第16話『間章』
グロ注意。
水死体のように膨れ上がった人の腹から赤子と鰐のキメラみたいなエイリアンが出てくるって。
R指定がつきそうな演出じゃないか。センシティブすぎる。
「これが姫ちゃんの能力なんですか・・・・・・?」
「う、うん! 姫の能力『そして誰もいなくなった』は弾丸を人に打ち込むと、その人を犠牲にエイリアンのエイちゃんを生み出せるよぉ。それに――エイちゃん、ターゲットを隠している場所教えて」
エイリアンは一瞬痙攣した後どこかに移動し始めた。
「素体の記憶がエイちゃんにもコピーされるの。知能は低いから直接は喋れないけど道案内なんかもさせられるよ」
「それは・・・・・・便利な能力ですね」
即死、そこから偵察用の駒の製作。便利にもほどがある。私の分神も大概便利だが――即死と言うのが便利すぎる。
「そうでもないよぉ。あんま露出の多い服着てる人いないから発動しにくいし・・・・・・素肌に当たらないと発動しないから・・・・・・魔法変身も一応使えるけど、普段使いしにくいんだよねぇ・・・・・・」
「・・・・・・『魔法変身』ってなんですか?」
ここにきて新たな単語が出てきた。変身? ヒーロー物?
「魔法の覚醒のこと・・・・・・能力を体に適合させて色々な恩恵を受けられるんだ・・・・・・。根本的な身体能力や思考能力の強化、新しい能力の発現なんかが起きる。わかりやすく見た目が変わるから、魔法変身が起きているかどうかを見分けるのは楽、かなぁ」
前に煙託さんが言っていたのはそのことなのだろうか。
「ちょっと待ってください。さっきのお爺さんは実力者でしたけど、魔法変身なんて使っている様子はありませんでしたよ?」
「魔法変身するためにいろいろ条件必要だし・・・・・・実力上げたからって出てくるものじゃないから・・・・・・それでいうと美翠お姉ちゃんとか絶対発現しなさそうなタイプ・・・・・・」
「残念です。覚醒したら出来る事も増えて、それで友達を助けられるかもしれないのに」
「・・・・・・それ本気で言ってるのぉ? なんかすごく信用できない・・・・・・」
「友達に信用されない私が悪いと言うのはありますけどそれにしたってひどくありませんか?」
悲しくなってしまう。友達に信用されないと言うのは心に来るものだ。
「・・・・・・いつか見られるといいんですけどね。皆の魔法変身」
「姫は嫌だよぉ・・・・・・。使うたびに身体が酸で溶けたみたいな痛みが来るし、その後二週間ぐらいは最悪の体調になるしぃ・・・・・・」
「友達を傷つけてまで見たいものではありませんね。さすがに。まあ難しい任務をこなしていけばそのうち敵のを見れるでしょう」
「いや、今回の任務以上に難しい任務なんてほとんど存在しないよぉ・・・・・・・・・英雄省の重要拠点の一つだし、集まっている相当上位のメンツがいるはず・・・・・・」
「うわあぁぁっ!」
そんな話をしている所。金庫坐さんが落ちてきた。
「『金庫坐さんが落ちてきた』じゃないよ・・・・・・何でそんな冷静なのさ。消えてた仲間が落ちてきたんだから、もう少し心配してくれない?」
「あの・・・・・・大丈夫ぅ? 何があったのぉ?」
「これが正しい反応だから! 本当に友達と思っているならもう少しなんかないの?」
と言われても。
「死んでいる可能性は微塵も考えませんでしたから。友達が死んでいるなんてそんな悲しい可能性夢にも思いませんでした。そんなことより情報交換をしましょう。生き残ったんだからいいじゃないですか」
「・・・・・・これは一終が『凄いやつ』っていうだけあるわ。まともっぽいのに破綻している」
「煙託さんがそんなことを言ってくれていたんですか? とてもうれしいです」
「褒めてないからね?」
違う。煙託さんが私の話題を他の人に伝えているのが嬉しいのだ。
「本当にありがたいことですね――いったんこの話は区切りましょう。情報交換です。私たちは金庫坐さんと離された後、敵と接触。交戦。私の能力を使って一時離脱しました。しかし敵はすぐに分身を全滅させ後を追ってきて再度交戦。二回目は姫ちゃんと私の友情コンビネーション攻撃で敵を討ち取りました」
「ぼくは二人と離れた後すぐに犯人を捜索、数分ほどで発見した後は能力の相性がいいこともあって結構簡単に倒せた。そして適当に二人を探していたら突然空中にワープしてここに出てきた。・・・・・・って感じかな。敵の能力が時間で解除されたみたい」
ふむ。いつの間にか離れていたのはやはり敵の能力の影響か。
「作戦はどうするのぉ?」
「このままでいく。仮にまだ空間移動タイプの能力が居てもぼくが何とかできるはずだから問題ない。罠タイプの能力は滝夜ちゃんの能力の判定的に蜂が先に引っ掛かってくれる可能性が高いからそっちも大して問題じゃない。しいて言うなら面倒なのは一撃必殺タイプだけどまず対策不能だから作戦通り無視かな」
「無視・・・・・・ですか」
それは困る。友達が死ぬ可能性を私は飲めない。
「なんなら私が肉壁やりますか? 分神は壁性能高いので良い感じだと思うのですが」
「いや、今回はできるだけ私が壁になった方がいい。今回の任務の重要度をランク付けするなら上から滝夜ちゃん→美翠ちゃん→ぼくの順。能力的にぼくは大して求められていないからね。あくまで現場からの直接指揮と戦闘面の保険程度に思っておいて」
「エイちゃんが止まったよぉ」
会話をしながら走っていた私たちはそこで立ち止まる。
エイリアンが窓を引っ掻いている。窓の外は木の多めな自然公園のような様相で、多分院内公園とかそういう物の基地版的な物だろう。
「これだと外に出ちゃいますね。どうします?」
意外性はあるが、無い選択肢でもない。私が隠すとしても、余裕で候補に入れられる。
「普通に行くよ? 当たり前じゃん。ターゲットの隠し場所を奇抜な場所にして時間を稼ぐ。王道だしわかりやすい誤魔化し方でしょ」
「ここなら普通に隠すの大して変わらないよぉ・・・・・・罠を仕掛けられているか、敵の能力が良く刺さる状況か・・・・・・突っ込まないほうがいいパターンじゃない・・・・・?」
「だからって任務放棄はできないから――結局どんな考えを巡らせても進む以外の選択肢はないから、立ち止まるよりもゴリ押しで進むのがいいって言うのが、ぼくの読みかな。美翠ちゃんは他に案ある?」
ふむ。二択で別れた。どっちに賛同するか――考えるまでもない。
「基本は金庫坐さんの作戦で問題ないかと。もし罠があっても私の分身で罠があるかどうかは確かめられますし」
「じゃあ2対1だけど・・・・・・どうする?」
「わっ・・・・・・わかりましたよ・・・・・私も賛成しますぅ・・・・・・」
「よし。全員の意思が統一されたし、いこうか――。【内出血】」
金庫坐さんはそういいながら手を大きく振りかぶり、そしてそのまま窓のガラスに向かって拳を打ちつけた。
ガシャンと甲高い音を出してガラス片が飛び散る。
「そういえば、金庫坐さんの能力ってどんなものですか?」
「言ってなかった? まあ血液操作の四文字で済ませられるけど――体内の血液操って体を無理やり引っ張ったり、血液で水鉄砲撃ったりかな」
「・・・・・・身体ズタボロになりませんか?」
「血液を接着剤代わりにして引っ付けられるし、魔王の一族は再生能力も高いからなんとでもなるかな。――まあ痛いは痛いけどね」
「早く行こうよぉ~」
私たちは窓から飛び降りて、公園に出た。
「取りあえず即死の罠は無いっぽい・・・・・・ちょっとぬかるんでいるけど、・・・・・・邪魔って程じゃないね・・・・・・」
「明るいとは言いませんが、最低限のライトはありますね。魔王の一族レベルの視力でギリギリ見える程度ですが」
「ならとりあえず3人一緒にくっ付きながら一緒に進もうか」
金庫坐さんはそういいながら茂みの中に一歩を踏み出す。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか――」
ぶぅううん。と不愉快な音が金庫坐さんの声をかき消した。私たちは音の元を見る。
私たちの周りに軍勢が飛んでいた。
「鬼でもなく、蛇でもなく」
小さいながらもはっきりと見える凶暴な形相、警戒心を煽る黄色と黒のコントラスト、極小の羽と針しかもたず、しかし確かに人間を殺す力を持った一寸どころか五寸釘の如き、最強の虫――。
「蜂、ですね」
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