23

 強くなるために必要なことは何か?


 修行をする?

 実践を積む?


 確かにそれも大切だろう。


 だが、それだけでは強さの限界がある。

 じゃあ、なんだ?


 覚悟?

 信念?


 そんな感情論で強くなどなれない。


 戦いにおいて、冷静さを欠くことはよくない。

 すぐに感情的になるやつはすぐ負ける。


 だが、逆を考えれば冷静さがあればいい。

 分析なんて必要ない。

 必要なのは、自分の実力の理解。

 そして、狂うことだ。


「ははは!おい、竜胆!」

「はぁ…お前、正気じゃねぇな」


 ふふふ、正気じゃない?

 むしろ、それがいいだろ?


天破拳スーパーノヴァ

「チッ…」


 なぁ、鮫島。

 お前はここに来る覚悟があるのか?


 まぁ、なくても無理矢理立たせるんだけどな!


「……」

「あと10分。そろそろ、終わらせようか」


 そうか、あと10分か……


「おい、鮫島」

「ぁ………」


 ……?

 ああ、やっと目覚めたか。


「よし!あとは任せた!!」

「……!」


 今回の俺の目的は鮫島の成長。

 それは今達成された。


 あとは……敗北するだけだ。


 ま、鮫島がどこまでやれるのかは見ておこうかな。


「牙狼」


 目にも止まらぬスピードで竜胆に迫る。


「ガキが来るような場所じゃねぇだろ……は」


 鮫島の攻撃を受けた竜胆は後方に飛ばされる。


 いや〜それにしても…

 なかなかいいパワーしてるよほんと。


 今、鮫島は一切無駄なことを考えていないだろう。

 強いて言うなら、目の前に餌がいるということぐらいか?


 だからこそ、迷いがない。

 無駄な動作が少ない。

 だから、あのスピード、パワーを出せたってわけだ。


 でも、まだ足りない。

 強くはなった。

 だが、弱い。


 多分、白亜には勝てるだろうが桐島には勝てない。

 認めるのは癪だが、桐島は強い。

 失うものがないやつほど厄介な敵はいないからな。


「さて、そろそろ終わりかな?」


 目の前で繰り広げられたこの戦い舞台もそろそろ終演のようだ。


「俺の踏み台になりやがれぇぇ!!!!」

「お前が俺を踏み台にするには早すぎるだろ。身の程を知れ、鮫島」

「鮫牙!!」


 一直線に竜胆へ向かう。

 鮫島の決死の攻撃。


「甘い」

「がっ…!?」


 だが、そのあまりにも単純な攻撃は竜胆には通用しない。


「これで、42人目だな。雲雀丘、お前はどうする?」

「これ以上しても勝ち目ないんで、ギブで」


 戦いたい気持ちはあるが、時間的にも楽しめる余裕はない。


「そうか。なら、さっさと戻ってこいよ」


 そう言い残して、竜胆は鮫島を抱えて消えていった。


 そうして、1人残された俺は……


「なぁ、お前たち。次は誰にするべきだ?」


 そんな、誰に向けたのか分からない問いをするのだった。

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