第25話 女王と王子、魔王を召喚する【デリック王子視点】
俺はデリック・ボルデール。
グレンデル王国の王子だ。
窓から見える空はまるで古代の
時刻は夕方近く――十五時半。
俺は昨日、母上――イザベラ女王に、「朝、城の
「ちっ、
中年男の
あの城の中庭の
明日は昼から王族の友人と
もしウサギ
下手をしたら
今日はウサギ
絶対だ――。
◇ ◇ ◇
プラスティア
薄暗くて、無気味な
その中央広場に俺の母親――イザベラ女王が一人で立っていた。
城の
嫌な予感がする。
「待っておったぞ、デリックよ。これより重要な
母上は言った。
ぎ、儀式? 何を言ってるんだ、この人は。
黒雲から
「は、母上、明日は用があるんですよ。あまり疲れないようにしたいんです。俺の都合を考えてもらわないと困りますよ」
俺はさっさと帰りたかったが、イザベラ女王は俺の質問に答えず言った。
「デリックよ、ここは悪魔
悪魔
母上はわけのわからないことを言い、手に持った
その
不思議なことにその砂は勝手に土の地面の上に、円形の図を描いていく。
こ、これは「
するとすぐに、地面に砂で描かれた
俺は驚いて
「は、母上! あ、あれは……」
空が赤黒く
人間……。
いや、魔物か?
体がバカでかく
「う、うひいいいっ」
俺は声を上げて震えあがった。
男は、そこに存在しているだけで俺を
何なんだ、あの男は?
「私の名は魔王エレグロンド・バルジェガ三世」
ま、魔王……?
「お姿を
あのいつも
な、何が起こっている?
――魔王バルジェガは言った。
「イザベラ女王よ。ローバッツ工業地帯に対しての実験はまだ続けておるな」
「はい、魔王様」
ロ、ローバッツ工業地帯に対しての実験? 何のことだ?
「女王、お前は我ら魔族に
「その通りでございます。我が息子、デリックも
は?
は、母上が魔族に――こいつに
しかも、お、お、俺も?
「お、おい、魔王とやら! お、お、俺は
俺はあわてて魔王に向かって声を上げた。
「
魔王バルジェガなる男は左手を上げた。
――その瞬間、俺の横にある墓が爆発した。
俺は三メートルはね飛ばされ、背中を強く打った……!
空から
魔王の魔法だ!
「う、ぐ……。は、母上、こ、これはどういう……」
俺は背中に痛みを感じながら母上に聞いたが、彼女の代わりに宙に浮かぶ魔王が言った。
「私とお前たちの
母上が頭を下げたとき、魔王の姿は消え、魔王の声だけが
「ではデリック王子――お前に、お前と同じ年代の私の息子を紹介しよう」
何かが破壊される、耳をつんざく音がした。
再び
直径三メートル、深さ一メートルくらいの穴が空いている――。
破壊された地面の中に、若い男が立っていた。
長髪の背の高い男――いや、若い魔族だ!
「俺に
若い魔族は言った。
ま、魔界の王子だと?
そ、そんなヤツがいるのか?
「明日は、計画通りのことを
魔界の王子なるラードルフは母上に対して言うと、母上は返事をした。
「はい、息子のデリックに、ローバッツ工業地帯に例のパンを届けさせます」
例のパン……?
何だそりゃ?
「よかろう。ではデリック王子、明日、俺と一緒にローバッツ工業地帯に行こう。実験中の人間どもの様子を見てやる」
ラードルフはそう言った。
実験……。
例のパン……。
何のことだ……。
ん? 明日のウサギ
ジェニファーに中止になったと伝えたら、あいつ、ブチ切れて物を投げてくるぞ!
俺は別の意味でもゾッとした。
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