第28話 聖女はパンの謎に迫ります!
私は聖女、アンナ・リバールーン。
ここはローバッツ工業地帯の村。
今日は
私、パメラ、ウォルター、ジャッカルは集会所を
村人たちは畑仕事や
ローバッツ工業地帯の村人は朝食をとらないらしい。
「うーむ、俺たちの体の中に毒物があるのは分かった」
集会所にやってきたオールデン村長は、残念そうに言った。
「大丈夫です。私が村人全員の毒を取り
私が言うと、村長は「そ、そうか。頼む」と頭を下げた。
「実は村人たちも、自分の体が
「毒のもとを断ち切りましょう。そうすれば村人たちの肉体も健康的になります」
「その毒がどこから出ているのか分かったか?」
「予想はついているのですが、
そういえば、
私の
しかし今日は村に大事なものが配送、
「今日はパンが
「そうなんだ。この村は小麦類が
この
私もパンを食べないと力がでないと感じるほうだ。
「そろそろパンの配送者が来る時間だが……」
村長がそう言ったとき、「パンが来たぞ!」と外で声がした。
私はあわてて外に出た。
一週間に一度、この村に
だが、そのパンを実際に見てみないと何ともいえない。
村の入り口付近に馬車が二台停車しており、パンの配送人と思われる人物が村人を集めている。
「さあ美味いパンだ! これから配るぞ!」
ん?
聞き覚えのある声だが……。
「ええ?」
私は目を丸くした。
デ、デリック王子!
私の元
「ん?」
デリック王子は
その手を止めて、私の方を見た。
「な、な、なんでお前がこんなところにいるんだ?」
「あ、あなたこそ、どうして? デリック王子!」
「どういうことなんだ、アンナ。お前がいるとは……」
このパンはグレンデル城から配送されたパン!
私は馬車に
パンの山から緑色の毒素の
「あれが村人の毒の原因か……!」
私はつぶやくように言った。
そして素早くオールデン村長に聞いた。
「いつもデリック王子がパンを配送している……わけではありませんよね?」
私と付き合っていたころのデリック王子からは、パン配送の話など聞いたことがない。
村長は言った。
「いや、今まで週に一度来ていたのはブルートというグレンデル城の
「さ、さあ、パンをこれから配るぞ! 美味しいパンだ!」
デリック王子は作り笑いをして、村の子どもたちに言った。
「――おやめなさい! その毒入りパンを受け取ってはなりません!」
私は声を張り上げた。
「何だと?」
デリック王子は私をジロリと見やった。
「アンナ、お前、今何と言った? とんでもないことを言ったな」
「ええ、言いましたよ。『毒入りパンを受け取ってはならない』と!」
「
「いえ、私には見えますよ、パンから立ち
「あ、相変わらず口だけは
デリック王子はちらりと横に立っている男を見た。
ん?
誰だろう? あの男性は……。
長身の美男子だ。
ニヤニヤ笑ってこっちを見ている。
「俺はラードルフという者だがね」
男は私に言った。
な、何?
人間……?
い、いや、一見、人間に見えるが……。
なんという
「おお……。お前が聖女という人間の女なのか?」
ラードルフという男は、私をまじまじと見た。
「な、なんと
「そ、それがどうしたのですか? わ、私を……そんなに見ないでください」
「欲しい。お前が――」
ラードルフが右手を私に向かって
そのラードルフの右手首を誰かが横から
「聖女にさわるんじゃない!」
ウォルターだ!
ラードルフはウォルターを
「……何だ? お前は」
「グレンデル城の元
「ほほう? この聖女とどんな関係だ」
「僕は彼女を
「フフフッ……。何と、人間の
ラードルフはウォルターの手を振り
いつの間にか外に出てきていたジャッカルが、ウォルターに言った。
「おい、あいつ……。魔物だぜ」
「ああ、
ウォルターがそう言ったとき、ラードルフは
「俺も剣術を心得ていてね。いつも
ジャッカルが、「ウォルター!」と叫び、
「ラードルフとやら。僕がこの勝負に勝ったら、お前たちはこの
ウォルターが声を上げたとき、ラードルフはまた笑った。
「ふふん、面白い。では俺が勝ったら、その聖女アンナをいただくとしよう。そして君は、俺の目の前であのパンを食べてもらおうか」
「何だと!」
ウォルターは
も、もしウォルターが負けてしまったら、彼は毒入りのパンを食べなくてはならないというの?
私の目の前で、剣術の勝負が始まろうとしている。
一方のデリック王子はあわてたような表情で、その光景を見ているだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。