12

「これから試験の説明を行う」


 全員が席に座ったのを確認し、竜胆は説明を行う。


「今回の試験はこの学校での順位を決める重要なものだ。説明を聞き逃しても、もう一回は言わねぇからしっかり聞けよ?」


 めっちゃ脅すね。

 まぁ、それぐらい大切ってことか。


「つっても、試験の内容は簡単だ。お前らには乱闘を行ってもらう」


 乱闘…?

 それはまた単純な。

 ただ、そんなので力量を測れるのか…?


「疑問に思ってると思うが、今から説明する。まず、サポート型と防御型は不利な試験だ。だから、この試験では全員行動を見させてもらう。実力ってのは単に力だけじゃない。頭脳や防御も含め全てが実力だ。逃げるも隠れるも好きにしたらいい。ただそれだけじゃ、順位は下がるがな」


 なるほど。

 生き残るとか撃破数とかじゃなく行動か。


「負けた奴はその時点で脱落だ。法に触れなければ何してもいい。説明は以上だ。さて、移動まで時間があるし、質問タイムと行こうか」

「一ついいですか?」


 真面目そうなイケメンが手を挙げた。

 この学校イケメン多くね…?

 あ、俺含めね。


「行動を見ると言いましたが、一体どうやって見るんですか?」

「ああ、それか。それはな…見てもらった方が早いか」


 異能を使うのか…?

 世界最強の異能は何なんだ?


「石楠花」

「!?」


 俺の横に石楠花が生えた。

 いや、生徒一人一人に石楠花が生えている。


「これを使って、監視する」

「まさか、あなた一人で…?」

「ああ、そうだ」

「そんなことできるんですか…?」

「舐めてんのか?たった1000人ちょっとだけだぞ?できるに決まってるだろ」


 たった1000人って…

 まあまあ多いよ?


「はぁ、さて時間だ。行くぞ」


 ♦︎


「このフィールドのマップはスマートバンドに送ってある。その範囲からは出るなよ。出た時点で失格だ。じゃ、頑張れよ」


 適当だな。

 流石にもう慣れた。


「各自散らばって下さい。準備ができ次第開始します」


 そうアナウンスが流れた。


 一旦、フィールドのいっちゃん端に移動しよう。

 あ、しっかり石楠花さんがいらっしゃる。

 踏み潰してやろうか?


「おい、雲雀丘!」

「え?何?」


 久しぶりの登場、倉瀬くんじゃないか!


「おお、久しぶりだな〜!元気してた?」

「馴れ合いに来たんじゃない!今回の試験で決着をつける!!覚悟しておけ!」


 なんだろ…

 言葉の節々から小物感が半端ないと思うのは俺だけ?


「お、おう…が、頑張れ…よ?」


 その後は倉瀬はどっか行った。

 俺は予定通り一番端に来た。


「さて、この試験はどうやって立ち回ろうか?」


 動かないと、順位は下がる。

 だからといって、戦闘すると一瞬で終わる。


「手加減できるかな?」

「それでは、スタートします。3、2、1…開始!!」


 お、始まった。


「ま、一旦は様子み—」

「隙ありだおらぁ!!」

「お!」


 始まった瞬間奇襲を仕掛けられた。


「リベンジだ!」

「……え?初対面じゃないの?」

「クソが!何で覚えてねぇんだよ!!」


 いちいち雑魚を覚える必要ないよね?

 逆にお前らは踏み潰した蟻の数を覚えてるのか?

 え?覚えてる?

 きも…


「だったら、お前の記憶に焼き付けてやる!俺様は成宮なりみや雷人らいとだ!!」

「へ〜…」

「お前に船で倒されたんだよ!!」

「へ〜…」


 そんなやついたっけ?

 ああ、なんかいたような…いなかったような?


 まぁ、雑魚だったし倒してもいいか。

 いや、どうせ倉瀬と戦うんだ。

 だったら、こいつら戦わせるか。


「よし!ついてこい!!」

「あ?お前何言って…早!?」


 俊足の身体強化をかけ一気に移動する。


 これで撒けたらラッキーだな。


「逃げんじゃねぇぇぇえ!!!」

「うお!まじ!?」


 あいつの異能は雷か。

 そりゃ、追いつけるか。


 倉瀬はどこだ?

 早く見つけねぇと!


雷拳サンダーフィスト!!」

「お!?」


 咄嗟に腕で防いでしまった。

 できれば避けたかったな〜


 にしても、追いつかれたか。

 そのせいで、少し後退してしまった。


 ちゃんとこのスピードにも石楠花はついて来れるんだな。

 そんなこと考えてる場合じゃないか。


音爆インパクト!」

「お!やっと来たか!!」


 倉瀬が来てくれた。

 救世主に見える。


「誰だ…!!お前!!」

「うるさいな〜…邪魔だよ…!!」

「んだと…!!」


 よしこのまま潰し合ってもらって……


「雷雲“ボルトクラッシュ”!!」

残響エコー!」


 一斉に俺目掛け技を放ってくる。


「何逃げようとしてんだ…?」

「逃すわけないでしょ…!」


 やっぱ、そう簡単にはいかないか…


「あ〜めんどくせぇ…!!」


 そもそも、実力を隠すのなんて苦手なんだよ。

 だから、静かにやらせてくれよ。

 でも、元はと言うと俺が蒔いた種だもんな。


「ふふふ…あははは…!!いいぜ、来いよ?お前らまとめて、俺の引き立て役にしてやるよ!!」


 俺は石楠花を踏み潰し、全ての身体強化をかける。


 さぁ、蹂躙の始まりだ。

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