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 1ヶ月が経ち、闘技会当日。


「よっ!逃げずに来たようじゃな」

「あ〜……どうも。一ノ瀬さん」

「むっ…!魔王様と呼べ!!」

「魔王さん…?」

「うむ!!」


 なんだこれ?


 とにかく、俺は会場にやってきたわけだが……

 人多くね…?


 これ全部、観客ですか…?


「では、行くぞ!!」


 魔王さんが移動を始めたので、俺もその後を追う。


 前回、成宮が行った闘技場に入り、観客席のさらに上の場所にやってきた。

 そこは、まるで宮殿のような場所だ。


 いや、豪華すぎるだろ。

 VIP対応か!!

 十傲ってすげ〜…


 俺は高そうな椅子に座って、ソワソワしていると……


「落ち着きがないね」


 神崎が訪ねてきた。


「そりゃそうっすよ…こんな貴族みたいな対応されたことないし……」

「はは、確かにね。僕もいまだに慣れないよ」


 そうだよな!

 黒名、柊、御門が馴染みすぎてるだけだよな!


「緊張はしてる?」

「え?いや、まったく」


 むしろ、戦えるんだからそれはもうスーパーアルティメットウルトラハイパーハイテンションだぜ!!!!


「そっか、頑張ってね。何か嫌な予感がするからさ」


 嫌な予感…?

 はて?

 それは……どういうこと?( ᐛ )

 ※バカが。


 てめ、出てきやがったな!!


「今回の闘技会のエントリー数は約1000人。蓮、君はその1000人の中で1位になった人と戦う。もちろん強いだろうけど……君なら大丈夫だよね。あ、負けたら退学だから」

「んん????」


 黒名さんよ……

 簡単に退学させようとしないで…


 まぁ、絶対に俺が勝つからいいけどさ。


「お前、半端な戦いすんじゃねぇぞ!」

「するかボケ!!」

「あ゛ぁ゛!!!」


 やべ!

 つい反射で言ってしまった……


 ま、いっか!!!!


「もう!2人は喧嘩しないと落ち着かないの!?」


 夢見パイパイが間に入ってくれる。


 ……そろそろセクハラか。

 やめよう。


「さて、始まるみたいだね」

「わ〜い!わ〜い!!」

「小学生かな…?」


 ♦︎


 戦いはつつがなく行われた。

 ぶっちゃけ、くそつまらん。


「はぁ〜……」

「つまらなそうやな、雲雀丘くん…?」


 隣に現れたのは、無駄に輝いている御門だ。


「つまらないっすよ〜あんな茶番のどこが面白いんすか?」

「あははは!これでも、今戦っとるのは50位と47位やで?」


 は?

 あれで?


 ふ〜ん……カスじゃん。


「まぁ、でも……実際、弱いよな〜ほんまに…」

「……?」


 こいつ…何企んでやがる?


「でも、安心してほしいわ。絶対、雲雀丘くんのお眼鏡にかなう相手がおる」


 そうか……


 ふふ…


「はははは…!受けてたってやるよ!はぁ〜…楽しみだなぁ〜……」


 御門が自信満々に言うってことは、最低でも俺とまともな戦いが出来る相手ってことだろ…?


「なるほどな……これが…」

「ん?どうしたんっすか?」

「ああや、なんもないよ」


 ……?


「お、決着がついたみたいやな」


 その言葉通り、歓声が聞こえる。


「そんな盛り上がるもんかね〜……まぁでも、次は楽しめる思うわ…?な、雲雀丘くん?」


 そうして、出てきた出場者を見て俺は理解した。


「そうか、倉瀬。お前は……俺と道を選んだんだな…」

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