36

 十傲になってしまった俺は、生徒会に行かなくてはいけなくなった。


 なぜかって?

 仕方ないな〜

 なら、説明してあげよう!


 生徒会は十傲で構成される。

 そのため、十傲の入れ替わりがあったら生徒会も入れ替わるのだ。

 だから、十傲になってしまった俺は、生徒会入りを果たしてしまったというわけである。


「めんどくせぇ〜…」


 行かなくちゃいけないのに、一向に足が動かない。

 これはもう行かなくていいのでは?


 いや、ダメだよな〜……

 行かなかったらなんて言われるか……


『サボったね…?じゃあ、退学しよっか?』


 容易に想像がつく。

 あの生徒会長、絶対そう言ってくるに違いない…!!


「あれれ〜、後輩君じゃないか〜!!」

「はぇ…?」


 声のした方に振り返ると、みんな大好き夢見センの登場だ。


「どうしたのかな〜?こんなとこで立ち止まって……あ!もしかして……緊張してるの…?そうだよね〜!!君以外全員先輩なわけだし〜?いや〜君も可愛いとこあるじゃん!!」


 なんか誤解されとるんやが……

 まぁ、ええか。


「仕方ない!私が連れてってあげよう!!」

「え?」


 腕を掴まれた。

 しかも、力強え…!


「え、いや…ちょっ!?」

「レッツゴ〜!!!」


 俺は抵抗を諦め、止まる気のない暴走列車に身を任せたのだった。


 ♦︎


 生徒会室のドアを開ければ……


「おい!楓!!戦おうぜ!!」

「あとでね」

「つれねぇな〜!!今だろ!!!!」

「紫音、少し落ち着け。楓が困ってるだろ」


 中心でこれ。

 左は……


「我は闇の王アビスだ…!」

「おお…!!余は魔王だぞ!」


 ………

 え〜右は……


「騒がしいね〜」

「ん……」


 あそこは、ほっこりしてるね。

 って、そうじゃねぇ!!


 なんだ?

 ここは動物園か!?


「は〜い!!ちゅうも〜く!!!!」


 夢見が声を上げると、先ほどまでの喧騒が嘘のように静かになった。


「ああ、ありがとう。希」


 黒名が夢見に感謝を伝えると……


「う、うん…!!」


 夢見は頬を赤く染めて、嬉しそうな顔をした。


 なんか、こう……目の前でラブコメされると、気まずい。


「さて、みんな!彼が新しく十傲になった、雲雀丘蓮だよ」


 シーン……


 いや、なんか反応せい!!!


「おいおい、楓!こいつ、ほんとに強えのか?」

「紫音…黙ろうか…?今、話してる途中だからね…?」


 おわ…すっごい圧……


「はいはい、わ〜たよ!!」

「じゃあ、僕たちの自己紹介しようか!序列順でいこう」


 自己紹介だ…?


「必要ないかもしれないけど、一応。僕は、黒名楓。ピカピカ3年生の序列1位だよ」


 知 っ て る 。


 続いて、赤髪大柄ヤンキー男が現れた!!


「俺は3年、赤石あかいし紫音しおんだ。弱え奴に興味はねぇ!失望させんなよ…?」


 睨んでくる赤石に、俺は肩をすくめた。


「チッ…!」


 ひぇ……

 舌打ちされたンゴ……


「f◯ck!!!」


 仕方ないので、ささやかなる抵抗を試みた。


「あ゛?」

「すんません……」


 ダメでした。


「貴様は、ガンを飛ばすことしかできんのか!まるで小物だな?」


 まるでロリのような見た目の少女が、間に入ってきた。


「あぁ…?先輩に対して口がなってねぇなぁ?おい!!!」

「そうやって、年功序列など気にしておるから小物なのだ。寛大な心を持ってないと、生き残れんぞ?」

「テメェ……」


 やべぇ〜!

 喧嘩始まったんだが?


「ちょっと、ちょっと〜!?今は喧嘩してる場合じゃないでしょ!?」


 救世主、夢見パイパイが来てくれた。


「楓も黙ってないで止めてよ!!」

「え〜いいじゃん。面白そうだし」


 まさかの許容!?

 だったら俺も乱入しようかな…?


「もう…!役立たず……」

「……」


 あれ?

 黒名の空気が変わったぞ…?


「2人とも…今は喧嘩してる場合じゃないよね…?」

「「…!?」」


 これは……やべぇな…!

 殺気だよ!殺気!!!!


「か、楓…!?わ、悪かった!俺が悪かったから、落ち着いてくれ!な…?」

「余も、流石に言いすぎた…すまん…」


 あの何言っても、言うことを聞かなそうな2人を手懐けてるのか……


 それは、果たしてリーダシップによるものなのか?

 それとも、力で伏せさせてるのか…?


 ま、どっちでもいっか。


「分かってくれてよかったよ。じゃ、自己紹介の続きをしようか!」

「うむ。それでいくと次は余だな!余は魔王なり!!」

「………え?」


 それだけ?

 てか、いきなり魔王って言われても意味わからんのだけど??


 詳細プリ〜ズ!!!


「えっと…この子は、2年生の一ノいちのせはのんって言うんだ。ちょっとおかしな子だよ」

「なるほど!つまり、頭があれな子ってことっすね!!」

「そこまでは言ってないけど…まぁ、いっか」


 いやいや、黒名さんや。

 あなたも、なかなか酷いこと言ってますがな!


「ふふん!!」


 あ、ない胸張って威張ってらっしゃる。

 バカだこの人、と俺は思った。


「次は俺か……俺は、糸谷いとやりん。3年だ」

「あ……ども」


 軽くお辞儀をして終了。


 ……気まず!!


「ふふふ……我の番が来たようだ…!!」


 ……えぇ??

 これはまた、キャラが濃いのが来たな。


「我が名は闇の王アビス!!偉大なる我にひれ伏すが良い!!!」

「なぁ、会長さんよ〜…まともなやついないんすか?」

「まともな奴がいたら僕も苦労はしてないんだよ…」


 あ……ご愁傷様。


「さて、次なんだけど……」

「あ、あれ…?ボ…我の深堀はないのか…?」

「もう時間も押してるし、いいかな」

「そ、そんな……」


 膝から崩れ落ちる、闇の王(笑)さん。

 この人のキャラが分からん!!


「はぁ…じゃあ一応紹介しておくと、彼は河合かわいゆう。2年生の厨二病になりきれてない、変わった子だよ」

「ボクは変わった子じゃないよ!!」


 ボクだと…!?

 キャラ崩壊早ない?


「うん、そうだね。で、次なんだけど……」

「うぅ〜……」


 なんか、めっちゃ可哀想なんだが……

 ま、いっか!!


「6位は御門みかど修斗しゅうとって言うんだけどね…来てないんだよ」

「え?来ないとかありっすか?」


 そういえば、ここにいるの俺含め9人しかいないわ。


「ん?当たり前になしだよ?ただ……彼は問題児だからね……」


 いや、全員問題児じゃねぇの…?


「あ、噂をすれば来たようだね」


 その言葉とともに、ドアが勢いよく開かれた。


「すんませ〜ん!遅れたわ〜!!」


 現れたのは、金のアクセサリーを全身に身に纏っており、金髪の編み込みにサングラスをかけているチャラそうな人だった。

 ちなみに、イケメン。


「お、君は……雲雀丘蓮くんやな?」

「あ、はい」


 サングラスを少し下にずらし、俺を観察するように見てくる。


「うん!よろしくな」


 そう言って、御門は握手を求めてくる。

 念の為、俺も手を差し出し、握手を交わす。


 触れて分かったが、この人…強いな。

 おそらくあれだ。

 前の俺と同じで、力を隠してるタイプだ。


「ちな、もう俺の紹介してもうてる?」

「ああ、僕がしたよ」

「なら、一応改めて…序列6位、2年御門修斗や。以後お見知り置きを」


 御門は礼儀正しく、お辞儀をする。


「それにしても、修斗が来るなんて珍しいね」

「流石に、新人が来るんやからな!顔合わせぐらいはしておかんと」


 やっぱ、この人来てないのかよ。

 俺も、その立ち位置になりたい!!


「はいはい、次行くよ〜!!てことで、みんなのアイドル〜!!夢見希ちゃんだお⭐︎」

「………」

「可愛い……」

「……え?」


 今、黒名から聞こえた気が……

 思わず、黒名に振り向いてしまった。


「何かな…?」

「いや、今の……」

「何かな…?」

「何もないっす……」


 怖っ…!

 笑ってるのに笑ってないって一番怖い。


「…柊雛」

「ご無沙汰してます……」

「ん……」


 あ、気まずい。


「やあ、雲雀丘くん。久しぶりだね。神崎海斗だよ」

「あ〜久しぶりっすね」

「これからよろしくね!と言っても、1年だけなんだけどね」


 この人、10位から9位になってたんだ。

 まぁ、それぐらいの強さはありそうだったしな。


「さて、これで全員終わったね。じゃあ、早速だけど……十傲会議を始めようか」


 なん…だと…!?


 会議だ…?

 めんどくせぇ〜……


 ああ、そうそう。


「不意をつきたいなら、存在自体消さないと丸分かりっすよ?」

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