8

 あれから少し時間が経ち、島もとい異能島に到着した。


 船にいる時、軽く異能島を見たが、岩手ぐらいは大きいと思う。

 でかいね〜!


「おお!綺麗だな〜!」


 島の雰囲気はリゾート地のようである。

 普通にすごい。

 金かかってんな。


「今から寮に案内する。そこで制服に着替え、学校に向かう」


 との通告があった。

 ということで、多分教師らしき人について行く。


 寮か…俺の寮のイメージは二人部屋だったり、制限が厳しかったりだと思っていたが……


 実際、寮に着くと、イメージと真反対だった。


 寮の外見は高級ホテルのような建物だった。

 そして、中に入るとロビーになるわけだが広い。

 隣にはカフェなどがあって、ゆったりできそうな空間が広がっていた。


「わぁお…」


 寮のりょの字もない。


「ここでお前たちは三年間過ごしてもらう。この寮内のルールに関しては部屋にあるマニュアルを読め」


 マニュアル必読か…本読むの苦手なんだよな〜


 そして、肝心の部屋に関してだがすでに学校の方で部屋割りをしているらしい。


 順番に部屋の鍵であるカードキーを支給される。

 俺の部屋は六階だ。


 エレベーターで、自分の部屋の階に登り、部屋の前に着いた。


「角部屋か」


 いいのか悪いのか…

 ま、いっか。


 それにしても一人部屋か。

 ラッキーだな。


 部屋の中は、よくあるホテルのような内装だ。

 そして、一番大事なことが風呂とトイレが分かれているのかということだ。


「よし!」


 ちゃんと分かれていた。

 この学校はよく分かってんね。


「さて、さっさと着替えよう」


 今着ている服を脱ぎ、置いてあった制服に着替える。


 サイズはピッタリだ。

 とりあえず着替えたので、ロビーに戻る。


 まだ、ロビーには人が少ない。

 特に今はやることがないので、ロビー備え付けのソファーに腰掛ける。


「少し、観察でもしようか」


 別に、探索しても良かったんだが、こういう風に全学年を見れる機会は限られるわけなので、面白そうな人間を探すためにソファーに座ったのもある。


 そしてもう一つは、のために俺は静かにこの学校で過ごそうと決めた。

 俺の目的のために目立つのは少々やりづらい。


 船で目立っただろって?

 それは仕方ない。

 あれは、俺の闘争本能が働いてしまったのが原因だ。

 それに、手を抜いていたわけなので、別に目をつけられるほどじゃない。


「はぁ…おもんねぇ〜…」


 制服に着替えて降りてくる生徒を眺めてはいるが、面白みのかけらも感じ取れない。

 まぁ、まだまだだな。


 白亜もまだ降りてこないし。


 あと一つ言っておくと、この寮には一年生しかいない。

 二年、三年はまた別の寮がある。


「…ん?」


 俺はある一人の男に目が釘付けになった。


 弱々しそうな見た目で、強さは一切感じられない。

 ただ、何か面白そうな雰囲気を纏っている。


「決めた。あいつと仲良くしよう!」


 そうと決まれば、早速行動にうつそう。


「なぁ」

「え…?な、何かな…?」


 話しかけられるとは思わなかったのか、めっちゃビビられた。


「俺は雲雀丘蓮。友達になろうぜ!」

「ぼ、僕と…?」


周りをきょろきょろと見渡している。

いや、目合ってるだろ。


「お前しかいないだろ?」

「そうだよね…うん!友達になろう!」

「…おう」


 操りやすそうだな。

 うん、いい駒になりそうだ。


「ところで、名前は?」

「あ、僕は東雲しののめらくって言うんだ」

「じゃあ、楽よろしくな!」

「こっちこそよろしくね。雲雀丘くん!」


 と、友好を深めていたところに…


「もう友達ができたの?」


 白亜がやってきた。


「ほ〜……」

「な、何よ…?」


 制服姿の白亜を見て思わず感嘆の声を上げてしまった。

 やっぱ、がわはいいんだよな〜


「あ……」


 そんな声をもらしたのは楽である。

 楽の目は白亜に釘付けであった。


 え???


「あ〜白亜。制服似合ってるな!」

「そ、そう…?ありがとう…」


 そう言って頬を赤る白亜。


 照れるな。

 可愛いな、くそ。


「ひ、雲雀丘くん…この人って誰なの…?」

「ああ、こいつは有栖川白亜。忠告しておく、見た目に騙されるな」

「雲雀丘く〜ん…?」

「おっと…」


 なんで聞こえてるんだよ!!

 聞こえないように、小さい声で言ったはずなのに!

 地獄耳かっ!!


「仲良いんだね」

「お、そう見える?」


 なら、な。


「仲良くしてるつもりはないのだけど…」

「そんなつれないこと言うなよ〜!」

「なんだか桐島くんみたいね」

「は??????」


 ないない。

 あいつと同じはありえない。

 てかあってたまるか。


「目に見えて嫌な顔するわね」

「あいつと同族は死んでも嫌だ!!」

「後ろにいる桐島くんが泣いてるわよ?」


 そう言われて後ろを振り返ると、まじで桐島がいた。

 なんか、目にハイライトがないんだけど…

 どうやってんの…?


「そこまで言うかな…?僕はただ君と仲良くしたいだけだよ…?」

「黙れ」

「酷い!」


 俺のこと倒すとか言っときながら、仲良くしたいって矛盾しとるやろがい!


「ふふ」


 楽が突然笑い出した。


「楽、何笑ってんだよ!」

「賑やかで楽しいなって思って」


 賑やかで楽しい…か。

 そうだな…

 今ぐらいはこの時間も悪くはないかな。


「揃ったな。今から学校へ向かう。ついてこい」


 もうそんな時間か…

 どんなふうになるか、楽しみだな。

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