第17話『私達VS幹部』
「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。気持ちが悪いぃぃ!」
蠢く蜂の群れを前に姫ちゃんはパニックを起こしている。
「大丈夫ですよ! 刺されても私達なら一瞬で解毒出来ますし! 死にません! 害ありません!」
「そういう問題じゃないぃ! 気持ち悪いのぉ!」
「あなたの出しているエイリアンの方が気持ち悪いですから! 可愛いもんです蜂ぐらい!」
「エイちゃん可愛いもん! 足六本もないし! 普通に人間のサイズだし! 気持ち悪いとか言わないで!」
「後普通に害あるよ? 蜂」
金庫坐さんが冷静に私の発言を指摘した。
「毒を解毒する時って、能力の源である血液が直接犯されているから能力使いにくくなるんだよね。ぼくの能力は血液の成分と粘度を弄って解毒しつつ能力を使えるけど、しんどいし能力の使用感も悪くなる。しかもこの場合は単純な数が問題なんだよね」
一匹一匹の解毒は簡単でも延々と大量にくる蜂の群れが能力を使う暇を与えさせない。シンプルながら嫌な戦法だ。
「どうするのぉ・・・・・・?」
「幸い、ぼくの能力はこういうやつらの殲滅にすっごい有効だし、簡単に処理できるよ。優先順位復唱! 滝夜ちゃん→美翠ちゃん→ぼくの順で守って――」
「その小さい子がずいぶん大事なんだね――クスッ」
上空から、声がした。
上を見る。
怪物がいた。
触覚や複眼を携えた顔面。金属質な玉虫色の表皮。二本の鎌を持った二本の腕に、三本しか指がない奇怪なもう二本の腕。四枚の翼をはばたかせて、怪物は空を飛んでいた。
「じゃあとりあえずは、その子から殺らせてもらいましょ――」
「【外出血】」
最初に動いたのは金庫坐さんだった。
五指から、超高速の赤い線が飛び出す。
怪物は空中で身体を旋回させ、金庫坐さんの出した攻撃を回避する。
「よっわ、よわ~! 小学生みたーい」
そのままの勢いで鎌を構え、こちら側に急接近してきた。
「避けて!」
「ムリムリ~」
私が反応するよりも早くに、怪物は私の横を通り過ぎた。
「一人目」
振り向いて姫ちゃんを見る。
しかしそこには姫ちゃんがいない。続けて上空を見ると怪物が姫ちゃんを乱暴につかみ、飛んで逃げていた。よく見れば、切られたようで流血もしている。
助けなければ。私は足を踏み出す。
すると視界が――跳ねた。
まだジャンプをしているわけではないのにもかかわらず、視界が1mほど上に上がった。
なぜか、を冷静に考え始めた瞬間、すさまじい激痛が私の首を襲った。そこで私はこの異常事態の正体にやっとたどり着けた。
私の首、刎ねられている。
「二人目。――クスス!」
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