第10話 悪役令嬢、元騎士団長に拒絶される【ジェニファー視点】
元
グレンデル城では――。
私はデリック王子の現婚約者、ジェニファー・ベリバーク。
元
でも、ウォルターはデリック王子とはちょっと違っていて……強くて
何か腹立つ!
「ロザリー!」
その時間、私は自室でケーキを
それを食べ終え、部屋の横で私の衣類の整理をしていた、
「何でございましょう、ジェニファー様」
ロザリーは三十三歳のぽっちゃりした
私がアンナに
でもこの人、真面目だけど
私がデリック王子と浮気恋愛していたのを、
そのことを、ロザリーは何回か
「ジェニファー様、浮気はほどほどにしませんと」
なんて言ってさ。
今はもうデリック王子は私のものになってるけどね。
「ウォルターに会いたいんだけど」
私が言うと、ロザリーは驚いた顔をした。
「はっ? 今、何と?」
は? じゃないって。
ロザリーはもう一度聞いてきた。
「先程庭園で問題を起こした、あの元
「そうだけど? ちょっと会いたいんだけど」
「な、なぜでございましょう。彼は再び
「気になるから会いたいのよね」
私が言うと、ロザリーは顔をもっとしかめた。
何?
別に王子と
しかしロザリーはまた眉をひそめて言った。
「ジェニファー様、ウォルター・モートンは再び
「気になるから会いたいって言ってんのよ!」
「しかしあなたは将来、デリック王子の妻になる女性なのですよ」
「いいじゃないのよ! 一目見るくらい!」
私はイライラしてきて続けて叫んだ。
「私は王子の
「は、はあ……分かりました。確か、ウォルター・モートンから中庭で体を動かしたいという
「あら、ウォルターの
「さあ、
はあ、分かったわよ。まったく。
◇ ◇ ◇
新しい
「そういえばジム・ロークっていう前の
私が一階
「彼は
おお、怖い。
イザベラ女王だけは怒らせちゃダメってことね。
「今、ウォルター・モートンはここにおります」
マックスは中庭への扉を開けた。
中庭は城の中央にある、
「ていっ! はあっ!」
ウォルターは中庭の中央で、白いシャツを着て
彼にとっては、これでも訓練のつもりなのだろう。
「ごきげんよう、ウォルター。午前は大
私が話しかけても、ウォルターは私を無視して
ロザリーやマックスは離れた場所で周囲をうかがっている。
私が、「この中庭にイザベラ女王かデリック王子が来ないか見張っていろ」と命令したのだ。
「ねえ、ウォルター」
私は彼の腕にさわった。
なかなか引き
最近少し太ったデリック王子とは大違い。
彼は素振りをやめた。
私の
「ねえ、
私は右手を突き出した。
「私の手の甲にキスしなさい。そうしたらデリック王子に頼んであげてもいいわ」
私は笑顔で言ったが、ウォルターは
「……ねえ!
「僕には大切な人がいるんだ」
「……な、何?」
「聖女アンナだ。彼女のことを裏切れない」
「聖女アンナぁ?」
私は声を
「あの平民のいかがわしい、まじない聖女のどこがいいのよっ! その点、私は大貴族よ。王子とは
「申し訳ないが」
ウォルターはきっぱり言った。
「聖女アンナは僕を
「会えるわけないでしょうが! あんた
「聖女アンナの心は美しい。僕はその心を裏切ることはできない。さあ、帰ってくれ。僕はまた後で
「あ、ぐ、ぐ」
私は目を丸くしてウォルターを見た。
彼は馬鹿みたいに
「ふふふ……」
私はウォルターから離れ、ニヤリと笑った。
「逆に燃えてきたわね。絶対にあの男を――ウォルターを振り向かせてやる!」
「何が燃えたんです? 火事でも起こったんですか?」
ロザリーは大ボケをかましたが、私の決意はゆるがなかった。
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