44.築かれる友好関係、1番の敵はここに

「それで、そちらの問題は片付いたのですか?」


「まぁな。大体は片付いたな。面倒な連中は全て炙り出したし、逃げようとしていた連中も、面倒臭かったが全て捕らえた」


「そうなのか? かなり居ただろう? よく全員捉えることができたな」


「俺が本気を出せばな」


「何を言っているんですか。動いたのは私と部下達です。あなたは書類仕事も真面目にやっていなかったではないですか」


「な、何言ってるんだ。俺はしっかりやっていただろう!」


「しっかりとは?」


「ガハハハハハッ! まぁ、片付いたなら良かったじゃないか!」


「はぁ、まったく。その片付けがどれだけ大変なことか。これだから何も考えずに行動だけはする脳筋馬鹿は」


「本当ですよ。ジェラルド、笑っているけどお前だって同じだからな。いつも私達に面倒事を押し付けて。挙句面倒ごとを起こすのだから」


「俺だってちゃんとやってるだろう! それに最後は俺がやらないといけないだろう? だからそこは何よりもしっかりやってるんだから問題ない!」


「「「……」」」


 最初と最後、時々手伝う? 良いとこ取りか! 


「はぁ、脳筋バカの話しはもう良いです。それで、あなたの弟は今?」


「あれだけ煩かったのに、今は静かなものさ」


「おや、まだ消していないのですか」


「まぁ、一応俺の弟だからな」


「それでも、彼らがやったことは、許されることではありません。それに彼らは差別が酷すぎる。そのせいでどれだけの子供達が不幸な目に遭わされたか。何もなしというわけにはいかなのでは? 私はもちろん許す気はありませんが。なんなら私がお手伝いしましょうか」


「いや、これは世界的な問題でもあるけれど、俺達兄弟の問題でもある。というか、兄弟の問題の方が大きいか。だからあいつのことは、俺がどうするかきちんと決めるさ」


「まぁ、確かにあなた家族のことですから、今のところは任せますよ。ですが、もしまたなにかあればその時は……」


「ああ、分かってる。が、もう後には引けんからな。ちゃんとするさ。それに今回のことで一掃できたんだ。どんなことがあっても変えてみせる」


「しっかりしてくださいね」


 イントッシュさん、このまま上手く行くと良いな。今回イントッシュさんがこの森へ来たのは、ある報告のためだった。


 ほら、イントッシュさん。アマディアスさんやジェラルドさんの話しを断っていただろう? それの原因を片付けられたみたいで。まだ完璧には全てが終わったわけではないけれど、これでようやく、俺達の森と友好関係が作れる。との報告にきたんだよ。


 イントッシュさんは元々、アマディアスさんやジェラルドさんと考えが同じで。差別のない世界が良いに決まっていると。他にもそう話していた。しかしそれを実行に移せない問題があって。


 イントッシュさんには3つ離れた弟がいるんだけど。その弟が問題だった。この弟、森を襲ってくる、森を手に入れようとする奴らと、同じ考えの持ち主で。いつもイントッシュさん派と揉めていた。


 挙句弟はやってはいけないことを裏でやっていて。獣人の子供達を捕らえ、奴隷として他国へ売り飛ばしていたんだ。

 しかも面倒なことに、自分の行いがバレないよう、自らは絶対に動かずに。人攫いや奴隷商達に、資金提供をしていて。売り捌く場所までわざわざ提供していたんだよ。


 そのしっかりとした証拠を掴めずにいたイントッシュさん。挙句この弟、こういう問題ごとに対しては、頭の回転が良く。イントッシュさんの方が逆に追い詰められ、その地位を追われそうになったんだ。


 だけど最終的には、なんとか証拠を掴むことに成功。少し前に弟と弟の関係者。派閥の人間、人攫いも奴隷商も、全てを捉えることができ。今その罪を裁いているところだ。


「もう少し時間がかかるかもしれんが。その後はお前達としっかりと友好関係を築きたいと思っている」


「ええ、そこは頑張っていただきたいですね。なにしろ面倒な者達ばかり集まってくるもので」


「はははっ。それはまぁ、しょうがないだろう。お前達の考えは確かに正しいことだが。長い間その面倒な考えばかりしていた者達は、その考えで凝り固まっているだろうからな。簡単には変えられんさ。でも俺のように人間もいるし、こうして少しずつ変えていくしかないんじゃないか」


「そうなのですけれどね。まぁ、虫を払うのが面倒で。小虫よりも面倒ですよ」


 小虫。地球のコバエみたいな虫がいるんだよ。まぁ周りを飛び回る面倒な虫だけど、森にちょっかいを出す奴らは、小虫よりも面倒だと言ったんだ。まぁ、アマディアスさん達にしてみればそうだろうな。


「さて、あなたの状況は分かりました。これから頼みますよ」


「おう! 任せろ!」


 アマディアスさんとジェラルドさんが、イントッシュさんと硬い握手を交わした。少しずつこうやって仲間が増えていくと良いな。


「それで今回は、どれくらい街に居られるんだ?」


「今回は一応の報告に来ただけだからな。まぁ、俺としてはゆっくりして行きたいんだが、言った通り、やることがまだまだたくさんあるからな。明日には帰るよ。煩いのもいるしな」


「イントッシュ様、何かおっしゃいましたか?」


「い、いや何でもねぇよ」


「あなたも大変ですね。苦労、お察しします」


「ありがとうございます。あなたとは気が合いそうです。これから色々とお世話になると思いますが、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


 ノーマンとイントッシュさんの側近ブレイドンも、硬い握手を交わした。


「こちらの想いと同じ者達が増えたのは良いことなのですが。バカ脳筋も増えましたね。ですが、使える者も増えた。良いのか悪いのか」


「ん? アマディアス、何か言ったか?」


「いいえ何も」


 ジェラルドさんの言葉に、ニコリと笑うアマディアスさん。俺にはしっかり聞こえたけど……。


「ああ、言い忘れていましたが。私達と関係を持つことは、もう他へ伝わっているでしょう。おそらくそにせいで小虫が増えるはず。こちらから何人かそちらに送りましょう。せっかくの友好関係にある街を、小虫にやられては困りますから」


「おう! 助かる!」


「それと。あっちの問題を片付けてから帰ってください。そちらは私にはどうにもできませんから」


「あ~、知らん顔して帰ることは、やっぱりできないか」


「まぁ、それをしても良いですが。その後あなたがどうなるかは知りませんよ」


 新しい店舗で、アクアとリル、他の目覚まし鳥達から説教をされていた3人。特にジェラルドさんとイントッシュさんだけど。色々大切な話しがあったため、アクア達にはなんとか待っていてもらい、こうしてアクア達抜きで俺達は話しをしていたんだ。


 だからすぐに帰るというのなら、その前にアクア達との話し合い、もといアクア達の説教を受けてから帰らないと。他からの攻撃は何とかなっても、アクア達の攻撃でやられかねない。


「ジェラルド、お前、話しをつけておいてくれないか?」


「おい、俺だけ犠牲にするつもりか!?」


「知り合いのお前なら、少しは手加減してもらえるだろう?」


「そんなわけないだろう、目覚まし鳥達なんだぞ! ほら今から行くぞ! そろそろ戻らんと、ここに乗り込まれて、余計にやられる可能性が高い!」


「はあぁぁぁ、まさかここに来るのに、1番の敵がここにいたとは……」


 うん、今日はアクア達のための、スペシャルな夕飯を用意してあげよう。それでどこまで落ち着いてくれるか分からないけれど。

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