第38話 聖女はグール化する前の人間に会いに行きます!
「はあ? グール
この太った医者は私たちを
「できるわけねぇだろうが! 俺が二年もかけて研究しているのによ。さっさと帰れよ。邪魔だよ、お前ら!」
な、何だ、この中年男は?
本当に医師なのだろうか?
ラーバスは
「こ、この方は医師のバルジョ・ゴランボス先生だ」
パメラは太った中年医師を見やり、眉をひそめている。
ラーバスは私たちにこの医師のことを説明した。
「ゴランボス先生はジャームデル王国と
「その通りだ!」
ゴランボス氏はそう言って、太った腹を突き出して大きく笑った。
「俺はジャームデル国立大学を卒業し医師となった。
「は、はい。そうですが」
私がそう言うと、ゴランボス氏はあからさまに顔をしかめた。
「聖女とかいう
「せ、聖女は
私が
「俺はまじないの
正論だが……。
するとパメラが疑問点を口に出した。
「じゃあさぁ、このグール
「……そんなのできたら誰も困ってねえんだよ。だから研究を続けているんだろうが!」
ゴランボス氏はわめいているが、私は言った。
「今日は私、聖女のアンナ・リバールーンがグール
「……聖女などよく分からんがまあ、いいだろう。だが、俺の
そのとき、ラーバスの
「ラーバス先生はお仕事がありますので、私が川の
「おお、助かる。俺がこいつらを案内するなんて
ゴランボス氏は大きく笑った。
……ようやくゾートマルクの
◇ ◇ ◇
朝の九時半、ゾートマルクの
――彼らもジャームデル王国の
私たちが石橋を
家はモルタルと石でできていて古くはないのだが、
「ふん」
ゴランボス氏は舌打ちした。
「こいつら、夕方から
横の家の前にあるベンチには、人が
地面を見つめているだけだ。
他にはただゆらゆらと歩く人を、七名も見かけた。
みんなグール
「ポレッタ、この
私が聞くと、ポレッタは首を横に振った。
「会話ができる人はいません。……あっ」
ポレッタは近くの公園の中を見つつ言った。
「あそこの公園にいるのは、二十三歳のリースマン・リングラムさんですね。リースマンさんは昨日、パメラさんを
「えっ! き、昨日のグール!」
パメラは目を丸くした。
「ガハハハ! お前らを
ゴランボス氏は笑った。
「よし、許可をだす。あいつなら観察していいぞ」
「冗談じゃないよ……」
パメラは眉をひそめた。
しかし、この
◇ ◇ ◇
彼がリースマン・リングラムという人らしい。
格好はシャツとズボン。
「おとなしそうだな。昨日、あたしを
パメラは恐る恐るリースマン氏を見た。
おや? 昨日は気付かなかったがリースマン氏の髪の毛が短い。
つまり、髪の毛が整えられているのだ。
「彼の髪の毛はどうしているんですか?」
私がポレッタに聞くと、彼女は答えた。
「月に一度、
「入浴は?」
「彼らは自分でシャワーを浴びたり、服を着たりすることはできます。グール
ポレッタがそう説明したので驚いた。
自分で入浴や着替えができる……。
「あなたがリースマン・リングラムさんですか?」
私が聞いてもリースマン氏は座って地面を
私は一つの仮説を考えていた。
彼らに問題があるのは――頭の中――「脳」か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。