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 いきなりだが、君たちにとって物語とはなんだと思う?


 きっと君たちはこう答えるだろう、作り物だとね。

 でも、果たして作り物だけが物語なのだろうか。


 いや、違う。


 俺たちが生きるこの世界こそが物語だ。

 起承転結があればなんでも物語になる。

 

 分かりやすいので言うと恋愛だ。

 人を好きになると言う起、告白するまでの承、告白をする転、結ばれると言う結。


 ほら、物語として成立するだろ?

 運命という作者によって我々は、動かされてる。


 あれ?

 なら、この世界もまた作り物なのかもしれないな。


 まぁ、いいや。

 話が逸れたな。

 え〜と…何言おうとしたんだっけ?


 そうそう、あれだ。

 俺の二つ目の異能は物語の異能だってことを伝えたかったんだ。


「時間がないんだ。もう俺には身体の感覚がない。気を抜けばすぐ倒れるだろう」


 倒れる…つまり、死ぬってことか。

 流石にもう限界か…


 物語の異能は、この世界に干渉することができるものだ。

 簡単に言えば、運命を変えることができる。


 だが、俺個人にしかできない。

 他人の運命を変えることはできないわけだ。


 つまり、倉瀬はもう助からない。


「倉瀬のお別れの会、誠意持って見送ってやらなきゃな…」


 まぁ、この異能を使わなくても勝てはする。

 でも、ちょうどいい。


 全校生徒が見てるこの場所で、見せつけてやるよ。

 本当の最強ってやつをよ…!


「俺ができることはきっと、雲雀丘にもできる。そして、俺ができないことも雲雀丘はできる」

「それは買い被りすぎだろ」


 なんでもできるわけじゃない。

 今もなお目的のために試行錯誤してる真っ最中だぞ。


「でも、戦いにおいたらなんでもできる…そうだろ?」

「…そうだな」

「だけどね。君は一つだけできないことがある」


 …?

 なんだ?


「そして、それを俺はできる…!!」


 倉瀬は眼をつぶる。


 そして、俺は理解した。


「雲雀丘、君ができないことは……この戦いに命を捨てることだ…!!!」


 なるほど。

 確かにそうだ。

 俺はこんなところで、命なんて賭けれるわけがない。


 だが、倉瀬はこの戦いの先の未来はない。

 だからこそ、命を賭けることができる。


「これで終わりにしよう。ありがとう、雲雀丘。君と会えてよかった」


 そう言うと、倉瀬は右腕を掲げた。


 そして……散る。


音爆インパクト…!」


 俺だけじゃない、この会場を全て巻き込む大爆発と共に。

 こんなのに巻き込まれたら、まじでシャレにならん。


 俺は、自身の運命を変える。

 この攻撃に当たらないと言う運命に。


 悪いな。

 お前の決死の技を無効化させてもらう。


鉄木リグナムバイタ


 観客席を守るように、生える木々。

 おそらく、竜胆の異能だろう。


 煙に包まれた会場はやがて晴れる。


 そこにはもう誰もいない。

 ただそこに、血の跡が残っているだけだ。


 それにしても、感動のストーリーなんてありゃしなかったな〜


 でもまぁ……


「お前のことは忘れないだろうな……」

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