第18話『私達VS幹部②』

「美翠ちゃん。歯くいしばって!」


 首の刎ねられた私は、しかし死ぬことはなかった。

 ジャンプした金庫坐さんが私の頭を鷲掴み――元の首にはめ込んだ。

 血が飛び跳ね、筋肉が収縮し、神経が接続される感覚が痛みを塗りつぶす。


「――ゴボッゴホッ。・・・・・・生きている・・・・・・?」

「三秒ルール守っているから何の支障もないはずだよ――状況を簡潔に言うね。姫ちゃんが捕まった。救出は無理。見捨てて撤退。今回は無理、勝てない。OK?」

「ゴボッ、ゴホゴホ――OKなわけないでしょう・・・・・・?」

 友達を助けないなんて選択肢、あるわけない。そんな選択をするぐらいなら死を選ぶ。


「ぼくだってあの子を死なせたくない――でも無理に助けようとして、君まで失いたくはないんだ。相手が英雄省全体を見ても二十人もいない、魔法変身を使える人間ってことを考えるとね」

「あれが魔法変身ってやつなんですか? 情報、なにかあります?」

 私がそう聞くと金庫坐さんは懇切丁寧に説明してくれた。

 

「蛍火六花。二十八歳の女。英雄省最高戦力、『十三星座』の一人。能力は『混入蟲ハイドバグ』これは虫に変な習性を付ける能力で条件は不明。魔法変身の方は『魂蟲装甲オパールアーマー』。シンプルに馬力が高く、堅くて、高速で空を飛ぶ。体中に毒が仕込まれているから、近距離戦は殆ど無敵に近い。まだ見せていない隠し玉がある可能性も極めて高い。ぼくがあいつについて持っている情報はこれで全て」

 ありがたい。これで作戦を組める。


「そうですか、なら間合いを意識して闘わないといけませんね。絶対に相手の射程に入らず、一方的に殴ることを意識し――」

「ちょっとちょっと。何言っているの?」

 金庫坐さんが私の言葉を遮る。急だな。


「? いやだから勝つための作戦を組んでいるんですよ」

 金庫坐さんは私の言葉を聞いて、手で顔を覆った。


「だーかーらー! もう助けられないって言ってるじゃん! 即時撤退して作戦を組みなおす。今はそれが最善なんだよ。もし仮に助けられたとしても、私か君かどっちかが戦闘不能の重傷、なんなら死んじゃう可能性が――」

 妙なことを言う。前提条件の把握はいくら私が馬鹿でもしているぞ? 友達からの期待が低いと自己肯定感も下がってしまう。


「私は死ねますよ? 友達の為に」

 金庫坐さんが言葉を詰まらせる。


 なぜ言葉を詰まらせたかはわからない。当たり前のことを当たり前に言っただけなのに。


「それに、多分死にませんよ」

「え?」

「だって――金庫坐さんっていう友達が、私にはいるんですから」

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