22.準備は完了、楽しむ子供達、変な様子のリル

 こうして人数を集めた後は会場の準備だ。温泉の栓を閉めた後、遊びに来てくれていたアスピドケロンのアースに手伝ってもらい。魔法でお湯をギリギリまで抜いてもらった。抜いたお湯に関しては、アースの好きなように使ってもらったぞ。


 水魔法と混ぜて雨みたいに降らして、浴びるって言っていたな。シャワーみたいにするんだろう。それに他にも集まっている大型魔獣達がいるから、みんなで温泉を浴びるって。ニコニコで大型魔獣がいる場所へ戻してもらっていた。


 大型魔獣はその大きさから、なかなか温泉には入れないからな。そうだな、今度は大型魔獣用の温泉を考えるか。


 ただ、大型魔獣用の温泉に温泉の湯をはるとなると、流石に必要な温泉の湯が多すぎるから。

 とりあえず大型魔獣達が集まる場所にも源泉を引いてきて。後はアースみたいに、水で薄めてもらって、シャワーみたいにして使ってもらうとか。後でアマディアスさん達に相談だしよう。


 こうしてアースにお湯の深さを浅くしてもらった後は、子供達のための準備だ。タオルやら喉が若いた時用のジュースやら、必要と思われる物を用意して。土魔法でビーチパラソルならぬ土パラソルのような、日差し避けを作って。疲れた子供達が、休憩できる場所も用意した。


 子供達だけじゃない。親御さん達が、子供を待っている場所も用意。勿論子供と共に中に入りたい親御さんには、1人まで付き添いOKにした。広い露天風呂だけど、全員が入ると流石に。混みすぎて魚が獲りにくくなるといけないからな。


 みんながいる場所の準備ができたら、最後は魚を取った後の準備だ。そのまま生で食べる子供達もいるけれど、普通に料理してから食べる子供達もいるわけで。

 この施設にはBBQ会場みたいな、家族や友人で集まって、自由に自分た達で食事を作って食べる場所も用意してあるから。そこの一角を貸切にし、すぐに子供が達調理して、食べられるように準備した。勿論持ち帰りもOKだ。


 そして全ての準備が整い、子供達の募集を始めると、これが結構な人数が集まって。すぐに予定人数になってしまった。後で参加してくれた家族に感想を聞いて好評だったら、また開催しても良いかもしれない。


 こうしてみんなが手を貸してくれて、お昼には最初の、子供限定、露天風呂魚掴み大会を、開催することができたんだ。


「あれぇ、つかめない?」


『スルッとにげちゃう」


「パパ、とれにゃい」


『わっ!! つかめた!! ママ! つかめたよ!!』


「あっちにょ、おしゃかにゃしゃんがい」


 子供達の楽しそうな声が、そこら中から聞こえている。うん、これはやっぱりやって正解だったな。と、そんな楽しそうな子供達を見ていると、リルが俺を呼んできた。


『スッケーパパー!!』


『何だー!?』


『こっち来てー!!』


『分かった!!』


 リルは露天風呂の端の方にいて、既に魚を捕まえた友達魔獣達が、淵からリルを見ていた。リルも体はそこそこ大きいとはいえまだ4歳。だからこのグループで魚掴みに参加している。


『どうした? 何かあったのか?』


『あのねぇ、これから咥えるんじゃなくて手で捕まえるから、スッケーパパ見てて!!』


『手で? 分かった』


 手? いつもはすぐに咥えるのにどういうことだ? と思いながら見ていると。リルは言った通り、前足で自分の目に前を通り過ぎる魚を獲ろうとし。その動きはどう見てもネコ系の動きだった。


 そして、うん、やっぱりな。上から飛び掛かるようにバシバシ水面を叩くことはあっても、今までこんなネコのような動きを見たことなかったからな。上手く前足が使えないのか、魚はヒョイっと手をすり抜け逃げていった。


『リル何でそんな獲り方をするんだ? いつもみたいにすればすぐだろう?』


『リルはこれで獲るの!』


『スッケーパパ』


『ん? どうした?』


 リルが俺をスッケーパパと呼び、リルの友達魔獣達も、みんなリルと同じような歳だからなのか。リルの友達魔獣達はみんな、俺のことをスッケーパパと呼ぶ。

 

『あのねぇ、リルは魚掴み大会だから、掴めないけど掴んでるみたいにして獲りたいんだって』


『そうなのか?』


 魚掴み大会とは言っているけど、みんなどんな獲り方をしても良い、って言っておいたんだけどな。まぁ、本人がその獲り方がしたいって言うならそれで良い。だけどどうにも姿に合わないな。大型犬がネコの真似って。


 というかよくネコみたいな動きができるな。顔に水がかかった時の、前足で顔を拭く動きもネコそっくりだし。


『前より上手になったんだよ』


『最初は魚が目の前でジャンプして、バカにしてきた。今は通り過ぎてる』


 ……魚ってバカにしてくるのか? 


『う~ん、掴まえられない』


 頑張ってるんだ、ちょっとアドバイスしてやろう。


『リル、いつもみたいにやってみたらどうだ?』

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