14.1日の終わりは大浴場か露天風呂へ

 託児所へ着き中を覗けばリルは託児所にいて、託児所の子供達は、お昼の半分くらいの人数になっていた。


『スッケーパパ!!』


『お待たせリル。アマディアスさんお疲れ様です』


「お疲れ様です。午後はどうでしたか?」


『午後は何もなく、いつも通りの仕事ができました。ジェラルドさんも静かにしていましたしね』


「そうですか」


『リル、何処にも行かなかったのか?』


『うんとねぇ、ワタワタを食べに行った!!』


『そうか、美味しかったか?』


『うん!!』


 何処へも行かず、託児所に居たのかと思ったら、しっかり遊びに行っていたらしい。ワタワタは綿飴みたいなお菓子で、遊技場とお菓子売り場に置いてある。


「今日はこのまま?」


『はい、リルが露天風呂に行きたいみたいで。これから露天風呂に行くつもりです。子供達の方は?』


「後2人ほどお迎えが来ますが、残りは泊まりです」


『そうですか。では子供達のこと、よろしくお願いします』


「勿論です。私がしっかりと面倒を見ますよ」


 遠出で両親が戻って来られない場合は、このまま施設にお泊まりすることになっている。他のお客さんもそのまま泊まったり、日帰りで遊びに来たり色々で。ここは泊まる施設もしっかりとあるから問題はない。かなりの人数が泊まれるんだぞ。


 アマディアスさんに挨拶をして、子供達にも挨拶すると、俺とリルは露天風呂へ向かった。向かったのは魔獣、魔物専用露天風呂だ。


 露天風呂は種族関係なく入れる混浴風呂。そこそこ大きい魔獣達が入ると、どうしても浴槽を深くしなければいけず、地球の人達と同じようなサイズの人達が入るのは大変だからと。そういう人達だけがゆっくり入れる露天風呂。


 とっても小さい、手のひらサイズの精霊や妖精達、小さな魔獣達が入れる露天風呂に、子供達専用の露天風呂。そして魔獣、魔物専用の露天風呂がある。それからやっぱり男女分けられている方が良い人達もいるから、男女別の露天風呂もあるぞ。


 みんな自分で選んで、好きな露天風呂に入ってもらうんだ。施設の中に用意されている大浴場も5つに分けてある。


 今日はルリが遊びたいって言っていたから、魔獣、魔物専用の露天風呂に行くことに。その方があまり迷惑をかけずに遊べるからな。


 露天風呂へ着くと、ささっと洋服を脱いで外へ。中には8匹の魔獣と5人の魔物が入っていて。すぐに俺に気づき、みんなが挨拶してくれた。

 そしてもちろんすぐに湯船には浸からずに、先に自分の体を洗った後、リルの体も洗ってやり。それからお風呂の中へ。


『ふぅ~』


『ういぃぃぃ~』


『ぷっ、ういぃぃぃ~って』


『うえぇぇぇぇ~』


『ははっ、どっちもおじさんみたいな声だな』


 まだ子供のリル。声は若いけど唸り声が完全におじさんだ。きっと毎回温泉に入るたびに、おじさん達を見ていて、それを真似しているだけなんだろうけど、どうにも若さと声が合わななくて笑えてしまう。


 と、そんな面白いリルを少しだけ見た後は、ゆっくり温泉に浸かっている場合じゃない。リルがスイスイ泳ぎ始めたのを見て、俺は今温泉に入っている人達に声をかける。


 一応ここの露天風呂と中の温泉は、泳いでも良い事になっている。ゆっくり湯に浸る人達ばかりじゃないからだ。川や池、海に住んでいる種族も来るし、それぞれ楽しみ方が違うからな。


 だから最初から、迷惑をかけない程度なら、何をしても良い事にしておいた。今のところ問題は起きていなぞ。

 最初からこの施設を使ってくれている人達は勿論。新しく来てくれたお客さんには、常連の人達が新しいお客さんに、しっかりとルールを教えてくれるからだ。


 それにもし何か問題を起こせば、すぐのアマディアスさんやジェラルドさんに、それ相応の対処をされるからな。みんなそれを分かっていて、問題は起こさない。いつも問題を起こすジェラルドさんが、何をいっているんだと思うかもしれないけどさ。


 が、それにしても今回は一応、他のお客さんに声をかけておかないと。なるべく魔獣や魔物がいない場所を選ぶが、リルが遊ぶとなると何が起こるか分からない。だから先にお客さんに声をかけておく。


『すみません、これからあの子が遊ぶんですが。なるべく離れた場所で遊びますが、もし迷惑な時は言っていただけると』


『ああ、リルが遊ぶのか。分かった』


『今日は入ってる奴は少ないから大丈夫だろう』


『それにリル1匹遊んだくらい。いつもはもっとバタバタしているんだから気にするな』


『ありがとうございます。リル! 向こうへ行って遊ぼう!!』


『うん!!』


『リル、気にしないで思い切り遊んで良いぞ』


『そうだぞ。こんなに空いている時はなかなかないからな』


『うん!! ありがとう!!』


 俺とリルは、お客さん達から離れた場所へ移動した。

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