第24話 元騎士団長ウォルター、料理を披露する
「――パンはどうやって手に入れるのですか? 手作りですか?」
私はオールデン村長に聞いた。
「いや、それは……」
オールデン村長は言いにくそうだった。
おや?
私はパンに何か秘密がある、と感じていた。
◇ ◇ ◇
一通り、食材は見終わった。
私とウォルター、オールデン村長とレギーナさんは食料庫の外に出た。
村は夕日の
時刻はもう夕刻――十七時くらいだろう。
「そろそろ夕食の時間です。村人たちが食材を食料庫に取りに来る時間ですが、どうなさいますか?」
レギーナさんがそう話したとき、ウォルターが口を開いた。
「僕もさすがに腹が減ったよ。アンナ、――今のところ、食材に毒はないということが分かったのだろう?」
「ええ――。だけど、村人の体内には確実に毒が
「食事に毒があるかどうか、見るということか。だが、この問題は簡単に解決できる」
ウォルターが胸を張ってそう言ったので、私は驚いてしまった。
「僕が大量の料理を作り、アンナに毒がないかどうか確認してもらう。毒がないと確認されたその料理を村人の皆で食べればいい。そうすれば、村人が毒を
「ええっ? つ、つまり……」
「僕が『
「
ウォルターという人は男性なのに料理までできるのか。
グレンデル王国や周辺区域では、料理は女性がするものだと考えられている。
私は感心してしまった。
「
オールデン村長はそう言って頭をかいていた。
「私たちが普段食べる食事は、パンと様々な野菜を
レギーナさんが興味深そうに、私とウォルターに聞いた。
「そのような料理とは違うものを作る。僕に
ウォルターは張り切っている。
一体、どんな料理が出来上がるのだろう。
◇ ◇ ◇
ウォルターが作り出そうとする料理は驚くほど単純なものだった。
村の広場で
そして鉄板の上で人参やジャガイモを厚く輪切りにして、バターで焼くだけだ。
キャベツも大ぶりに切って、ただ単に焼く。
ウォルターはこの料理を「
「何これ? 野菜の輪切りの……ステーキ? こ、こんなの初めて見た」
起きてきたパメラが眉をひそめて、鉄板の上のたくさんの野菜を見た。
私もこのような野菜料理を見るのは初めてだ。
また、米を塩と湯で
小麦を牛乳とバターで煮る「
私は改めて食材の
「ワハハ!
ジャッカルが見回りから帰ってきて、
◇ ◇ ◇
夕刻、十八時半――。
夕食時間になった。
村人はこの村に六十五名いるが、全員皿と
グレンデル国王はまだ寝ているようだったが……。
「なんだこりゃ」
「うまいのか、これ」
「こりゃ、野菜の輪切りのステーキか? 見たことのない料理だぞ」
鉄板を囲んだ村人たちは、珍しそうに
「おっ、これは……」
「う、美味い!」
「なんでこんなに美味しいんだ?」
ウォルターの料理は驚くほど美味しかった。
野菜のそれ本来の甘味とバターの味が、一緒に口の中に広がった。
人参もジャガイモもキャベツも、それぞれ個性的な味と歯ごたえがあることに改めて驚かされた。
「スープや野菜
ウォルターは説明した。
「しかもこの地方は荒れ地で、野菜の生命力が強い。だから野菜の甘味が強く、とても美味いことに気付いた。だからこの料理を作ったのだ」
「どうだ、美味いだろ。
料理を手伝ったジャッカルが、隣に座っているパメラに
するとパメラが言い返した。
「美味しいけど、何であんたが
「お、おい! それはお前らのことが気になってだな」
「誰のことが気になるの~?」
パメラはニヤついてジャッカルに聞いたが、ジャッカルは顔を真っ赤にして声を上げた。
「だ、誰でもいいだろ!」
村人たちは皆、これらの料理を「美味しい、美味しい」と言って食べてくれた。
しかし
「そういえば、ネストールはどこに行ったの?」
私がパメラに聞くと、パメラは答えた。
「弟はもともと
◇ ◇ ◇
ウォルターとパメラ、ジャッカルは鉄板を片付け、料理の後始末をし始めた。
村人たちが全員、家に帰ったとき私はオールデン村長に聞いた。
一番気になったのは、私たちの本来の主食であるパンのことだ。
「私が気になるのはパンのことです。
「うーむ……その通りだ」
「昨日までこの村では、パンを食べていたのでしょう? パンはどこで入手されていたのですか?」
「……明日になれば分かる」
オールデン村長は
「明日はパンが
「イ、イザベラ女王?」
私は驚いて声を上げた。
私は嫌な予感がした――。
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