第20話『私達VS幹部④』
魔王の血と言うものは強力だ。
飲めばすさまじい異能を身に付け、人間とはかけ離れた怪物になる、悪魔の血。
その異能の中で一番強力なものは何か。
道理を超越する特殊能力である魔法? それともイモリも真っ青の再生能力?
どちらも異常で強力、恐るべき力だが、私はあえてその身体能力こそが真に恐るべき力だと主張したい。
新幹線の標準速度を超える脚力。電柱持ち上げて、振り回せる膂力。軽自動車程度の物ならば一撃でぶっ壊せられる拳。
勿論私はその全てを十全に扱えるわけではない。
だいじなのは、そんな怪物を同時に12人。最大で800人操れるという事だ。
アフリカゾウの群れを瞬殺できる怪物が――12人。
それも完璧な連携を取って襲い掛かる。
今まではこの究極の戦法が、巨大な火炎の竜や謎の中国拳法のせいで無効化されたり、うまく使えない状況に陥ったりしたが――今は。
「チィッ! これで私を追いつめているつもりぃ!? こんなの全然、余裕なんですけどぉ!?」
胴体を蹴り、脛にローキックを入れ、後頭部を殴り、左右同時に正拳突きをして、四方八方から波状攻撃を決行し、タックルで崩し、武器を取り上げようと腕を抑え、頸に鋭いチョップを当て、顔面に突っ張りをして、腹を引っ掻き死角を縫い不意を打ち、回し蹴りをして、投げ技で地面にたたきつけようと試み――襲い、襲い、襲った。
624体の分身が、みるみるうちに溶けて行き、殺された。
しかし、ついに――。
「掴みました」
1体の分身が4つある内の一つの腕に腕十字を決めた。
「! 離っ――」
「ボカーン」
爆発する蛍火の腕。爛々と火炎が舞う。
「ぐあっああ! ふ、ふっざけないで! お前なんか、お前なんかぁ!!」
「8人」
現れる8人の分身。
「殺してください」
「私が負けてもぉ! 皆が必ず! お前を殺してくれる! 私は、私たちは絶対勝利する! 正義は必ず勝つ!!」
「――あっぱれですよ。敵ながら」
身体が朽ちても、遺志を継いでくれる友がいることほど、素晴らしいことはない。
鎧はボロボロになり、腕も千切れた、私が出した分身は、虫の息になっている蛍火の周りを取り囲み――爆発した。
その結果として蛍火の体は単純に燃え、弾ける。
踊り狂うように蛍火の残骸は跳ねた後、地面に叩きつけられ、倒れた。
それだけだった。そこから動くことはなかったし、無論復活することもなかった。
火葬の手間が省けたとすらいえない。レアですらない、まだ生肉の部分もあるだろう。
人間が死ぬにはそんな莫大の時間も熱量もいらないのだろう。
「なんやかんやでまだ二人ですか。自分の手で直接人を殺したの」
感想もその程度だった。それ以上の何かはなかった。
ともかく――勝者、私。
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