第21話『友々児的』
「治りましたか?」
私は姫ちゃんたちの所に行く。魔法は使用者が死んだら解除されるので、動けなくなっていた姫ちゃんは動けるようになっているはずだが――。
「普通に治っているよ」
「そうですか・・・・・・良かったですね」
心の底からそう思った。本当にうれしい。安心でそんな場合ではないとわかっていても、脱力してしまう。
「あ、あの・・・・・・」
「ん? なに?」
姫ちゃんがおどおどと、私に話しかけてきた。
「もしかしてまだなんか違和感あります? 私にできることはなんだってしますけど――」
「そ、そうじゃなくてぇ!」
姫ちゃんは声を少し荒げて、私の言葉を止めた。
「あの・・・・・・ありがとう。助けてくれてぇ」
「なんてことないですよ。友達なんですから助けるのは当たり前じゃないですか」
「そのことなんだけど・・・・・・さっきは半分お、脅されて友達になったわけだけど・・・・・・」
「脅していませんけど?」
脅しとは人聞きが悪い。私は提案しただけだ。
「脅された結果としてじゃなくて――姫自身の、ちゃんとした意志でぇ・・・・・・友達にって、なっていい?」
「別に今までもこれからも、姫ちゃんとはずっ友ですよ」
そんなあたりまえで、それでいて大事なことは一生喋っていたいところだが――。
「そろそろターゲット誘拐しないといけませんよ。これ以上敵が出てきたら相手していられません。私もう分身のストック枯渇していますし」
私たちの任務はあくまで誘拐だ。仕事をさぼって、死地に贈られるのは勘弁してほしい。
友達に看取られるならともかく、普通に死ぬことなんて御免だ。
「あてはありますか? ばけも――エイちゃんも消えちゃいましたけど」
「それはあんまり問題ないかな。美翠ちゃんが戦っている時間、ぼくが姫ちゃんを守りつつ適当にサーチしてたから。普通に見つかったよ」
「じゃあさっさと行きましょう」
その場所は一見して、ただの地面にしか見えなかった。そこにあると言われても目を凝らさなければわからない程だ。
「いっせいのお、せいっ!」
鈍い破壊音を立てて戸が開く。
小さい空間だった。入っているものも貧相で、6~7歳程度の女の子一人と、おそらく水と栄養が運ばれてくるチューブがあるだけの簡素な造り。
そう、女の子が入っていた。それも四肢を鎖で拘束され、目をふさがれて。
「龍星ちゃーん。聞こえるー?」
「なんじゃー? 世界ちゃんに隕石を呼べと言うのならまずは拘束を外してじゃなあ」
妙な喋り方をする子だ。広島弁にしては訛りを感じられない・・・・・・わざと作っているような、老人言葉。
「助けに来たよー龍星ちゃーん。ぼく知っている? 魔王軍の金庫坐葉染!」
「ふん。魔王軍の者の名前など、世界ちゃんが捕まる、今から一年前までに所属していた人間は全て言えるわ。さっさと助けんかい、そろそろ流動食以外のものを食いたいんじゃ」
「わかったよー」
金庫坐さんは絡まっている鎖を纏め、無理やり引きちぎった。
立ち上がろうとした女の子は立ち上がった途端、フラフラと足をもつれさせ、倒れてしまった。
「痛たた・・・・・・何をぼさっと見ておる! さっさと世界ちゃんを助けんか!」
「あーはいはい。わかったよ」
「この子がターゲット・・・・・・ってことぉ?」
「うん。龍星世界。魔王軍最強の超巨大戦力。この子の能力『星に願いを(ラストリゾート)』がやばすぎだからね――兵器運用するために殺されていないって情報が来たから、私たちが助けに来たってわけ」
「ふーん。そうなんですね――ところで世界ちゃん。私と友達になりません?」
「? いいぞ! 俺様ちゃんは来るもの拒まず去る者追わずの精神じゃ!」
「言質とりましたからね」
「・・・・・・まあ別にいいか! さっさと逃げよう! 真正面で荒らしている皆もピンチだろうし!」
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