13

「もうすぐね…」


 もうすぐ試験が開始する。


「雲雀丘くんは大丈夫かしら…?」


 自分の心配より相方の方が心配だった。


 だって、最悪この試験はを崩壊させてしまうほどの力を持っているから。


「それでは、スタートします。3、2、1…開始!!」


 そんなことを考えていると、試験が開始していた。


 ここからは全員が敵。

 それは、雲雀丘くんも同様。


 だから、自分の事を考えよう。

 私の鏡の異能はまだ完全に制御ができてはいない。

 だからって、負けるつもりはないのだけど…


「一度索敵するべきね」


 鏡を空中に出現させ周りを見渡してみる。

 そんな時、気配を感じた。


「お!一人はっけ〜ん!!!」


 現れたのは赤茶色のポニーテールの女の子だった。


「初めまして!私、一年D組戸井明里って言いま〜す!!」


 D組…

 雲雀丘くんと同じクラスね…


「私は、一年A組有栖川白亜よ」

「え?有栖川…!?」


 私の苗字を聞いて驚いたようね。


「す、すごい…!!本物だ〜!!」


 私の周りをぴょんぴょんと飛び回りながら、目を輝かしている。


「一応…試験なのだけど?」

「あ!そうだった!!」


 これが、天然なのか意図的になのか分からないわね…


「じゃ!始めよっか!!」


 そう言って、戸井さんは短剣を構え戦闘体制をとった。


 彼女の異能が分からない以上、こちらから動く訳にはいかない。

 でも、それは戸井さん同じ。


 お互いに様子を伺っている。


「へへ!私からは動かないよ〜?」


 一向に動かないからまさかとは思ったけど……

 そのまさかだったわけね。


 私の異能は防御型。

 だから、攻撃には向いていない。


「どうするべきなのかしら……」


 逃げるわけにはいかない。

 逃げてしまえば、きっと雲雀丘くんに追いつくことなんて叶わない。


 勝たないと…


「っ…!?」

「…!!どしたの!?」


 突然、激しい頭痛がした。

 どうして…?


「だ、大丈夫よ……」


 敵に心配されるなんて……

 雲雀丘くんならなんて言うのかしら?

 きっと、戦えって言うでしょうね。


「鏡剣」

「お!」


 鏡の剣を生成し、地面を蹴り一気に距離を詰める。


「へへ、すごいね〜!」

「っ!?」


 私の鏡剣を拳で砕かれた。


 短剣の意味とは…??


「ギリギリだった〜!!」


 それにしても、こんな簡単に砕かれるなんて、きっと異能に違いないわね。

 身体強化かしら…?


「私の異能、身体強化だと思ったでしょ〜?」

「違うのかしら…?」

「ちっちっち〜!違うよ〜、正解は…」


 突如、戸井さんの手のひらに鉄の塊が現れた。


「鉄の異能なんだ!!」

「て、鉄…?」


 珍しい異能ね。


「こうやって…こうしたら…!!はい!かんせ〜い!!」


 戸井さんは異能によってメリケンサックを作り出した。


「そう…それで、砕いたのね」

「いぇす!!砕いたのと同時に私のも粉砕したんだけどね〜」


 相打ちってわけね。

 なら、まだ勝算はあるわ。


「これで終わりではないでしょう?」

「あはは!言うね〜!!」


 戸井さんは鉄球を生成した。

 明らかに投げるであろう、姿勢になった。


 やっぱり、その短剣は使わないのね…


「避けてね〜」


 そう言って、鉄球を投げた。


「鏡花水月!」

「えぇ!?」


 鏡花水月は、自分の幻影を鏡によって生み出す技。

 じゃあ、本物は?

 と言うと…


「後ろよ」

「やばっ!?」


 ぎりぎりで避けられた。


「へへ、やるね〜…だったら、私の切り札出そうかな?」


 切り札…?

 どうしてでしょう…?

 なぜか、悪寒がする……


破滅の槌デストロイハンマー!!」

「…!?」


 その悪寒は見事的中した。

 というか、そのハンマー…完全にミョルニルじゃ…?


「あ、やばい…!手加減出来な〜い!!!」

「嘘でしょ…??」


 あんな禍々しいものをくらったら、ひとたまりもないわよ。

 私も、地形も。


「まずいわね…」


 命の危機なのに、なぜか冷静になっているわ。


 これを私の反射リフレクトで返せるかしら…?

 例え、出来なくともやるしかないわね。

 今の私にはこれしか手札がないもの。


「誰か止めて〜!!」

反射リフレクト!!」


 私の鏡と戸井さんのミョル…こほん、ハンマーが接触する。


「くっ……!!」


 だ、だめ…意識が……飛ぶ…!!

 けれど、負けるわけには…!!!


「はぁぁぁああ!!!!」

「…!!」


 あれ?

 身体が軽い…?


「あぶねぇな…危うく死んでたぞ?」


 あ、あなたは……


「り、竜…胆…さ…ん……」


 そうして、私は意識を失った。








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