第29話 ウォルター、魔界の王子と勝負する
「ふふん、面白い。では俺が勝ったら、その聖女アンナをいただくとしよう。そして君は、俺の目の前であのパンを食べてもらおう」
謎の男――ラードルフは笑って言った。
「何だと!」
ウォルターは
も、もしウォルターが負けてしまったら、彼は毒入りのパンを食べなくてはならないというの?
「
ウォルターがラードルフに言った。
「
ラードルフは一歩
ウォルターは後退しそれが当たらない
二人はその一瞬、同時に前に出た。
二人はぶつかり合った――
「フフフ、人間よ、なかなかやるな」
「いや、君の剣術は
ウォルターは静かに
強い
ウォルターは力でラードルフをはね飛ばしたのだ。
「な、なんだと?」
ラードルフは
「ま、まさかそんな」
ラードルフは足でウォルターの
「
ウォルターは首を横に振りながら言った。
「ゆ、許さん!」
すぐにラードルフは立ち上がり、右
ウォルターはそれさえも見切って
そして次の瞬間――ウォルターの
「なるほど、とんでもない剣術の使い手だということか」
ラードルフは
冷や汗だろう。
「これは本気の剣術勝負になりそうだ」
「ラードルフ、君は今まで本気を出していなかったというのか?」
「ああ、そうだ――」
ラードルフは一歩前に
「その通りだよ、ウォルター!」
しかし彼は
「『
ラードルフは魔法を放ったのだ。
これは剣術勝負では?
ラードルフは約束を
だが、その魔法さえもウォルターは体を低くして
次の瞬間――。
そして、彼の右手首にはウォルターの
ウォルターの
「……き、貴様……」
ラードルフがそううめいた――そのとき!
爆発音がした。
後ろの
ラードルフの爆発魔法が
一方、ラードルフは顔をしかめて右手首を押さえている。
右手首は赤く
「ふむ」
ウォルターは静かに言った。
「君の魔法が当たっていたら、僕は死んでいたな」
「いい加減にしろ、ラードルフ!」
ジャッカルが二人の間に入りラードルフに向かって叫んだ。
「この勝負、ウォルターの勝ちだ。お前とウォルターでは剣術の実力に差がある。しかもお前は自分で決めた剣術勝負という
「く、くく……バカな」
ラードルフが右手首を押さえながら言った。
「この私が……ま、魔界の王子が……。こんな
そしてラードルフはウォルターを
「覚えていろ、ウォルター……! 俺は魔界の王子、ラードルフだ。次は魔法を解禁して勝負をしよう。その聖女を
ラードルフは私を見て舌打ちすると、「おい、行くぞ」とデリック王子に言った。
二人は馬車に乗り込んだ。
パンは赤い馬車の
二台の馬車は逃げるように村を出ていった。
「ウォルター! 大丈夫ですか?」
私はウォルターに
おや? ウォルターが左腕を押さえている。
彼の左腕の一部が紫色の変色し、アザになっていた。
「どうして
私は泣きそうになりながら、彼の左腕に
ウォルターは「すまない」と頭をかいていた。
もし負けたら、ウォルターは毒入りパンを食べさせられていたのだ。
本当にゾッとする。
◇ ◇ ◇
その日の昼過ぎ――。
「ふう……」
これで三人目の村人の
集会所の中は村人で満員になっていた。
私は村人の体を
集会所の中の村人は、私の
「おい、いい加減にしろよ、アンナ!」
パメラが横から私を
「
彼女の言う通りだった。
四人目のお
「パメラの言う通りだ。休みなさい」
横にいたウォルターが私を支えてくれた。
さっき私はウォルターを
私は今日は、このお
まだ六十人以上の村人を
でも村人全員の
その間に村人の体内の毒は、
それには毒入りパンの毒の成分も調べなければならないが――。
「あっ!」
私は
パン――。
あの毒入りパンを入手することを、すっかり忘れていたのだ。
私はあわててパメラに聞いた。
「毒入りパンは手に入れたっけ?」
「え? 村人を守るのに必死で、あいつらが持ってきた毒入りパンなんか
パメラも
パンの毒がどのようなものでどんな場所で入手したのか調べないと、また村人の体内に毒が入ってしまう可能性がある!
し、しまった……。
「ただいま~」
私とパメラが頭を
手に持っている布の袋には、見覚えのある
まさかそのパンは……!
そしてその「彼」とはネストールだった――!
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