19

 ただひたすらに力が欲しかった。


 俺の家族を…

 全てを失ったあの日から。


 ——俺はごく普通の家庭に生まれた。

 誰も異能なんて持ってない普通の家庭だ。


 だが、俺は異能を持って生まれた。

 そんな俺を周りは、恐れていた。


 でも、両親はとっても優しくてそれが嬉しかった。


 そして、生まれてから4年が経って妹が生まれた。


 その時母さんはこう言った。


『その力でこの子を守ってあげなさい。きっとそのためにそれを持って生まれてきたのでしょう』


 そう言われて、守ると決めた。

 妹だけじゃなく、家族みんなを……


 それでも結局……

 俺は何も出来なかった。


 家族4人で出掛けたある日。

 途中で俺がお手洗いに行きたくなり、離れていた時に…。

 異能犯罪者組織によって皆殺しされた。


 殺しに一切の躊躇いもなく、ただ虫を殺すかのように……


 俺は動けなかった。

 ただ、隠れることしか出来なかった。


 守ると決めたはずだったのに……


 その日から全てが変わった。

 ひたすらに力を求め続けた。


 絶対的な強者で在らなくてはいけない。

 もう、二度とあんな思いはしたくない。

 そして、俺は強者だと思い込むようになった。


 だが、それが間違いだった。

 俺は強者などではなかった。


 圧倒的な強者の前じゃ、俺は無力だった。

 結局、自分より弱いものを倒して思い上がっていた弱者でしかなかったんだ。


 この学校に入って何を成し遂げたかったのかも分からなくなった。

 雲雀丘蓮と言う化け物と対峙して、俺は決してあの領域に行くことは出来ないと悟った。


 あの日から俺は何も変わっていない。

 何一つ成長していない。


 俺はこれからどうすればいい?


 ああ、もういっか。

 俺は何もできない。


 なら、堕ちるとこまで堕ちよう。

 この闇に身を委ねよう。


 雲雀丘、お前は……

 




 これを求めてたのか…?

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