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「それにしても…倉瀬、強くなりすぎじゃね?」


 こんな遠くから見ても分かる。

 あいつ、目に見えて禍々しいオーラ纏ってるぞ。


 悪魔にでも魂売ったか?


「ははは!すごいやろ!!俺が魔改造してやったんや!!」


 あんたが原因か!!


 てか、魔改造と言うより……ドーピングじゃね??


「それは、合法なやつっすか??」

「お?完全に違法やな!!」


 なるほどね……


「お〜い!!黒n——」

「ちょ〜と、黙ろうか…?」


 その…

 今の状況報告していい?


 今、御門に壁まで追い詰められ、片方の手で俺の口を塞がれてもう片方の手で壁ドンされてる。

 しかも、ほぼゼロ距離。


 無理無理!!!!


「ん〜!!ん〜!!!!!」

「なんやなんや…お前がチクろうとするから悪いんや」

「ぷはっ!!だからって、そんなBL展開にする必要ないでしょ…!!」


 誰得だよ…


 俺は認めんぞ!!

 男の娘以外とのBLは…!!!


「これが一番手っ取り早いんや。許してくれ」

「はぁ…まぁ、いいっすよ。それより、その違法なもんってなんすか…?」

「ん?ああ、それな。違法っちゅうのは冗談や」


 なんだ、冗談か〜!!

 よかったよかった!


「ただ、合法でもなけりゃ違法でもない。いわゆる、グレーなもんやな」


 いや、グレーゾーンはアウトやん…

 俺の安心を返してくれ…!


「ま、違法言われたらアウトやけどな。でも、なんも言われてへん内はセーフや」

「謎理論広げないでくれないっすか?」

「そこまで謎ちゃうやろ…」


 閑話休題。


「その薬の効果ってなんすか?」

「まぁ、簡単に言えば覚醒剤やな。服用する数で、強さが変わる」


 へ〜…


 倉瀬、やっちゃったね…?

 もう、手遅れなとこまで行っちゃったね…?


「一応、一日の限度は4錠までや。それ以上服用すると、身体に負担がかかりすぎて、最悪の場合死ぬ」

「えぇ…?普通にやばいもん渡してるじゃないっすか…」


 死ぬの…?

 まじ…??


「てか、そんなの別のやつの渡ったらやばないっすか?」

「ああ、それなら安心してくれ。あの薬は倉瀬ちゃん特注のもんや。他のやつが飲んだら、ただの風邪薬や」


 んん????

 無駄にすげぇことしてない????


「でも、あいつ…俺と戦うなら余裕で4錠以上は飲むっすよ?」

「やろうな」

「他人事っすね」


 一応、あんたの薬なんですが?

 ワンチャン死ぬんじゃないの?


「そりゃそうやろ。俺と倉瀬ちゃんは、ただの店員とお客さんや。注意は言っとる。でもな、どう使うかはあいつ次第や」


 思ったより、無関心と言うか…

 他人に興味がない感じか…?


「それに……あいつが代償を理解した上で決めたことを、がやがとやくか言うもんちゃう。それが例え、どんな道に行こうが、自分の人生や。一本筋通して生きた方がかっこええってもんやろ?」


 俺は、その言葉に耳を傾けながら考えていた。


 果たして、見殺しにしてもいいのか?

 まだ、止めることができる段階だ。


 だが、このままいけば確実にあいつは死ぬ。

 もしかしたらなんて保険を言っていたが、ほぼほぼ死ぬのは確実だろう。


 いや、俺にとったらそんななことはどうだっていい。


「ま、だからって見殺しにする理由にはならんけどな。でも、世の中こんなもんや。誰の彼も自分可愛らしさに、見殺しにする。そりゃそうやろ。自分が死んだら元も子もないんやから」


 御門はまるで、体験してきたかのような表情で語る。

 実際、その通りだしな。


「やから、俺は手を出さん。もし助けたいなら勝手にせい。ただおすすめはせんけどな」

「えっと…なんか勘違いしてるみたいっすけど…別に、助けたいなんて思ってないっすよ?」


 そうだ。

 俺が心配してるのは、あくまで目的についてだ。


 倉瀬が消えたとして、俺の目的には関係ない。

 だが、今イレギュラーとして出てきた倉瀬を、このまま殺してしまっても良いのだろうか…?


 ただ、それだけが心配だ。


「……そうか。やったら、しっかり見届けてあげや」


 ……ああ、そっか。


「はい。全力で行きますよ。殺す気でね…?」


 もう、いっそのこと俺が殺してやろう。

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