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あれから俺たちは、攻防一体の戦いを繰り広げていた。
「
薬によって今までとは比較にならないほどの、威力で襲いかかる。
「おっと!!」
爆風に紛れ、倉瀬が突っ込んできた。
だが、俺はそれを避け、腕を掴み投げ飛ばす。
倉瀬はすごい勢いで地面に叩きつけられるが、すぐに立ち上がる。
薬の効果によって、再生力も上昇してるようだ。
でも、動きが鈍くなってきている。
もう、潮時かもな……
「もう、終わらそう」
もっと楽しめると思った。
俺と肩を並べるほどになったと感じた。
でも、それは俺の思い過ごしだったみたいだ。
結局はちょっと強化されただけ。
根本は何も変わってない。
「薬もこの程度ってことだな」
「くっ……!!」
倉瀬は俺の挑発に歯を食いしばって応じるが、その表情には疲労の色が浮かび始めていた。
薬によって異常なほど強化されているにもかかわらず、攻撃の精度や速度がわずかに落ちてきている。
「黙れよ…!!俺は、俺は……強者だァァァァ!!!!!」
倉瀬の声はどこか焦りと苛立ちを含んでいる。
薬の効果で限界を超えた力を得たはずなのに、目の前の敵に一切通用していないという現実が倉瀬を追い詰めていた。
「おいおい、もうヘバってんのかよ?せっかく強くなったんだろ?」
俺は倉瀬を見下ろし、さらに追い詰めるように笑みを浮かべて見せた。
倉瀬はその態度に苛立ちを覚え、最後の気力を振り絞って拳を握りしめる。
「これで、終わりにしてやるよォ……!!」
彼の拳が激しい音を伴って俺に迫る。最後の力を込めた一撃。
しかし――
「……遅い」
俺は冷静な一言とともに、倉瀬の拳を軽々とかわし、逆にその腕を捕まえてねじ伏せる。
倉瀬の身体が地面に押さえつけられ、もはや立ち上がる力も残っていないのが明らかだった。
「これが、お前の『限界』ってやつだな」
冷淡な声で俺は倉瀬を見下ろした。
その目には一瞬の哀れみが浮かんでいたかもしれない。
どれだけ力を手に入れても、限界は越えられない――そんな現実を見せつけられた倉瀬は、力なく目を閉じた。
「……俺は、やっぱり……弱者なんだな……」
倉瀬の声は虚ろで、もうその目に闘志は残っていない。
倉瀬は俺の手の中で、全ての力を使い果たして消えゆくように静かに息をついた。
「ま、いい夢が見れたんじゃないか?」
俺は淡々とそう言い放つと、倉瀬を地面に横たえ、背を向けて立ち去ろうとする。
闘技場にはたくさんの観客がいるが、歓声など何もない。
しかし――
「……まだ、終わってないよ……!!」
倉瀬の呻くような声が再び響き渡る。
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