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「不意をつきたいなら、存在自体消さないと丸分かりっすよ?」

「チッ…!!」


 背後から迫ってきていた拳を、ノールックで受け止める。


「確かに、気配、殺気、呼吸あらゆるものを消してたっすけど……結局、人間って嫌でも音は鳴るんすよね〜」


 ま、えぐいぐらい集中しないと気付けないけどな。


 俺に不意をついてきた男、赤石に俺は告げた。


「あんたじゃ俺には、勝てないっすよ?」


 もう分かった。

 こいつ…クソ雑魚だ。


 これで2位…?

 舐めてんな〜


「テメェ…!!」

「はぁ〜……紫音」

「…!?」


 黒名から発せられた声は、酷く冷たいものだった。


「あまり、僕に失望させないでくれ」

「だ、だが……」

「今から会議をすると言ったよね?今、それは必要なのかな?」

「……要らねぇ」


 う〜ん……あれだな。

 主人と駄犬のようだ。


「悪いね。じゃあ、始めようか」


 黒名そういうと、各々席に座り出した。


「さて、今回話す内容なんだけど……来月ある、闘技会についてだよ」

「と、闘技会…?」


 なんすか?

 そのいかにも戦いますよみたいなものは…?


「1年生は知らないよね。闘技会は簡単に言うと、一対一のトーナメント形式で行われる大会だよ」


 な〜るほど…?

 え、めんどくさ……


「この大会は、戦うことが可能な異能力者限定のものだよ。やっぱ、どう足掻いても戦うことができない異能力者の人はこの学校では生きづらいよね〜……」

「ねぇ、楓。今回の闘技会、十傲の参加をどうするの?」


 そう尋ねたのは神崎だ。


 その言い方なら、十傲は今まで参加してないかったんだろう。

 そりゃそうか。

 十傲が出たら圧勝するからな。


 それなら、俺でなくていいってこと?


「それなんだけどね、蓮。君には出てもらうよ」

「………ふぁ!?」


 え?

 出る…?

 俺が…?


「きっと、まだ君の実力を知らないんだろうね。君を十傲だと認めてない人が多いんだ。だからこそのいい機会だと思うんだ」

「黒名会長さんよ〜…だからって、十傲が出るのは些かまずいんやないか〜?」


 そうだそうだ!!

 よく言った御門!!

 俺が出たら、全員病院送りだぞ?


「それなら心配なく、今回の優勝者と戦わせるからね」

「いや、そういう問題じゃないっすよ!!」

「ははは!蓮に拒否権はないよ?」


 ふぅ〜……

 まじで、一発殴らせろ!!!


 ♦︎


「う〜ん……これは面白いことになったな〜」


 十傲会議が終了し、御門修斗は人気のない路地裏にいた。


「さて、雲雀丘くんは一体どんな選択をするんやろか?救済かそれとも静観か…?ま、どちらにせよ……倉瀬ちゃんは辛いと思うけどな〜……」


 誰もいない路地裏……いや、誰も路地裏にそんな声が響くのだった。

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