55.緊急招集

「アマディアス様」


「ああ、戻りましたね。それで向こうの様子は?」


「アマディアス様のおっしゃっていた事が起こりました」


「……やはりそうでしたか」


「いかがいたしましょうか? 今すぐ我々が行き、対処する事は可能ですが……」


「おや、何か他に問題が?」


「巻き込まれたのは、あのウォットの群れのようで。ウォットは変わってしまった仲間を救うために、かなりの力を使い」


「はぁ、呪いを受けましたか」


「はい」


「まったく奴らの馬鹿な考えのせいで、関係ないもの達の命が消えていく。それでウォットは保ちそうですか?」


「今のところはなんとか。ですがこれ以上仲間が他に呪いを振り撒くようであれば、命をかけ止めようと。それと共に、奴らも消す考えのようで」


「……今からだったら、ウォットの方は間に合うか」


「彼の群れはすでに移動をしていて、子供達は皆無事です。また、他の街や村にはまだ被害は出ておりません」


「これを考えたのは、あの馬鹿で間違いありませんね?」


「はい。奴には今、アナベルがついております。動き出し次第すぐに連絡が」


「あの馬鹿と同じ考えの者達が、アレのせいで消えようが、私にはどうでも良い事ですが。他の無関係の子供達や人々、魔獣達が巻き込まれるのは問題ですね。あの脳筋馬鹿には?」


「ノーマンが報告に」


「分かりました、あなたはこのまま待機していてください。私はこれから皆にこの話しを」


「はっ!!」


            ○*○*○*○*○*○*○*○*


「これは一体?」


『この前からずっとこの調子なんです』


「ウッサー達が訓練をしている姿は初めて見るのう」


『いつまで続けるのか。まぁ、本人達が良いのなら良いんですけどね。もしこらから外で暮らす事になっても、強ければそれだけ生活は楽でしょうから』


「ふむ、ではワシも何か教えるかの」


 何故に!? 師匠もか! なんて心の中でツッコミを入れる俺。俺は家にお茶を飲みに来た師匠に、アクアとリルとウッサー達の訓練を見せていた。そうしたら何故か師匠もやる気に。


『あのウッサーとあっちのウッサーは、魔法の適性がある。そに他にも魔法を使えそうなウッサー達がおるからの。もし良かったら教えてやろう』


 ……ウッサー軍隊でも作るつもりか!! このままどんどん強くなったら、目覚まし鳥達みたいに、第2の危険な集団ができてしまうかもしれない。


「面白いことをしていますね」


『わあぁぁぁっ!?』


 と、そんな話しをしている時だった。突然俺の真後ろからアマディアスさんの声が聞こえて、俺は驚きの声をあげてしまったよ。


『アマディアスさん!! 気配をまったく消して、後ろから話しかけないでください!!』


「おや、今のに気づきませんでしたか? ふむ、私達の訓練を受けたあなたが、今の私の気配に気づかないとは。アクアとリルと共に、何故ウッサー達があの様のことをしているのか分かりませんが。あなたにもまた訓練が必要でしょうか」


『アマディアスさんや師匠が本気で気配を消せば、いくら能力が高い人でも、そう簡単に気づけませんよ!!』


「いえ、あなたならできるはずです。この事については後で話し合いましょう。今日は他の大切な話しがありますので。少々面倒な大切な話しが」


 まったく、みんなのせいで、俺は余計な事に巻き込まれそうだよ。


 ん? 少々面倒? アマディアスさんがそんな事を言うのは珍しいな。いや、ジェラルドさんの時はいつも面倒って言ってるか? それから脳筋馬鹿って言ってるけど。でもそれなら『大切な』なんて言わないだろうし。何かあったのか?


「先に謝りますね。すみません。あなたに話す前に、あなたの家へ集まるよう、皆に声をかけて来ました。ですのでこれからすぐ、ここへ皆が集まって来ます」


『ここへですか? 別に構いませんが。……何か問題が』


「いえ、私達にとっては大した問題ではありません。ですが他が巻き込まれる可能性が大きいので、その対策をしようかと。特に子供達が巻き込まれては困ります。首謀者達がそれでどうなろうと構いませんが、もし生き残るようであれば、消せば良い事ですし」


「やはり面倒なことをしとったか?」


「ええ。この前ここへ来た面倒な虫が」


 消す……か。あ~、これは本当に何かあったな。俺はすぐにアクア達に訓練を止めさせ、これから人が集まるから、静かにしているように言うと、すぐに準備を始めた。

 

 大体の人数を聞き、全員が入れる部屋にテーブルを用意。他にも紅茶の用意や、カップやお菓子の準備もする。話しが長引く場合、必要だろうから。


 が、ここで、まさかの事態が。アクアとリルはこういう時、準備の手伝いをしてくれるんだけど。ウッサー達まで手伝いをしてくれたんだよ。なんでその姿で動けるんだ? というか姿で。うん、可愛い……。


 じゃなくて、どうしてその動きができるのか、いつ手伝いをいつ覚えたのか。聞きたかったが、今は準備が先だから、後でゆっくり聞く事に。

 

 ただ、みんなが手伝ってくれたおかげで、すぐに準備を終わらせる事ができた。そして準備が終わって10分後。


 俺の家には、師匠と。アマディアスさんと、その側近のトレントン達。ジェラルドさんと、ジュラルドさんの勇者仲間のノーマン達。カルロスさんにローゼンベルトさん。他にもこの街を守っている主要メンバーが集まった。

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