと思っています。そしてそれは、魔法の細かい調整ができない、この脳筋馬鹿で良いと」


 アマディアスさんの言葉に、みんながジェラルドさんを見る。そしてジェラルドさんは静かに、そうだろうそうだろうと言いながら頷き。


「後は外から聖魔法で消していくのはいつも通りですが。聖魔法とは反対側の場所で、1箇所だけ結界に穴を開け、そこから漏れ出た呪いを我々他の者が吹き飛ばす」


「量が多いじゃろうからの。どちらもやるしかあるまい」


「ただ、我々の方へ飛んでこられても困りますからね。流石に私も今回は、自分に張った結界を、気にする余裕はないでしょうから。呪いを消す者と、呪いを消す者を守るために、呪いを消す者に結界を張る者、に分けた方が良いでしょう」


「そうですね、それが良いでしょう。そうすれば聖魔法に弱い者でも、呪いを消す事ができる」


 そう、俺だってアンデッドだ。いくらみんなのおかげで強くなったと言っても、そして聖魔法の対処が、少しはできるようになったと言っても。

 呪いを気にしながら、聖魔法まで気にしていられないからな。聖魔法とは反対側で、しっかりと呪いを消せるのは良い。


「それと、私は途中で抜ける可能性があります。まだ完璧に呪いを受けていない者を助けなければ。仲間を守るため命をかけて動いている者を」


「あ? 誰のことだ?」


「……あなたはノーマンから報告を受けたのではないのですか?」


「すみません。伝えたはずなのですが」


「はぁ、呪いのアンデッドを倒すことしか考えていなかった、という事でしょうね。まったく。今回のドラゴンの呪いのアンデッド。かつての仲間を止めるために、群れのリーダー、ウォットが。攻撃で呪いを受けながらも、他で被害を出さないため。今、必死で呪いのアンデッドを追っています。報告だと、まだ助ける事ができそうなので、私は彼を助けに行くつもりです」


「そうなのか!!」


「……それで」


 アマディアスさんがジェラルドさんを無視して話しを続ける。


 そして話し合いの結果。アマディアスさんの何代前かの魔王の時代に、やはり呪いのアンデッドの呪いを受け、今では虫さえも住んでいない山が。俺達の住んでいる森から、数えて3つ目の場所にあるんだけど。そこでアナベルと連絡を取り合いながら、呪いのアンデッドを迎え撃つ事に。


 またこの森と周辺の森や林、岩場や海辺、色々な場所に。万が一呪いが漏れ、散らばってしまっても呪われないよう、結界を張る事になった。


「おっし!! やるぞ!!」


 ジェラルドさんが気合を入れる。


「やる気があるのは良いですが、あなたは呪いのアンデッドを倒した後は、おとなしくしていてくださいね。邪魔をされて呪いが漏れたら大変ですから」


「なんだよ、俺だって少しは……」

 

「あなたは他に、やる事があります」


「あ?」

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