25

 時は流れ、一週間後。

 特にイベントごともなく、普通の日常を送っている。


 今日も今日とて、つまらない学校にいる。

 クラス内は和気藹々としているが、俺と鮫島は相変わらず馴染めていない。

 そもそも、仲良くするつもりはないわけだけども…


 あいつ元気にしてるかな〜

 中学の時、もう出てこないと思って紹介しなかったあいつ。


 う〜ん、顔が思い出せない!

 ま、いっか!


「おい、聞いたか?放課後、下剋上があるらしいぞ」

「まじかよ!見に行こうぜ!」


 クラスメイトどもの会話がたまたま聞こえたと思えば、下剋上…?

 おいおい、それは見に行くしかないでしょ!!


 久しぶりに面白くなってきたな〜!!


 ♦︎


 下剋上は、コロッセオのような闘技場で行われる。


 今回のカードはどちらも攻撃型のようだ。

 つまり、純粋な力の勝負ってわけ。


 できれば、他のパターンが見たかったが仕方ない。


「只今より、3065位成宮雷人による10位神崎海斗への下剋上を開始致します」


 おい、待て待て。

 成宮が下剋上するのはいい。

 だが、いきなり10位…?

 馬鹿じゃねぇの?


 周りの皆さんも、あいつ死んだわみたいな反応してるぞ。

 まぁ、俺もその1人だけど。


「十傲に挑むんだ!しょうもない戦いするんじゃねぇぞ!!」


 どこからともなくそんな野次が聞こえた。


 十傲ってなんだ?

 初めて聞いたな。


「あーあー、どうも神崎かんざき海斗かいとです。わざわざこんなつまらない勝負にご足労いただきありがとうございます。せっかく来ていただいてなんですが、すぐ終わらせます。早く帰りたいので」


 言葉遣いは丁寧なんだが、声がものすごく無気力なんだよな。

 ま、佇まいを見たら只者ではなさそうだが…


「それでは両者準備が整いましたので、下剋上、開始です!」


 開始の合図とともに……


波乗りリプルス


 神崎が一気に攻めてきた。


「くっ…!雷拳サンダーフィスト!!」


 成宮も負けじと対抗するが、攻撃が当たる寸前で神崎は後ろに飛んだ。


「君の異能は雷か…相性が悪いな」


 見た感じ、神崎の異能はおそらく水だ。

 そうだとするなら、雷と水は確かに相性が悪いな。


 だが、それは実力が拮抗しているならの話だ。

 成宮と神崎の実力差は一目瞭然。


「ま、僕が触れなきゃいい話か」


 実力差があるからこそ、こんな舐めプをすることができる。


「せっかくだし、絶望を君に送るよ」

「ふざけんじゃねぇぇえ!!!!俺様はこんなところで負けるわけにはいかねぇんだ!!!」

「その志はいいよ。でも、自分の実力はちゃんと理解しておこうね」


 本当にその通りだ。

 実力が伴ってないのに、志だけ一丁前なやつが多すぎる。

 気持ちだけで強くなれるなら、誰も苦労しない。


 どれだけ弱くたっていい。

 ただ、自分に対して客観的な視点を持つことが大切だ。


「お話はここら辺で、そろそろ終わらせよう」


 神崎は目を閉じて唱えた。


海竜神怒リヴァイアサン・ラース


 現れた巨大な海獣に俺は思わず…


「すげぇ…」


 そう言葉を漏らした。


 客席から見てもこの迫力、実際目の前にいる成宮にとって絶望するには十分すぎた。


「何だよこれ………勝てるわけねぇ……」

「賢明な判断だね。もし無謀にも僕に楯突いたら、今頃海の藻屑になってたよ」


 これが、10位か……

 それに、まだ本気を出していなくてこれだ。


 戦いたい。

 そう思わずにはいられない。


「成宮雷人対神崎海斗。勝者、神崎海斗!!」

「「「うぉぉぉ!!!」」」


 そのアナウンスとともに、とてつもない歓声が上がった。


「やっぱ、十傲だな!!」


 いや、その十傲ってまじで何?

 気になるんだけど。


 とにかく下剋上が終了したため、退出する。

 ついでに、十傲について聞き回るか!





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