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俺は闘技場までの道を、静かに歩いていた。
聞こえるのは、自分の足音と外からの歓声のみ。
今から俺は、人を殺す。
もちろん、俺が手を下すわけじゃない。
だが、まだ救えるはずの命を俺は見殺しにする。
それから、ひたすら歩き続け、そこに辿り着いた。
「雲雀丘…」
もうすでに立っている、倉瀬に目もくれず位置についた。
「始めようか」
そうして、倉瀬の目を見て告げた。
♦︎
「始めようか」
俺は雲雀丘と目が合った瞬間、今までに感じたことのない恐怖を感じた。
圧も殺気も、何も感じないのにだ。
「っ…!!死ねっ!!」
俺はその奇妙な感情を全て振り払って、一直線に雲雀丘に迫る。
「な〜んだ。そんな大したことないな…」
「———は…?」
気づけば俺は地面に伏せていた。
攻撃したはずなのに…
どういうことだ…?
なにも見えなかった…
「確かに強くはなったさ。白亜を倒すくらいにはな」
「……」
「でもな、そんな程度で俺を倒す…?舐めてんのか…?」
この時に気づいた。
今の俺じゃ、雲雀丘には到底及ばないと…
もう、いいんじゃないか?
他人の力を借りて、強くなった気がしていた。
だが、本物の強者にはかなわない。
いくら工夫をしたって、俺はいつまでたっても偽りの強者でしかない。
そんな俺に生きてる意味はあるのだろうか?
否、俺にはもう生きる理由がない。
大切な人も守るべき人もいない。
「はは……」
思わず乾いた笑いが出た。
最後…いや、最期ぐらい夢見たっていいよな…?
俺はポケットに入ってる薬の瓶を取り出し、蓋を開けると浴びるように中身を全て口に入れる。
その瞬間、心臓が…身体が燃えるように熱くなった。
そして、異様に身体が軽くなる。
鼓動が高鳴っていくほどに、気づく。
もう、俺は人間ではないと…
「やっぱ、そうなるよな〜……」
雲雀丘の口ぶりからして、俺がこうなることを予見していたようだ。
はは、笑えてくるな〜
「俺はどこまでいっても弱者だ……」
♦︎
倉瀬が覚醒…いや、キメちゃった。
今の倉瀬からは、ただただ異様な気持ち悪さだけしか残っていない。
言ってしまえば、化け物になってしまったわけだ。
「
……!?
いきなりとてつもない爆音とともに、大爆発が起きた。
「あはは……これは、ちょっと流石の俺でも予想外だわ…」
遊ぶ余裕もないかもな…
ま、倉瀬の最期ぐらい…真剣にやろうか。
「ふふ…ふふふ……ふははははははは!!!!!!!!!!!力が…力が湧いてくる!!あぁ……今ならなんでもできそうだぁ!!」
狂ったように叫ぶ倉瀬。
あんな姿を見てたら、今からこいつが死ぬとかどうでもよくなってきた。
「はは…面白くなってきたじゃねぇか…!!」
「死ねぇぇえええ…!!ひばりがおかぁぁぁあああ!!!!」
楽しい楽しい戦いの開幕だ。
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