21

「よし!じゃあ、竜胆を倒そうか」

「…………は????????」


 俺がそう言うと、鮫島は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。


「竜胆さんを倒すだと…?出来るわけねぇだろ!!」


 それはごもっともな意見だ。

 だが、俺は勝てるか勝てないかなんてどうだっていい。


 欲しいのは勝利でも敗北でもない、鮫島の成長だよ。


「お前は強くなりたいんじゃないのか?」

「………」

「だったら、めちゃくちゃいい舞台じゃないか。なんせ、世界最強と手合わせ出来るんだからな」


 ま、相手は異能禁止って言うハンデありだけどな。


「だからって……」

「文句を言ってる暇はないぞ。ほら、来た」


 ここで登場、最強さん。


「おいおい、鬼ごっこだと言っただろ?何突っ立ってんだぁ?」

「ちょっと提案がありまして〜」


 俺がそう言うと、竜胆は怪訝そうな目をした。


「提案…?言ってみろ」

「今から俺たち2人であんたに挑みます。勝てば見逃す、負ければ確保の勝負をしないっすか?」

「あと25分しかねぇ。そんなことをしてる時間は……」


 25分しか…?

 25分もの間違いだろ。


「あんたは残りの人数あと何分で捕まえられます?」

「……7分いや、5分ありゃ十分だ」


 流石は世界最強。

 20分もあれば十分だろ。


「じゃあ出来ますよね?」

「はぁ〜分かった。だったら5分だけ待ってろ」

「りょ〜かい!!」


 そうして、竜胆は他の生徒を捕まえに向かった。


「ガチでやるのか…?」

「当たり前だろ?きっとお前にとって有意義な時間になるさ」


 知らんけど。


「…なんか作戦はねぇのか?」

「ん?作戦…?」


 作戦か……

 考えてないな〜…


 そうだ!


「俺を見てろ」

「あ?何言ってんだ?」

「そのままの意味だけど?」


 今回はちょっと真面目に戦おうか。


 別に今回は順位が上がるわけじゃない。

 最終的に負ければいわけだ。

 だから、鮫島の成長のために人肌脱ごうということだ。


 そんな鮫島は、意味が分からないと言わんばかりの顔をしている。


 それから大体5分ぐらい経って、竜胆が戻ってきた。


「んじゃ、やるか。俺は異能禁止だろ?」

「そうっすね。俺たちは遠慮なく使いますけど」


 真面目には戦うが、手は抜く。

 竜胆と全力で戦うには


「よし!鮫島、お前が先制しろ!!」

「………俺が!?」


 な〜に、驚いてるんだよ。


「ほら、早くこい」

「あ〜クソが!やりゃあいんだろ?」


 そうして戦闘体制をとった鮫島。


 物分かりがよろしい!

 さて、お手並み拝見といこうか。


 お前のための、お前だけの舞台だ。

 ちゃんと魅してくれよ?


「行くぞ!!」

「おう、こい」


 鮫島は地面を蹴り……


「牙裂!」


 両腕に巨大な牙を作り出し、竜胆に放った。


「筋はいいんだがな……」


 だが、鮫島の攻撃は竜胆に届くことはなかった。


「ぐっ!?」


 竜胆に蹴り飛ばされ、後ろに飛ばされる。


 ま、そうなるよな。

 さて、俺の番だな。


「お〜い、鮫島〜?」

「…な、んだよ」


 ちゃんと意識はあるようだ。

 なら平気だな。


「ちゃんと見とけよ?」


 俺はそう言うと、竜胆に振り向いた。

 そうして、間髪入れず竜胆と距離を縮める。


「…!」

剛拳ただのパ〜ンチ!!」


 片腕で俺の攻撃を受け止めた竜胆は少し顔を歪めたが、すぐに反撃の体制をとった。


「手加減しやがって…!」

「うお!?」


 なかなかの速度で俺に拳を叩き込んできた。

 だが、俺はそれを余裕で避ける。


「なんの目的か知らねぇが……」


 予備動作もなしで目の前に現れた竜胆に、流石の俺も反応が遅れた。


「俺はお前らを倒すだけだ」

「やばっ!?」


 咄嗟に腕で防いだのは良かったが、完全に流れを竜胆に持ってかれた。


「流石は世界最強だな…」


 これで異能使ってないんだぜ?


「どうした?本気を出してないにしても、その程度か?」

「はは、流石に舐めてましたよ。だから…ちょっと本気で行きますよ」


 そうして俺は……思考を放棄した。

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