第7話 銀髪少年、騎馬隊を一網打尽
パメラの弟、ネストールはおもむろに馬車の客車から、後ろへ飛び出した。
向かってくるのは、十名の
一名の
「はあああっ」
ネストールの掛け声とともに、
ネストールは飛び上がると同時に、
ドオオオッ
そんな音がして馬の上の兵士は吹っ飛び、馬は横倒しになった。
ネストールは道路に着地している。
「よし、やった」
私たちの乗った馬車は速度を落とした。
ズドドド
「うあああああ」
「ひえええ」
すさまじい音と声とともに、
十名の
「思ったより、
ネストールは走って、ゆっくり走っている馬車に追いつくとまた客車に乗り込んだ。
「ようし! 全速力で逃げるぞ!」
パメラは叫ぶと、馬車の速度を上げた。
「あ、あなた、すごいのね」
私が呆然としてネストールに言うと、彼は真顔で二つ目の
「まだ終わってないよ。あれ……弓矢? 当たったら死ぬんじゃない?」
そのとき、後ろに見える
弓矢を構えている!
「弓矢だって? 何とかしろ!」
パメラが
「く、来るわよ! 私が防ぐ!」
私はすぐに「
最近、
「このままだと当たるね」
ネストールは
「
私が素早く唱えると、馬車に私が放った
そして――。
「ふうっ……!」
私とパメラは息をついた。
馬車はそのまま進んだ。
聖女が無理に防御魔法を使ったから、つ、
でもまだ
◇ ◇ ◇
一時間半程度、大通りを突っ切ると、やがて大草原に入った。
目の前には
「待て! 全員降りろ! ――三名か」
中年の警備員が声を上げた。
警備員は中年男と若い男だった。
私たちが馬車を降りると、中年の警備員は私とパメラ、ネストールをじろじろ見やりだした。
「何だ? お前ら
私は彼が持ったひのきの棒で、右肩を少しコツコツ
ここはグレンデル王国とロッドフォール王国の
通行するには、役所に依頼し作成した通行許可証が必要だ。
門の左右には赤レンガで造られた高さ約二メートルの壁が、長く長く続いている。
「通行許可証は持っています!」
パメラは
中年警備員は手渡された
「これはグレンデル王国の役所が発行した通行許可証だな。しかしダメだ。これでは通れない!」
「えっ? な、なぜ? 普段ならこれで――」
「確かに普段ならこの通行証で通せる!」
中年警備員は言った。
「しかし、ついさっき
私たち三人はドキッとしたが、表情は変えなかった。
中年警備員は私たちを見やり、大声で言った。
「現在、この
そ、そんなものは持っていない。
そもそも私たちは、そのイザベラ女王に追われる身だ……!
警備員二人はあきらかに私たちを
「これからお前らは、取り調べを受けてもらう!」
中年警備員は私たちを
こ、困った……。
このままでは
――そのとき!
「父ちゃん」
「ん? お、おいっ、ヘンデル! ここに来ちゃいかんと言っただろうが」
中年警備員はそう叫び、あわてて門のほうに
門の向こうに、六歳から七歳くらいの男の子が立っている。
おや? 珍しい。
口に布製のマスクをしている。
聖女の仕事で病院に行ったことがあるが、肺に
「ずっと家にいなきゃいけないから嫌なんだ……。僕だって外で遊びたいよ……ゴホッ、ゴホッ……」
少年は
「学校も休まなきゃいけないし。皆と勉強したい」
「だめだ、ヘンデル。家に戻ってろ。すぐに息切れするだろう。母さんに怒られるぞ」
中年警備員は
私はヘンデル少年の
となると、
「彼は何らかのガス、もしくは工場の煙などをかなり吸い、肺を
私が中年警備員に言うと、彼は目を丸くして言った。
「な、なんだと?」
「そうなると
「き、貴様……!」
中年警備員は私を
「私に彼を
私がそう言うと、中年警備員は若い警備員と顔を見合わせた。
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