17

 学長室にて…


「これで以上か?」


 学長である西城香織に今回の試験の各生徒の資料を渡す。


「ああ、何一つ抜けはねぇ…俺にとってはな」

「私にとってはあるってことなのか?」

「さぁ?どうだろうか」


 決して嘘ではない。

 あくまで、この試験でのみの判定だ。


「はぁ…お前はそういうやつだったな」

「なんだよ。つれねぇな」

「今は仕事中だからな」


 そう言って軽くあしらう香織。


「それにしても、今年の新入生は優秀だな」

「ああ、特に有栖川、桐島、真澄、鮫島の四人は頭一つは抜けてる」

「そう。他は?」

「他か?そうだな…成宮、倉瀬、戸井か?」


 俺は一年の中でも優秀な生徒を挙げる。


「あとは、雲雀丘か…」


 最後に挙がったのは雲雀丘蓮だった。


「あいつは…別格だ。俺の全力でも勝てねぇ」

「そこまで言うようになるとは偉くなったものだな。昔は正義にコテンパンにされてたくせに」

「いつの話してんだよ…」


 もう20年前の話か…?

 あの頃は…なんだかんだで楽しかったな。


 俺たちは歳を取るにつれ、責任に追われるようになった。

 もうあの頃に戻ることは二度とないだろう。


「雲雀丘蓮か…有紗はとんでもない化け物を寄越したな…」

「あいつへの文句なんて今更だろ?」

「それもそうか…」


 今までどれだけ有紗に振り回されてきたか…


「雲雀丘の監視はしっかりしろよ?お前がこの学校にきた理由だろ」

「分かってる。監視はするさ…監視はな?」


 俺はあいつの行く末を見たい。

 このくだらない世界をどうするかをこの監視特等席でな。


 ♦︎


 試験が終了し、真澄と仲良く元の場所に帰ってきた。


「着いた〜!!」


 俺たちが奥の方にいたこともあって、着いた時にはほとんど生徒が集まっていた。


 着いたことに喜んで、元気いっぱいに跳ね回る真澄。

 可愛いね〜!


 俺は軽く周りを見渡す。

 

 あれ?白亜はどこ行った?

 白亜の気配は感じ取れない。


 時間的にも戻ってないわけはないはず…

 負けた…?

 あいつ…もしかして負けちゃった?


「あ!雲雀丘くん!!」


 声のした方を見ると笑顔の楽がいた。


「おお!楽!!大丈夫だったのか?」

「うん!なんか、よく分かんないけど大丈夫だったよ」


 よく分かんないのか……

 よく生き残ったな。


「ところで白亜知らない?」

「有栖川さん…?そう言えば見てないね」

「そうか」


 やっぱ負けたか怪我したのか知らんが、医務室的なとこにいるんじゃないか?


 はぁ〜…何してんだよ…


 こんなんとこで躓いてたらこの先絶対潰れるぞ。

 俺はお前に期待してるんだ。

 お前ならきっと……


 いや、今はいいか。

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