第12話『ガールズトークと油断大敵』

「という経緯で私は実の家族を殺し――」

「大変だったね・・・・・・」

 私は姫ちゃんと一緒にガールズトークにいそしんでいた。

 

 てかやばい。仕事中にするガールズトークするのちょー楽しい。

 何か無理やり話させている感は否めないがまあとりあえずは気にしない。

「ねえ姫ちゃん。やっぱ私達友達になりませんか? 私たちかなり相性いいですよ」

 姫ちゃんの性格的にこの流れで行けば断られることなく言質が取れると確信した私は強引に攻めることにした。多少強引でも気弱な子だしいけると思った――のだが。


「す、すみません。だいぶいやです・・・・・・」

 断られてしまった。多分聞き間違いだろう。


「ダイブ? 別に私は姫ちゃんに水泳競技をやってもらおうとは思っていないよ?」

「ダイブじゃなくて大分・・・・・・・・・九州の県名と同じ漢字・・・・・・」

「え、なんで? こんなに楽しく会話が弾んでいるのに。友達の定義は一緒にいて楽しいことだよ?」

 理解ができない。思考が追い付かない。思わず言葉が乱れてしまう程私は動揺した。


「いいですかよく聞いてくださいね。私はアイドル並に歌って踊れて可愛い可憐な15歳ですよ? そんな子からの友達宣言。受け取らないほうが不自然。私はあなたと友達になりたいですしいろんな人と友達になりたいですからこれからの為にも私のダメな点を教えてくれませんか?」

 姫ちゃんは困ったように体を縮め、顔を和服の袖で隠し、小声で私の欠点を羅列していった。



「大きく二つに分けて高慢な所、人間味がないところ辺りがだめだと思う・・・・・・自分の容姿にやたら自信を持っていてやたら強調してくるところがちょっと・・・・・・確かに可愛いと思うけどそれって自分で人に言いふらすと台無し・・・・・・アイドルや女優みたいな芸能関係ならともかく・・・・・・自分が頼めば頑張れば人間の相互関係が必要な友人関係を作れると考えているところも何か嫌な感じ・・・・・・努力は必ずかなうと言うよりは自分が頑張っているのだから報われるべきだ、的な方向性も少なからずあるように見えるし・・・・・・傲慢・・・・・・人間味は・・・・・・見た目は、見た目だけは取り繕っているけど、ノリよく可愛く丁寧に見えるけど・・・・・・なんか中身が悍ましいと言うか・・・・・・母親殺しのエピソード的に人間関係に固執する割に執着しないと言うか、なんか友達がいきなり死んでもたいして悲しまなさ――」


「もう結構です! ありがとうございました!」



 まさかここまで詳細に言われるとは思っていなかった。そうか私は傲慢なのか・・・・・・。しかもそんなに冷たい人間に見えていたのか。

「私にも人の心はあるはずなんですけどね、人の体はないかもですけど」

「すっ、すみません傷つけてしまったならすみませんごめんなさいもうしませんゆるしてくださいおこらないでください」

「いや別にいいですよ。気にしていませんから」


 気まずい雰囲気が流れてきた・・・・・・姫ちゃんは泣きそうな顔しているし――ここは金庫坐さんに力を借りよう。私は後ろを向いて声を掛ける。

「あの、ちょっとここは年上の金庫坐さんがまとめ・・・・・・あれえっ?」

 私はそこで重大な違和感に気付いた。間違い探しにしても分かりやすすぎるそれでいて訳が分からない重大な問題点に。


「どうしたの・・・・・・?」

「私達は三人一組でしたよね」

「そうだったけど・・・・・・」

「私たちの人数を落ち着いて丁寧に数えてみましょう」

「え?」

 姫ちゃんが疑問そうに首をかしげる。



「数える意味ある・・・・・・? 今この空間にいるのは姫達二人だけだよぉ?」



敵地に侵入しているときに仲間の三分の一が消えた――どんなに鈍くても、仲間が消えていることに気付かずガールズトークをしていたほどに呑気だったとしても、そのリスクが分からないわけはない。


 なるほど。これが実戦か。実感を持って痛感する。作戦が全然あてにならない。

何が起きたのか知らないが、建物の中に入った後どこかのタイミングで金庫坐さんと離されてしまったらしい。


「とりあえず5W1Hの確認をしましょう。いつ誰が何のためにどうやって。そして私たちが今どこかにいるかの把握が必要です」

 声に出して言ってみたが意味はない。いつかも誰かも何のためやり方さえも分からないし、どこにいるかもわからない。しいて、あえて、悪あがき程度にジョークを言うなら――罠の中だ。

「やはり若いのう」


 背後からいきなり、しわがれた声が聞こえた。

 私たち二人は瞬間的に武器を構え振り向く。

 そこには、腰の曲がった長いひげの老人が――

「いない・・・・・・?」


 そう呟いた次の刹那、私の背中に衝撃が響いた。

 ダイナマイトで無理やり鉄の鎧を粉砕したような衝撃。私はなすすべなく前方に吹き飛ばされ、床にたたきつけられる。

 なぜ? 声は確実に後ろから聞こえたはずだと言うのに――。


「美翠お姉ちゃん!」

 後ろから姫ちゃんの声。私を心配してくれているらしいがまずい。まだ敵がいる。

「し、死んでえぇ!」


 発砲音が廊下に響く。敵が銃を持っているなら使っているはず。つまりこれは姫ちゃん。姫ちゃんは銃を私に使わなかったから、多分姫ちゃんの能力は銃の構築・・・・・・いや、なんで今この状況で味方の能力分析をしているんだ。別に後で聞けばいいだろう。この状況で私がやらなきゃいけないのは敵の能力分析。――わからない。声が聞こえた後違うとこから出てきた点。移動系統の能力であろうことは状況からみて間違いないだろうが。


「はっ、遅いのう! 基礎を磨いていないのではないか!?」

「ひいぃ!」

 後ろから声が聞こえる。姫ちゃんはがピンチになっているらしいが、今は死んだふりをして作戦を立てるほうが大事だ。


「倒れてないで助けてえぇ! 友達にもなんでもなるからぁぁー!」

「12人」

 敵の能力考察は後回しとしよう。友達を助ける事より大切なことがこの世にあるものか。

 12人の分身がいっぺんに敵を襲う。


「うおっ! なんじゃこれ!」

「逃げるよ。姫ちゃん」

「逃げるのぉ!?」


 私は無理やり姫ちゃんを引きはがし猛スピードで廊下を駆ける。

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